2020/10/08 コラム

BMWが自動でバック? リバース・アシスト機能は気分がよすぎる|木下隆之の初耳・地獄耳|

●BMWジャパンのYouTube公式チャンネルより

リバース・アシストに夢中である。
そう言うと、担当編集者Kが怪訝な顔をする。
「リバースのアシストっすか?」

そう、BMWに装備されている安全機能のひとつである運転支援技術である。BMWのそれは、いわば「後退時ステアリング・アシスト機構」と言い換えてもいい。バックで走行するときに、ステアリング操作を代行してくれるのだ。
「バック? 車庫入れ機能っすか? それなら珍しくないっすけど」


●リバース・アシスト機能は、3シリーズなどに設定されている

それとは異なる。BMWのリバース・アシストは、35km/h以下で走行していた道筋と走行パターンを、最長50mに限って記憶してくれている。その記憶を頼りに、今来た道を忠実に1mmもズレずに舞い戻ってくれるのである。
「バックの自動運転っすか?」


●BMWジャパンのYouTube公式チャンネルより

確かにそうとも言える。ハンドルから手を離しても、ハンドルはクルクルと生きているかのように動き回る。加減速はドライバーに委ねられる。たいがい、クリーピングを使った極低速が相応しいが、いつ何時でもドライバーが運転に戻れることが前提になる。厳密には運転支援である。

「でも、いつ使うんっすか?」
「だからバックするときだよ」
「キノシタさん、後ろ向きの記事、最近多いっすね」
「多いか?」
「先日は、後ろ向きでクルマに乗り込むトヨタのターンチルトのネタでしたし…」
「人生後ろ向きなのは、キミだろ」

ともかく、リバース・アシストは、自動でバックのステアリング操作をしてくれる機能なのだ。例えば細い路地に紛れ込んでしまったとする。突き当たりだった。Uターンもままならない。来た道を長々とバックで戻らねばならない。そんな場面で生かされるのだ。すれ違いが難しい場面でも重宝だろう。譲る譲らないでにらめっこするような場面だ。そんな状況でも、素早く安全に後退できるのである。これは株が上がるってものだ。

「そりゃ、便利な機能っすね」
「そうだ、キミのような運転の未熟なドライバーには最適なのである」

しかもBMWの素晴らしいところは、そんな操作が簡単に、スイッチひとつでセットできる点にある。シフトレバーをバックに入れる。するとモニターに、リバース・アシストの文字が表示される。それをクリックするだけなのだ。慣れれば1秒でセット完了だ。ブレーキペダルに添えていた足の力をそっと抜くだけで、BMWはスルスルと、そしてハンドルはクルクルと、忠実に軌跡をなぞってくれるのである。もちろん障害物があれば、ブザーや表示で報せてくれる。緊急停止も可能だ。衝突の心配はない。

はBMWの機能で気に入っているのは、操作がシンブルだという点である。このリバース・アシストも、わずか1秒でセットが完了する。ワンクリックで次の動作に移れるのだ。

一般的に日本のメーカーであれば慎重に、コンプライアンスに敏感だから、操作系の階層を巡りようやくたどり着いた機能にセットし、さらに「YES/NO」の確認がなされるはずである。例えばクルーズコントロールでさえ、ステアリング上のボタンに触れるだけで運転支援の走行が始まる。使い勝手がいいのだ。ドライバーへの信頼感がある。自己責任の国ならではの機能だと言ってしまえばそのとおりかもしれないが、日常に寄り添うような機能であることがありがたい。

「ところでリバース・アシストに夢中って?」
「小道にズカズカと踏み込んでいける。対向車とのすれ違いでは、我先に後退して感謝される。気分がいいのだ…」
「なんだ、そんなことっすか」
「怒」

〈文=木下隆之〉

ドライバーWeb編集部

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