2021/12/06 コラム

オービスに捕まり、赤切符で罰金10万円…でも払えない。どうなる?

●分割で払う…なんて手もあるのか?


3、検察庁に相談して一部納付



「10万円は大金だ。後日の納付も難しい」という場合、いちばん妥当なのは、検察の徴収係に相談することかと私は思う。10万円を一括納付か、さもなくば労役場留置か、という二者択一ではない。法務省の統計には「一部納付」なるものがある。たとえば2020年度、すべての犯罪の罰金について「現金納付」は4万9881件。うち4172件が一部納付となっている。

「こういう生活をしており、今はぎりぎり3万円しか捻出できません。残り7万円、これこれの方法で稼ぎ、×月×日までに必ず納付します」

そうした誠実なお願いが突っぱられることは、あまりないようだ。法廷で検察官が、罰金判決を言い渡され途方に暮れる被告人に対し「係のほうに相談してみてください」とにっこり言うシーンを、私は目撃したことがある。悩んでうつ病になったり、ネットで「高額バイト」を探したりせず、まずは検察庁に相談しよう。詳しい説明は省くが、高額バイトに連絡をとったら人生アウトですぞ!

ただし、検察庁はめんどうを嫌う。威信を大事にしたがる。「ローンでよろしく。きゃぴっ」なんて調子の人、一部納付が許されたら「罰金は分割OKだよーん」とYouTubeで広めそうな人は、さくっと労役場へ連行されるかも。もし預貯金があれば、調べられて差押えを食らうかも。

以上でごく簡単な説明を終える。全体をながめたうえで、どうするか決めてほしい。

さて、ここからは“豆知識コーナー”だ。さっきから言っている法務省の統計とは「最高検,高検及び地検管内別 罰金刑 執行件数及び金額(令和2会計年度)」というデータだ。会計年度とは4月1日からの1年間をいう。以下、単に年度という。

2020年度のすべての犯罪の罰金刑の執行額は361億5318万8000円。これは国の一般収入になるそうだ。じつは、罰金収入は昔はもっと多かった。たとえば2006年度は1006億1625万5000円だった。

昔、罰金収入の8割は交通違反と報道されたことがある。近年、飲酒運転、無免許運転、超過速度の大きい速度違反の取り締まりが激減している。そのせいもあるのだろう。交通違反以外の犯罪も全体に減ってもいる。やっぱり少子化の影響ですかねえ。

労役場留置による罰金刑の執行額は、2006年度は全体の約2%、21億9452万1000円だった。2020年度は約4%、14億1394万6000円だ。約2%から約4%へ増えている。日本は全体に貧困化してる?

〈文=今井亮一〉
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から交通違反以外の裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。

ドライバーWeb編集部

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