2020/12/15 旧車

なぜタイプRは生まれた? 上原 繁氏が明かしたNSX タイプR開発秘話

●初代NSXの開発責任者を務めた上原 繁氏

120kgもの軽量化を達成



2020年に30周年を迎えたNSX。そのスーパーバージョンが「タイプR」である。1990年9月に標準モデルが発売されたが、それから約2年後の1992年11月に受注生産による発売がスタートした。走りの楽しさを徹底追求し、さらに運動性能を際立たせたモデルで、レーシングマシンに匹敵する高度なチューニングが施されている。


●NSXタイプRのボディカラーには、1965年のホンダF1初優勝マシンを彷彿とさせるアイボリーホワイトの専用色「チャンピオンシップ・ホワイト」を設定

最大のポイントはノーマル5速MT車(1350㎏)より約10%軽い1230㎏の車両重量である。オールアルミモノコックを持つNSXはノーマルのままでも軽いが、さらに数十項目にわたる徹底した軽量化を進めて、120㎏におよぶ軽量化を実現した。その結果、パワーウエイトレシオは4.82㎏/psから4.39㎏/psに減少し、パワー換算では27.5馬力の性能向上に匹敵するという。

軽量化のメニューは具体的に、TCS(トラクションコントロールシステム)、SRSエアバッグシステム、クルーズコントロール、フォグランプ、パワードアロック、ドアミラーのリモコンを取り外し、オーディオやエアコンもオプション扱いに。カーペットやトランクマットも軽量化の対象となり、遮音材も廃止されている。さらにリヤのパーテーションガラスの1枚化、前後バンパービーム&ドアビームのアルミ化、小型バッテリーの採用、アルミホイールの軽量化、ハーネス類の減量(約6kg)などだ。



パワーユニットは、3L・V6 DOHC・VTECのC30A型を搭載するが、チタンコンロッド、超精密鏡面仕上げクランクシャフト、ピストンのバランス取りなどを実施して、高回転域のスムーズさやレスポンスを向上させている。エンジンのスペックには変更はない(280ps/7300rpm、30.0kgm/5400rpm)が、軽量化やエンジンのファインチューン、最終減速比の変更(4.062→4.235)によって加速性能を向上させている。

タイプR設定のいきさつ



開発の経緯について初代NSXの開発責任者を務めた上原 繁氏に伺った。

「理由はいろいろあったんですよ。1つは軽量化したら、おもしろいクルマができるだろうなと思って。たまたまはぎ取ったクルマを作ったら、けっこうおもしろかったんですよ。それとね、一番最初にヨーロッパのジャーナリストが試乗したときにね、“これだけ軽量化のポテンシャルを持っているのにそれを使わないのはもったいない。軽量化に徹したらすごいクルマができるだろう”と言われて考えさせられたこともあった。それからね、オーナーズミーティングが始まったんですよね。そしたらやっぱりサーキットを走ってもっと走りやすい、楽しいクルマが欲しいですねってユーザーの方に言われたり。

あとはトップの川本(信彦)社長が、こういうものを出すと“競走”になるから、次の一手を考えておけと。まあ、“競走”できるようなものを作ろうかと(笑)。そんなようなことで、最初はクラブマンレースで走ることができるようなクルマを作りたいねということで始めたんです。

エンジンはパワーアップって言ったけど、そういうのはとてもできる段階ではなかったですよね。一番最初のVTECを出すので精一杯でエンジンのグループは疲れ果てていると。いろいろもろもろ事情があってね。走りがよいクルマを作ったらおもしろいなということで、タイプRになったんですけれどね。

それから初代のNSXは、全部が揃っていて、適当かどうかわからないけれども“一高東大を出たクルマ”のようだと。隙がない、おもしろみがない。完璧に出来ていると言われたんですよね。おもしろみということはどういうことかと研究して、ああいうタイプRを作ったんです」

タイプRの命名の由来



「“タイプS”がいいだろうというのがいたんだけど、タイプSのイメージじゃ、われわれが込めた情熱がとても伝わらないだろうということで、“タイプR”になった。Rは“レースコース”のRだし。

あのころ、NSXのとき“赤派”と“シルバー派”というのがあってね。赤派というのは全部はぎ取って徹底的に速いクルマを造る派。シルバー派は電子制御がいっぱいあって、快適なクルマを造る派。結局、最初に造った(90年のNSX)のはその寄せ集めでした。両方が両立するクルマを作ったんです。

エンジンをパワーアップする余力はないし、どうやったら速くできるかといったら“クルマを軽くすること”だと。軽くするとおもしろいと、動力性能もハンドリングもブレーキも全部よくなる。車体の剛性感は同じ剛性だけれども、軽くすると剛性感が増すんですよ。そういうのとかね、いろいろ面白いことがあってね。クラブマンレーサーという感じでもあったし、それからあと60年代のレーシングスポーツみたいなイメージにしようかとかね。そのようなイメージで作りました」


●赤色のフロント・ホンダエンブレムとNSX-Rエンブレムを採用。5速MT専用で価格は970万7000円(東京渡し)だった





〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部