2023/06/19 コラム

まさかカルディナとGRカローラが繋がるとは…打倒レガシィの夢叶わぬも “モリゾウエディション” に受け継がれた「赤い倒立」の系譜

トヨタ カルディナGT-FOUR  “Nエディション”(2002年)


■トヨタ 86 GRMN(2016年)


●ニュルブルクリンク24時間レース参戦車両にも投入されたエアロシステムは強力なダウンフォースを発生させ、優れたコントロール性にも貢献。当時価格は648万円

2012年に発売された初代86は、通常グレードのいわゆるカタログモデル以外にも、特別仕様車からコンプリートカーまでさまざまなモデルが登場した。86GRMNはそのなかで「最強の86」と言っていいフルチューンコンプリートカーだ。抽選で100台が限定販売された。

ニュルブルクリンク24時間耐久レースで得たチューニングのノウハウは、車両の全域に及んでいる。「FA20-GR」の型式名が与えられたエンジンは、フリクション低減のためピストンやクランクベアリングなどを専用設計。吸排気系には可変インテークマニホールド/完全等長エキゾーストマニホールドが採用され、動力性能はノーマルの200馬力/20.9㎏mから219馬力/22.1㎏mまで引き上げられた。1本出しのセンターマフラーは4000 回転付近で切り換わる可変バルブを内蔵し、街乗りでの静粛性とスポーツ走行時の刺激的なサウンドを両立する。

●タイヤは前後異サイズ。ブレーキはフロントに対向6ポット、リヤは対向4ポットのモノブロックキャリパーを採用。リヤウインドーは世界初の曇り防止の熱線入り樹脂製ウインドゥとした

外装はボンネット、ルーフ、トランクリッドを軽量なカーボン(CFRP)製とし、大型リヤウイングが象徴的なフルエアロで武装。後席が取り払われ2シーター化された室内は、バケットタイプシートのレカロ製シートを備えたドライバーの仕事場だ。

車両の土台となるボディは、アンダーフロアやトランク内のブレース追加、リヤパフォーマンスロッド採用などで念入りに剛性強化。タイヤは内部構造から専用開発されたブリヂストン ポテンザRE-71Rで、サスペンションもそのハイグリップに合わせてポテンシャルが格段に高められた。そして、フロントに採用されたのが車高・減衰力調整式(手動式)の倒立式ショックアブソーバーだったのだ。


●シート表皮はアルカンターラ。ノーマルより小径化されたステアリングも同素材・同色でコーディネート

GRMNはGRピラミッドの頂点に君臨する「究極のGR」。元々は「GAZOO Racing tuned by MN」の略称で、MNは「マイスター・オブ・ニュルブルクリンク」を意味する。そして、これもまた、じつは「マイスター成瀬」ではないかと言われているのだ。

成瀬氏を彷彿させるモデル名の2台に採用された倒立ストラット。それが、成瀬氏の愛弟子でありマスタードライバーを受け継いだモリゾウ氏が自身の名を冠したGRカローラに採用されたのは、単なる偶然なのだろうか。それとも…。



〈文=戸田治宏〉〈写真=ドライバーWeb編集部/トヨタ〉

ドライバーWeb編集部

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