2020/09/29 コラム

子供用のクルマ酔止め薬が売れているらしい・・スマホが理由?|木下隆之の初耳・地獄耳|

レーシングドライバー木下隆之もクルマに酔う


「クルマ酔い止め薬を常用している子供が増えているそうッスね」
担当Kが唐突にそう言い始めた。

どこぞの製薬メーカーの発表によると、子供用酔い止め薬の需要が増しているという。自動車でドライブするときに必ず薬を服用する子供がいるというのだ。当然大人が薬を買い与えるわけで、つまり、子供のクルマ酔いが常態化しているとの憶測が立つ。

「クルマに酔うって、考えられないッスね」

確かに僕は、酔い止め薬を服用したことがない。自動車で移動するときは当然のこと、船に乗るときでさえ、薬には頼らない。けっしてクルマ酔いに強いわけではない。というよりむしろ弱いようで、船酔いはしょっちゅう。だけど、酔わないよう心掛けている。移動中の読書や、スマホに目を落とすと瞬間的に頭がくらくらして吐き気を催す。

最近流行の運転シュミレーターでさえ、ウプッとなる。特に、全体が画面に覆われており、あたかもバーチャルコックピット風の本格的なものはヤバイ。動き出した瞬間に頭の中で天地がひっくり返る。1秒たりともゲームを楽しめないのだ。

なぜ人はクルマに酔うのか?



酔いの原因は諸説あるものの、一般的には三半規管や視覚からの刺激だという。不規則な加速や減速の繰り返しが、三半規管などを刺激する。自律神経が病的反応を表すのだ。脳から入ってきた情報と三半規管が感じる情報にズレが生じると、たちまち酔う。つまり、視覚からの情報ではクルマが走っているのに、三半規管は止まっていると感じる。これなんだ?って脳が矛盾を感じると修正できないのである。だから脳が矛盾を感じないように、可能なかぎり景色を眺めるようにし、視覚と三半規管の矛盾をさせないようしているわけだ。

僕がシミュレーターで酔うのはそれ。体は止まっているのに、画面の中のクルマは高速で疾走している。これがやばいのである。

車中でスマホに夢中な子供たち



子供の酔い止め薬常態化には、こんな仮説が成り立つ。
子供の酔い止め薬が売れているのは、スマホとの関係だろう。どこかに移動するとき、子供に限らず大人も、スマホに目を落とす。つまり、自ら酔いやすい状況を作っているのだ。それでも大人は経験値があるから、たびたび視線を景色に向けて酔いを防いでいる。だが子供はついついスマホゲームなどに夢中になり、激しく酔ってしまうのだろうと想像するのである。



僕が小学生のころ、自家用車はまだポビュラーではなかった。だから、生まれた瞬間にクルマを経験する人は少なく、酔いやすい環境だったと想像する。しかも当時のクルマは臭い。ガソリンの匂いが染み付いていたし、排ガスは容赦なく車内に忍び込んでくる。シートやフレームの匂いもけっして少なくない。ましてカークーラーなどなかったから、光化学スモッグに包まれる街中でも窓は全開なのだ。

しかもバスがやばかった。今よりも振動がブルブルと消えておさまらないのは想像のとおりだし、マニュアルギアのバスは変速のたびにいちいち加減速を繰り返す。フロアは板敷であり、防腐効果のためにオイルまみれ。これが臭くてしばしば鼻を抑えた。走っていなくても不快感で胃袋がムカムカしたものだ。それでも酔いに耐えられたのは、スマホなる最強の暇つぶしがなく、仕方なく景色をボーッと眺めるしかなかったからなのかもしれない。

スマホを取り上げて、梅干しで解決!?



そういえば、僕が子供のころ、遠足や修学旅行などでバス移動する際、「梅干しをへそに貼った」ものである。担任の先生がそう教えてくれた。

果たして科学的根拠があるのだろうか。梅干しに含まれるクエン酸が自律神経の乱れを整えてくれるとの説がある。酔い止め薬にも同様の効果がある抗ヒスタミンが含まれているからあながち間違いではなさそうである。
多分に精神的な作用があるように思う。「梅干しを貼っているから酔わないんだ」という思い込みがプラシーボ効果に作用しているのだろうとの説もある。まあ、自己暗示ですな。

今の時代、こんなにクルマがよくなったのに、クルマ酔いする子供が増えているって、甘いんじゃないの? スマホ取り上げれば一発解消のような気がするな。口に梅干しを放り込めば、酔いどころではなくなるだろう。

〈文=木下隆之〉

ドライバーWeb編集部

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