2019/10/24 コラム

1972年東京モーターショーに出展された幻の日産ロータリー車「NISSAN ROTARY」開発秘話

ロータリーは環境対策エンジン開発の一環なのか?



──1975年から実施されるアメリカのマスキー法(排ガス規制)を乗り切れる無公害エンジンの開発はメドがつきましたか? トヨタはマスキー法に合格する装置の開発実験に成功したと報道されていますが。

真木次長 正式な形で発表されたんじゃないと思いますね。当社でもレシプロエンジンを中心にロータリー、ガスタービン、ベーパーエンジン、電気自動車といったものを開発しています。現在600名以上のエンジニアが取り組み、1971年は約60億円の予算を投入していますよ。排気ガス対策の主体は現在のレシプロエンジンの改良ということで、いろんなシステムを研究・開発しているのが現状です。

──川又社長がロータリーエンジンの試作をやっており『今年(1972年のこと)のモーターショーに参考出品する、1年ぐらいテストして来年秋に発売する』と発表して大きな反響を呼んでいます。サニークラスのスポーティカーに載せるということまで明らかにされていますけど、このロータリーエンジン車は無公害エンジン開発の一環としてなされているわけですか?

真木次長 ちょっと理屈っぽくなりますけど、ロータリータイプのエンジンは数百種類もあるわけで、そのなかで西ドイツのバンケル博士が実用化したロータリーエンジンはレシプロエンジンに比べ往復運動が無い、回転だけでやるというのは技術屋にとってはひとつの夢ですね。だからロータリーエンジンは振動上有利で、回転のスムーズさが最大の特徴と言えるでしょうね。当社もNSUからロータリーエンジンの製造権、ノウハウを含めて導入しましたが、排気ガス対策の決め手ということではなくて、新しい内燃機関のひとつとして開発していこうとしているのです。


●ドライバー1972年4月20日号(3月20日発売)、日産車特集内で「ニッサン・ロータリーはここまで開発されている」と題して展開されたインタビューページ。インタビューに応えたのは日産の新型車開発と取りまとめていた設計開発部・真木次長。

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