2020/10/05 コラム

映画「007は2度死ぬ」のボンドガール「浜 美枝」が愛したトヨペット コロナ【東京オリンピック1964年特集Vol.25】

前回オリンピック開催年、1964年を振り返る連載25回目は、driver1964年9月号に掲載した「日本のB.B. セコハンを愛す」に関して。1967年に映画「007は二度死ぬ」でボンドガールに抜擢された「浜 美枝」が登場している。

※該当記事はページ最下部


仕事の合間を縫って、浜 美枝がプールで遊ぶ



1964(昭和39)年のdriver誌9月号からは日英独を代表する偉大な大衆車を採り上げているが、ここでちょっと一服。

当時のdriver誌では毎号のように、銀幕のスターをはじめとする各界の有名人が愛車とともにグラビアを飾っている。創刊した4月号の石原裕次郎と伝説のメルセデス・ベンツ300SLに始まり、三船敏郎とジャガーマーク2&MG-TD、ミッキー・カーチスとモーガン、藤田進とオールズモビル98…。

そして、9月号に登場しているのは女優の浜 美枝である。



筆者は奇しくもこの64年生まれ。彼女の名前ですぐ思い浮かぶのは、ベリーショートがよく似合う知的で穏やかなベテラン女優の姿だ。

だから、映画「007は二度死ぬ」を初めて観たのはいつだったかさっぱり覚えていないが、そこで日本人初のボンドガールを若林映子といっしょに演じる姿には、ちょっと意外だった記憶がある。ボンドカーがトヨタ2000GTだったことも、ご存じの方が多いはず。このロードショーと同じ1967(昭和42)年に発売されている。


●映画「007は2度死ぬ」のために作られたトヨタ2000GT”ボンドカー”

driver誌に登場したのは、ボンドガールに抜擢される3年ほど前だ。この時、二十歳。1960年に東宝からデビュー以来、すでに若手女優の有望株として活躍しており、この年の春にはカンヌを訪れている。浜についてネットを見ていると、「ハーフですか?」という書き込みもあるが、それも確かに納得のエキゾチックな顔立ち。ウ~ン、かわいい。

「カンヌ映画祭に行ったときも、昼間はビキニスタイルで水上スキーに興じ、パリっ子をして『日本のB.B.がやってきた』といわしめたとか…」(文中より)

これが企画のタイトル「日本のB.B.(ベベ)セコハンを愛す」のゆえんの一つ。B.B.は欧州を代表するセックス・シンボルと言われたブリジッド・バルドーだ。浜は若かりし頃もそこまでセクシー路線ではなかったと察するが、世界的スターに例えられた心持ちはどのようなものだっただろうか。



片起こしのタイトルページを開くと、仕事の合間をぬってプールを楽しむ光景が微笑ましい。場所は麻布プリンスホテルとある。その後、西武グループはフィンランド大使館と土地を等価交換するかたちで、六本木3丁目に六本木プリンスホテルを建設。現在はテレビ東京の社屋が建っている。麻布プリンスの跡地は今もフィンランド大使館だ。



中古で購入したコロナが愛車



彼女がそのプールに通う愛車としていっしょに写っているのは、2代目のトヨペット コロナ。中古車を兄と資金を半分ずつ出しあって買ったとある。



これが、タイトルの2つめのゆえん。セコハンとはセコンドハンド、つまり中古を意味する。筆者の年代でも使った覚えはないが、半世紀前はこういうワードがナウかったようだ。省略語が流行ること自体は、昔も今も変わっていない。

当時、コロナ1500は新車で60万円以上。大卒の国家公務員の初任給が2万円ほどの時代である。売れっ子女優にとっても、中古の小型セダン手頃な大きさでもけっして安い買い物ではなかったに違いない。



記事の最後では、次に欲しいクルマはセミスポーツカーと答え、いすゞ ベレットGT(連載第12回)の名前を挙げている。その後の長いキャリアにおいて、彼女はどのような車歴を持ち、どのようなカーライフを歩んだのだろうか。


●コロナのキーにはエッフェル塔のキーホルダー

女優業のかたわら、食や民芸など日本の伝統文化に興味を持ち、自身も早くから箱根に居を移し、全国を旅して知見を深めながら自然との暮らしを考えてきたという浜さん。現在はライフコーディネーターとしても活躍されている。
いつまでもご健勝であることを願うばかり。そして、ボンドガール「キッシー鈴木」よ、永遠に。



〈文=戸田治宏〉




ドライバーWeb編集部

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