2019/10/24 コラム

1972年東京モーターショーに出展された幻の日産ロータリー車「NISSAN ROTARY」開発秘話



東洋工業(現マツダ)との技術的重複は問題ない?


──ロータリーは燃料消費が多いとか、信頼性に問題があるとか言われていますが、日産が新しく開発に乗り出されているのは、ロータリーエンジンの将来性について確信されているからですか?

真木次長 今のレシプロは100年以上の歴史を持っています。100年かかって改良を重ねてきたんですよ。ロータリーはNSUが売っているRo80もまだ月産1000台弱ですね。東洋工業さんはかなりの台数を作っていられるけども、ほんの最近です。技術屋として言えることは、ロータリーは動力機関としてまだ熟成していないということですね。これから10年、ないし20年の間に信頼性や経済性も良くなるように改良されていくと思いますね。技術屋はそういう期待する面も折り込んで開発に取り組んでいるわけです。

──東洋工業と同じスタートラインに並んだということですね。

真木次長 現在は情報化時代ですからね。世界のどこかの片隅で新しい開発がなされたら、ただちに伝わってくる時代ですよ。そういう意味で、技術の国際化というのはとっくに幕開けが終わっていると言えますね。

──東洋工業では長いことかかってシールなどを開発されていますが、日産の場合、東洋工業と着眼点が違うのでは?

真木次長 NSUのRo80に積んでいるロータリーエンジンと東洋工業さんのロータリーエンジンとは原理は同じですけど、材料の使い方が違いますね。アペックスシールやポートの問題がそれぞれ違っていていいんじゃないですか。その違いがまたユニークなところです。

──最後に、東洋工業が持っている周辺特許との関係ですが、市販されれば当然問題になってくる……。

真木次長 使えなければ使えないで別の手を考えざるを得ないし、NSUから導入したもののなかには東洋工業さんが使っていないものもありますし、今の技術開発力はどこのメーカーでもパテント問題で逃げられないものはないといってもいいでしょう。


当時のインタビューは以上だが、この時点で日産は各部品メーカーに対して「月産3000台から生産体制を整える」と伝えていたとも言われる。具体的には、ロータリーエンジンの心臓部といえるシール部品(アペックスシール、オイルシール、サイドシールなど)については理研ピストンリング工業(現リケン)、キャブレターについては日本気化器(現ニッキ)と日立製作所へ打診をしていたようだ。しかし、冒頭でも記したがロータリー車の市販化は幻に終わった。燃費の悪さ、オイルショックの影響がその理由だったが、サニーエクセレントベースで開発されていたシャシーはその後「ニューシルビア」へと生かされている。


●「ニューシルビア」と呼ばれ、1975年に登場した2代目シルビア。北米市場を意識し、アメリカンテイストなデザインが与えられた。L18型1800cc直4エンジンを搭載。

※当記事は1972年ドライバー誌4月20日号の記事を再構成したものです。本文中の表記は西暦に統一したほか、現企業名の補足など行っています。

〈文=ドライバーWeb編集部〉

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