2021/10/15 コラム

「つきまとい男から逃げたくて」…首都高を176キロで走行した女性に判決。情状酌量の余地はある?

●事故が起きなくてよかったが

■制限80キロを96キロ超過でオービスに撮影された女性


被告人は圧倒的に男性が多い。被告人とは刑事事件で起訴された人のことだ。テレビ・新聞は「被告」と呼ぶが、あれは公然たる間違い。被告・原告は民事の用語だ。刑事は被告人である。

女性の被告人も一部いる。女性率が比較的高いのは「覚醒剤取締法違反」と「窃盗」かな。「道路交通法違反」の女性率は低い。2021年5月末現在の運転免許保有者数は男性が約4453万人、女性が約3744万人。半分近くが女性なのに、交通違反の被告人として法廷へ出てくる女性は非常に少ない。重い違反をやるのは男性ばっかりのようだ。

今回、女性被告人の「道路交通法違反」の裁判を東京地裁で傍聴した。年齢は20歳代前半だ。女性は黒のリクルートスーツで出廷することが多いが、今回はまったく違った。ふわふわなブラウスとスカートは、色も素材もデザインもいかにもお上品なお嬢様風だ。高いヒールの靴はカツコツと良い音をたてる。ブランド品かな。ネールに合わせてピンク色の不織布マスク。こんなお嬢様がいったいどんな交通違反をやらかしたの?

検察官(若い男性)が起訴状を読み上げた。ある夜、首都高速の制限80キロの部分を…。

検察官「96キロメートル毎時超える176キロメートル毎時の速度で運転進行したものである!」

ひゃ、176キロって! 仰天する私をよそに、裁判手続きは進んだ。お嬢様、いや被告人は、前科前歴はもちろん交通違反歴もない。検察官の立証は、速度違反認知カード(オービスの写真が貼付された書類)などの要旨を告知し、数分で終わった。

裁判官「弁護人、立証をどうぞ」
弁護人「書証、人証、ございません。被告人質問を10分ほど」

弁護人は若干セレブ風のご婦人だ。よく国選弁護人として見かける。ちなみこの法廷は、弁護人も被告人も、そして裁判官も書記官も女性だ。法廷中央、証言台のところに被告人を座らせ、被告人質問の手続きが始まった。

ドライバーWeb編集部

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