2021/12/01 コラム

踏み間違い死亡事故の88%は高齢者…加害者には厳罰!で問題は解決するのか

●加害者を厳罰して、なくなるものなのか?


■加害者には厳罰を…それだけでいいのか?



3、加害者に厳罰を!

どうすればいいのか。日常の運転では、アクセルをべた踏みすることはまずない。とりあえず、ベタ踏みしたとき加速をキャンセルする機能があったらいいね。日本の有能な技術者ならつくれるんじゃないか?

じつはとっくにつくられ、販売されている。複数の業者が、物理的に、あるいは電気的に加速をキャンセルする装置をつくっている。後付けの装置で、だいたい数万円で販売している。本誌『ドライバー』の2017年の2月号でだっけ、いくつも取り上げた。私も記事を書かせてもらった。

しかし、ベタ踏み防止装置は、まったくマイナーだ。なぜ? 私はもう40年ほど交通違反・交通取り締まりを通じて交通行政を見てきた。交通事故の裁判も940件ほど傍聴してきた。そこから見えてくるのは、交通事故に対するこの国の基本的な考え方だ。すなわち…。

「交通ルールを守れば事故は起こらない。守らせるためには違反者を取り締まればいい。事故を起こしたら処罰すればいい。重大事故が続くなら厳罰化すればいい。損害は保険でカバーすればいい」

これでは、踏み違い事故を防止することはできない。そしていちばん大事なことは、どんなに厳罰化しても、踏み違いで重大事故を起こした高齢者を死ぬまで刑務所にぶち込んでも、失われた命や損なわれた健康は戻らないってことだ! 踏み違い事故はこれからも起こり続けるだろう。大切な命、健康が奪われ続けるだろう。私は残念で悔しくてならない。

※ 「加害者を死刑にしても、失われた命は戻らない。何より大事なのは、人間についうっかりはつきものであることを踏まえたうえでの事故防止策だ。事故ったときに人(特に歩行者)が被害を受けない対策が必要だ」との趣旨を、私は長年言い続けている。そのうち「加害者を無罪放免にしろと今井は言っている!」とか、めちゃくちゃ攻撃されるかも。

今井亮一●肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。

ドライバーWeb編集部

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