2021/05/02 モータースポーツ

水素エンジンの性能・利点・弱点とは? モータースポーツに一筋の光…レーシング・カローラが富士24時間合同テストで走行

●フロントにはGRヤリスがベースの水素エンジンを搭載


なぜ今、水素エンジン? モータースポーツに光を



それにしても、トヨタはなぜ水素エンジンを開発していて、しかもそれをレースに投入するのだろうか。ひとつには、自動車に突き詰められた目下最大の課題であるカーボンニュートラル達成のための、ひとつの可能性の提案という側面がある。すべてをEV化すればいいわけではなく、もっといろいろな可能性を考えてみてもいいのではないかという話だ。

それを実験室レベルに留めずレースで鍛えようというのは、ひとえに開発速度を高めるためと言っていい。実際、サーキットを走ることができ、24時間の耐久性も十分イケそうというレベルまで、たった4カ月で来れたのはレースという目標があったからに他ならない。


●トランスミッションは「MT」だ

開発陣と話すと、皆この4カ月のことを大変だったと言うのだが、実際には顔は笑っている。きっとエンジニアとして燃えに燃える時間だったのだろう。そもそもTOYOTA GAZOO Racingはモータースポーツの開発サイクルの速さを市販車に持ち込むというテーマを掲げていたわけだが、今やそれはトヨタ全体の速度感になっていると言ってもいいのかもしれない。

さらに言えば、こうした車両の登場はモータースポーツの未来を明るく照らすものでもある。例えば近い将来、市販車のほとんどがEVになったとしたら、スーパー耐久のようなレースは成立できるだろうか? まして24時間レースなんて…。レース業界そのものが存在が難しくなるという可能性は、十分にある。



しかしこうしてカーボンニュートラルを実現しながら、エンジン技術での戦いを継続できるとなれば、モータースポーツの火を絶やさないで済む。豊田章男社長もとい、レーシングドライバー“モリゾウ”選手は、力を込めてそう言う。自動車のサステナビリティを本当の意味で考えるならば、いまクルマに関わる人すべてがハッピーでなければ。モータースポーツも、その大事な一要素だという豊田社長の哲学が、ここに貫かれているわけだ。

冒頭に記したように、レース本番は5月21〜23日に開催される。そしてこのマシン、モリゾウ選手も乗り込む予定だという。未来を憂い、あるいは期待するクルマ好きは、可能ならばサーキットに足を運んで実際にこのクルマの走りを見てみてほしい。そしてエンジン音にも耳を傾けてみてほしいと思う。

おっと書き忘れていた。そう、この水素エンジンは内燃エンジンなので、当然サウンドがある。燃焼速度が速いのでガソリンエンジンよりもやや甲高い、いい音を響かせるのだ。

電動化の時代になったらエンジンの吹け上がりも、サウンドも、無縁になってしまうのか…と危惧しているクルマ好きは、きっと少なくないはず。しかし水素エンジンなら、それらを失うことはないのである。

まさにクルマを、ドライビングを、モータースポーツを愛する人すべてにとっての夢の第一歩。まだ本当に始まったばかりのプロジェクトだが、今後の進捗には大いに注目していきたい。



〈文=島下泰久〉

ドライバーWeb編集部

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