2023/06/07 コラム

販売好調のデリカミニ。約60年前にも「モデル途中の車名&外観変更」という”荒技モデル”があった!?

約4カ月間に約1万6000台の受注を獲得した三菱デリカミニ

2023年5月25日に発売された三菱デリカミニは軽スーパーハイトワゴン、eKクロススペースの事実上のビッグマイナーチェンジ車である。月販目標台数の2500台に対して2023年1月13日〜5月24日までの受注は約1万6000台で、eKクロススペースの2022年4〜9月の月販平均台数が825台だから、ビッグマイナーチェンジ後は約5倍の(受注)実績となっていることがわかる。好調な立ち上がりを示しているわけだ。


●eKクロススペース

さて、モデル途中で車名とスタイルを変えたケースは、じつは三菱の過去のモデルにも存在した。三菱500のビッグマイナーチェンジで車名を変えたコルト600である。三菱500は、通産省の国民車構想をひとつの契機として、超小型車が普及している欧州の情勢に鑑み、リヤエンジン・リヤドライブの4人乗りの安価な乗用車として開発がスタート。1960年4月に発売されたが、約1年間で7866台の販売実績となり、目標の月販1000台には到達しなかった。


●三菱500


●コルト600(発売当時はコルト デラックス)

そこで、1961年8月から乗車定員を4人から5人に増やし、エンジン排気量を493㏄(NE19A型)から594㏄(NE35A型)に拡大した「三菱500スーパーデラックス」を発売した。当初の国民車的な性格を貫くために基本形状は変更せず、車名も600㏄ながら“三菱500”であった。しかし、他社から多彩な小型乗用車が発売されており、さらにスバル360など税法上で有利な軽乗用車に人気が集まるようになり、三菱500の新グレード追加はあまり功を奏しなかった。

三菱では三菱500の販売が上向かない原因の一つが、シンプルすぎるスタイルと装備にあると分析。1962年6月にビッグマイナーチェンジを実施することになった。外観はボディの前半分を伸ばし、リヤの絞り込みを少なくして細長くやや尖った、立派に見える形状とした。エンジンは三菱500スーパーデラックスに積んでいた600㏄に換装。車名についても「若駒」を意味する英語の「コルト」に一新した。広々とした野や山を自由に走りまわる若駒を、伸びゆく三菱自動車、三菱乗用車のシンボルとして命名。なお、車名は正式には「コルト デラックス」であり、1963年7月に上級のコルト1000の登場に及んで(1963年9月に)差別化のために「コルト600」と呼ばれるようになった。

残念ながらこのビッグマイナーチェンジでも販売は上向かなかったとのことだが、三菱自動車の発展の礎として重要な役割を果たした。デリカミニも三菱では約61年ぶりにビッグマイナーチェンジで車名を一新したが、販売も好調とのことで今後に期待したい。

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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