2021/08/24 コラム

加害者はウソをつき放題!? 交通事故における「死人に口なし」を裏付ける恐ろしいデータを発見

●検察統計年報を眺めてみると

■過失運転致死における嫌疑不十分は割合が高すぎる…つまり?



最後に、「過失運転致死」のデータだ。恐ろしいというのはこれなんである。ようく見てほしい。

・公判請求  1266人        
・略式命令請求 735人            
・不起訴    993人             
 (起訴猶予  176人)            
 (嫌疑不十分 752人)       
 (その他    65人)

一般犯罪や道交法違反と決定的に異なるのは、公判請求が略式や不起訴より多いことである。そりゃそうだ、被害者を死亡させたんだもの。

ところが! 不起訴のうち起訴猶予はたった約18%。嫌疑不十分が約76%もある。ちょっと待て、一般犯罪の嫌疑不十分は約20%、道交法通違反では約5%、過失運転致傷では約3%でしかないんだよ。なのに過失運転致死の嫌疑不十分は約76%。おかしいでしょ、めちゃくちゃ異様でしょ!

過失運転致傷の裁判では、被告人(加害者)と被害者の説明が真っ向から対立することがある。過失運転致死ではその対立は皆無だ。なぜなら、被害者が死亡しているから。死亡した被害者は説明できないから。「死人に口なし」、そのことが、過失運転致死の嫌疑不十分が異様に多いことの裏に、はっきりとあるのではないか。

青信号で交差点を進行中、赤信号無視のクルマに激突され、死亡したとしよう。加害車両の運転者は「俺のほうが青だった。死んだ奴のほうが赤信号無視だった」とうそをつき、嫌疑不十分で不起訴になるかもしれない。あの世で悔しい思いをしないためにも、ドライブレコーダーを取りつけましょう。

〈文=今井亮一〉
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。

ドライバーWeb編集部

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