2021/05/02 モータースポーツ

水素エンジンの性能・利点・弱点とは? モータースポーツに一筋の光…レーシング・カローラが富士24時間合同テストで走行

●フロントにはGRヤリスがベースの水素エンジンを搭載


水素エンジンの性能・利点・弱点とは


さて、この水素エンジンは果たしてどんな性能を実現し、どんな利点があり、またどんな弱点、欠点があるのか。まずパワーとトルクについては、ほぼノーマルのGRヤリスと同等の数値を実現しているという。水素は例えばガソリンに比べて含有エネルギー量は大きくないが、一方で燃えやすく、燃焼速度が速いというメリットを持つ。高速燃焼が可能となれば、レスポンスはよくなり、トルクも出る。高回転化にも有利なはずだ。


●タンク内の水素はMIRAI同様に気体

一方、問題は燃え過ぎることで、下手をすると予期しないところで着火してしまう。この燃焼のタイミングをいかにコントロールするかが水素エンジンのキモなのだが、トヨタによれば長年培ってきた直噴技術が大いに生きているのだという。

ラップタイムは手元計測で1周2分4〜5秒あたり。フィットなどが走るST5クラスの車両とほぼ同等というところで、車重がかさむことなども考えれば、決して悪くはないというところだ。

現状、最大の問題は燃費である。高圧水素タンクの容量は合計7.34kgで、MIRAIの5.6kgをも凌ぐ。しかしながら今回のマシン、連続周回数は12〜13周程度だという。富士スピードウェイの全長は4.563kmだから、13周として約60kmしか走れないことになる。1kg当たり約8km。FCVのMIRAIは1kg当たりざっと100kmは走るというのに、だ。



もっとも、それは最初からわかっていることで、最初の会見で豊田章男社長は「ピットの耐久レースになりそうですね」と話していた。実際、24時間レースでは50回近くのピットストップが必要となりそう。参考までに、ST5クラスのデミオ ディーゼルはかつて、45Lの燃料タンクで約70周連続で周回していた。その差は大きい。

ちなみに今回のレースではパドックに移動式水素ステーションが設置され、こちらで充填が行われる。この辺りのレイアウト等々も、やはりFIAとの協議の上で決められたということだ。


●水素充填のシーン

燃費については、燃焼についての知見が蓄積されていけば、さらに伸びていくことは間違いない。実際、水素は燃えやすいということは、つまり燃料のリーン化がしやすい。ここはまだ開発の余地が大きいという。実際、レース本番までにも、まだまだ進化してきそうな気配である。

ドライバーWeb編集部

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