2023/01/23 コラム

本当に「無料」がいいのか日本の高速道路! 理想に思えた償還主義が引き起こした「詐欺」

●財源はどうする? 



■タダより高いものはない

ただ、「高速道路は将来タダになる」と今現在も本気で思っている人は、はたしてどれくらいいるのだろうか。

建設の借入金を通行料金で一定の期間内に返済し、そのあと無料開放する償還主義。実際にそれが叶った道路・橋・トンネルは全国にたくさんある。筆者の身近なところでは、例えば神奈川県の箱根新道。2011年に無料化されて料金所を初めて“素通り”したとき、「有料道路ってホントにタダになるんだ」と思ったものだ。

しかし、いわゆる高速道路はといえば、東名・中央道で毎年恒例の大規模集中工事、管理・維持費も莫大であろう東京湾アクアライン、首都高でついに始まった日本橋区間地下化事業(完了予定は2040年)などを見るだけでも、無料開放される日は未来永劫来るとは思えない。

日本の高速道路は有料でいい。日本は欧米などに比べて橋やトンネルといった構造物が圧倒的に多く、管理・維持にも相当なコストがかかるというから、それを通行料で賄うのはごく自然なことだ。

その代わり、料金を恒久的に安くすればいい。今は物価高騰が庶民生活を苦しめているが、それよりずっと前から日本の高速道路料金はあまりにも高すぎる。これを現在の3分の1や4分の1に引き下げるだけでも、国内観光の活性化や物流コスト低減などに絶大な効果を発揮する。輸送コストの大幅な低減は地方創生という国家戦略にも非常に大きな武器となるはずだ。民主党による無料化は頓挫したが、地域経済の活性化という狙いはまったく間違っていなかった。

驚愕の片道4000円でスタートした東京湾アクアラインが、ETC導入で2320円、そして現行の800円に割引され、もはや後戻りできない経済効果や地域発展を生み出したのはご存じのとおり。高速道路料金の設定は、ETCを使って長距離になるほど割引率を高くする、あるいは今流行りのサブスクで定額走り放題にするなど、方法はいくらでもある。

値下げに必要な財源を問題にするなら、その前に一般財源化されたガソリン税や自動車重量税などの道路特定財源を元に戻してほしい。理想に思えた償還主義は、もはや国が現在の集金システムを維持するための建前にすぎない。詭弁といってもいい。「タダより高いものはない」のである。

〈文=戸田治宏〉

ドライバーWeb編集部

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