2021/11/08 旧車

乗り手を選んだポルシェ911の記憶[driver 1989年2-5号より]

driver1989年2-5号より


■まず基本に忠実であるべきだ



話を何度もひっくり返すようで申しわけないが、そうした事実は本当は取るに足らないと断言できる。クラッチは、やたらとハーフクラッチを使えば国産車だって通常の半分ももたないはずだ。911についていえば、そもそもハーフクラッチを多用する必要がない。



25年におよぶ911の歴史のなかでも走り志向が強い‘73カレラRSでさえ、スタート時にむやみに回転を上げずに、それこそ1,000回転プラスαでクラッチをスッとつないでやればいいのだ。そうした場合でも、ギクシャクしたりエンジンがストールしないだけの低速トルクを、どの911でも備えている。しかも、フラット6はきわめつきのフレキシビリティを持つため、意外なほど低速走行が得意だ。

ハンドリングにしても、根本的にはあくまでもアンダーステア——しかも頑固な——だ。むしろ、それをどうニュートラルに持ち込むかの難しさを問題にしたい。

オーバーステアに見舞われるのは、高速コーナーへオーバースピードで突っ込んでしまったときぐらいだ。その際にスロットルを急に閉じてステアリングを切ったりすれば、RRならずともFFだってスピンしかねない。911の場合、後輪が滑り出す勢いは強いが、いずれにしてもそうした状況ではどんなクルマでも腕に覚えがなければパニックに陥る。

911の走りをきわめ、それを“美”にまで昇華させるには、まず基本に忠実であることだ。先にも記したとおり、機械として完成されているだけに、その後できちんとステップを踏んでかかわり方を深めていけば、911は決してドライバーを裏切ったりはしない。特別な技を使わなくても、911のイメージからは思い浮かばない“華麗”と呼べるような走りにも迫れるはずだ。

ドライバーWeb編集部