2021/03/29 コラム

ついに出た電気自動車用ポータブル充電器。便利!と思ったら|木下隆之の初耳・地獄耳|

EVの不便さを解消する一手になりえる?



「EVが電欠して路上でストップする恐怖はエグいですよね」

担当編集者Kが苦々しい顔をしてそう言った。先日のこのコラムで、EVの不便さと楽しさを紹介したばかりである。

同感である。ガソリン車ならば、JAFや近所のガソリンスタンドに出張してもらえばすむけれど、電欠だとレッカーを呼ばないとならない。オオゴトになってしまう。

「でも、画期的な製品がデビューしたんですよ。電欠しても安心ッス」
「電欠しても安心? スペアバッテリーか何か?」
「惜しい‼︎  EV用ポータブル充電器ッス」
「おっ、ついに出たか。待っておったぞ」
「市販品としては世界初となります」


●米国企業「Blink」が発表した持ち運び可能なEV用充電器「IQ200-M」

災害用のスマホ充電器がある時代だ。EV用のポータブルがあっても不思議ではない。

でもガソリンで発電するんだって?



「これでEV拡販の障害のひとつになっていた電欠の心配から解放されます」
「ハンドルくるくるっと回せば発電するのか?」
「240VのAC電圧で、定格出力9.6kW充電です」
「手動でそんなにエネルギーが稼げるのか?」
「まさかぁ。ガソリンエンジン式です」
「ガソリンだと?」
「はい、内燃機関ッスね」

家庭用の普通充電器が3kW〜6kWである。それよりは強力だ。だが、コンビニの急速充電器は非力だといっても25kWある。高速道路サービスエリアの急速充電器は50kWだ。日産の販売店は高性能な90kWにも達する。それに比較すればローパワーである。

「そこがネックですよね。電気効率のいい日産リーフだって、1分間の充電で1km程度しか走れないですからね」
「でも、十分な気がするなぁ。だって、60分充電すれば60km走れる。サービスエリアかコンビニの急速充電器までたどり着けるんだからさぁ。もともとポータブル充電器で満充電にしようなんて思っちゃいないんだろ? その場をしのげればいいのさ」
「なるほどッスね」
「欲をかいちゃダメだ、欲をかいちゃ」

本体重量が160kgもある。目的は救助用



「ただ問題が…」
「なんだ?」
「本体の重量が160kgもあるんッスよ。ガソリンも41.2リッターも積むことになります。そんなのどこに積むんッスか? 合計で200kgになっちゃいますよ。後席を倒して積んだら2シーターになっちゃいます」
「ちなみにそいつはいくらだ?」
「うわさじゃ、71万円くらいってこと(汗)」
「で?」
「電欠が死んでも嫌なら、それを積むしかないだろうな」
「ますますEV生活が遠のいちゃうッス」
「でもな、よくよく考えてみろ。わざわざ71万円も投資して、せっかくの5人乗りを2シーターにして、わざわざ200kgもの充電器を積んで走ることはないだろうよ。 そもそも、それだったらレンジエクステンダーのほうが賢い」
「だったら意味ない?」

おそらくJAFや修理業者への需要は期待できる。電欠したクルマを救出するには都合がいい。

「というか、牽引フックのほうが便利じゃないッスか?」
「確かに。車載するならね‼︎」

〈文=木下隆之〉

ドライバーWeb編集部

RELATED

RANKING