2023/02/01 コラム

秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」を使った特殊詐欺…その手口とは

東京高等地方簡易裁判所合同庁舎



■被告人の父親が230万円を用意

そういえば特殊詐欺の受け子も「服装はこうしろ。こういうバッグを持て。どこの駅へ行け。さらにどこへ行け。どこの公園で待機しろ。どこの家へ行け。この偽名を名乗れ」等々すべてを携帯電話で細かく指示される。特殊詐欺とこの強盗は、もしかして“経営者”が同じか?

検察立証が終わり、続いて弁護人(お年寄り)の立証が始まった。

弁護人 「示談書…230万円支払った…(被害者は)宥恕する、社会内更生処分を希望すると…」

「宥恕(ゆうじょ)」とは、ひろい心で許すというような意味だ。そんな言葉、20年前に傍聴マニアになるまで私は知らなかったよ。

情状証人はA男の父親だった。父親は黒スーツで背は高め。A男とも弁護人とも対照的に、きっぱりはっきりでっかい声だった。

父親は230万円の内訳を述べた。現金30万円、S男がCCで引き出した150万円、プラス示談金50万円で合計230万円。その金も保釈保証金(金額不明)も、ぜんぶ父親が用意したという。 ※保釈保証金はA男が逃げたりしなければ戻る。

そうして、さあ、被告人質問が始まった。

弁護人 「2日前に電話が…仕事があるからと?」
A男  「最初は、(建築関係の)現場作業の人手が足りないのかなと」

交際相手の「いとこ」の依頼なので、ちょっとの手伝いなら金は不要、1日かかる場合は日当をもらえらたらいいな、その程度にしか思わなかったという。

弁護人 「免許証のコピーを送ったり、疑問を感じなかったんですか」
A男  「特には…」
弁護人 「脅されたみたいなこともあったと」
A男  「はい。個人情報を持ってるから何でもできるんだぞって」
弁護人 「一度は断ったの?」
A男  「はい。ちょっとどういうものか分からなかったので、考えますって…(なんかもぞもぞ言い)もう逃れられないのかなって」

被告人の声は小さく、裁判官が「もうちょっと大きい声で」と何度も注意した。直後は2割ほど大きな声になるが、すぐにまた、という感じで進んだ。

A男  「イヤホンで電話、つながって、指示役の指示…被害者の家財道具の写真を撮ったり…」
弁護人 「物色をしろと」
A男  「はい」
弁護人 「指示されて退室」
A男  「はい」

なんとまぁ、すべてを氏名不詳の指示役がスマホで操る、これは“リモート強盗”ではないか!

ドライバーWeb編集部

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