2024/02/28 旧車

ネットがないのに通販はあった!? 平成に突如現れたクルマの通販ショップ【80年代の限定車・特別仕様車研究 旧車雑誌オールドタイマーより】

ネットがない時代に…

業界唯一の?サビ取り旧車雑誌「オールドタイマー」の過去記事からおもしろネタを厳選して再掲載!



◇◇◇下記、当時原文ママ(2019年6月号)◇◇◇

ジェミニ・ディノスバージョンとは?

文/環田昌大

本誌166号が発売された頃、新元号が巷の話題になっていた。振り返ってみると平成は「平らに成る」という穏やかな時代を希求したものだったが、この31年間、世の中は目まぐるしく変化した。生活はネットの普及でガラリと変わり、路上には水素電池車まで登場。そんな中このページでは、今では当たり前過ぎる装備が、1980年代当時は物珍しく高級だったことを書き連ねている。

ただし今も昔も基本的に変わらないのが新車の販売方法だ。店へ行き商談をして購入する、ネットで買うなど方法はいくつかあるが、相手は必ず自動車販売店である。ところがネットのなかった’80年代に、自動車販売店ではない「通販ショップ」で売られたクルマがあった。いすゞジェミニ「ディノスバージョン」だ。

ディノスとはフジサンケイグループが運営していた通販会社。テレビショッピングとカタログ出版を連動させ、’70〜80年代のお茶の間に浸透。’87年4月、ついにクルマを通販することになったのである。

ベースは2代目FFジェミニ(中期型)で限定300台。注文方法だが、まず全国7カ所にある受注センターに電話。そこからディノスの営業マンが家まで来てくれ、商談となる。試乗車で訪問することもあったようだ。アフターサービスは地域のいすゞ販売店が担当。下取りや分割払いも可能とカタログの説明にはある。

注目すべきは価格。同等装備車の小売希望価格が138万6千円であるのに対しディノス特別提供価格は117万円。軽自動車に少し足せば買える金額である。販売店マージンや営業費、固定費をカットした通販ならではの価格破壊だ。ターゲット層はディノスの通販同様に主婦やヤングミセスだった。

とはいえディノスバージョンは安っぽくはない。(スタンダードに見えない)大型樹脂バンパー、サイドプロテクター、ハロゲンヘッドライト、フォグランプ、電動ドアミラー、防眩ルームミラー、パワステ、タコメーター、エアコンなど当時としては大盤振る舞いの装備である。上級グレードのC/CとスタンダードグレードのT/Tの間を埋めるという意味でもナイスチョイス。ちなみにディノスバージョンには日産マーチ、スバル・レックスもあった。

そのディノスも現在は同じフジサンケイ傘下にあるセシールと合併をして「ディノス・セシール」に(※編集部注:2021年3月、セシール事業を譲渡し、商号は「DINOS CORPORATION」に変更)。もちろん特別仕様車の販売は行っていないのであしからず。

今回は同じ2代目ジェミニの後期型に設定された特別仕様車、「ウインターフィット」も紹介しておこう。こちらは限定1500台。ディノス仕様に劣らぬ“謎車”である。


●いすゞディーラーでは買えないディノス通販専用モデル。カタログモデルにはないE/Eというグレードで価格は117万円。同等仕様のジェミニより20万円以上も安いとのこと(限定300台)


●ディノスバージョンのベースは一番安価なセダンT/T(1.5ℓガソリンエンジン+3速オートマ)。スタンダードグレードに見えないよう大型樹脂バンパー、サイドのプロテクター、ブラックピンストライプ、ハロゲンヘッドライト、フォグランプ、電動ドアミラー、防眩ルームミラー、パワステ、チルトステアリング、4本スポークステアリングホイールやタコメーター、エアコンなどを装備。ボディカラーは6色選べるがピュアホワイトが標準でその他5色は注文色。コラボモデルにしては充実した内容だ

■もうひとつのジェミニ“謎”限定車





●2台目ジェミニに設定された1500台限定の特別仕様車、「ウインターフィット」。G/Gリミテッドをベースにビデオウォークマン、CDプレイヤー、ハイマウントストップランプ、ピンクチェック・シートトリムなどを装備。カタログからわかるとおり、ウリはオマケのビデオウォークマン(小型の液晶テレビ一体型8㎜ビデオデッキ)。当時このクルマを買っちゃった方、ぜひそのときの心境をお聞かせいただきたい

■オールドタイマーは、旧車に特化した隔月発行の自動車雑誌です。レストアする人たちの立場からクルマをとらえ、旧車を長く乗り続けるための方法などを紹介します。現在、定期購読者様専用の会員サイト「OT-club」で、自動車本体や部品など、早い者勝ちの売買情報配信中!

ドライバーWeb編集部

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