2023/05/22 コラム

なぜ馬車のマーク!? 高級ブランド「COACH」の由来を調べたら、クルマと密接で驚いた!

COACHのマークには馬車のモチーフを組み合わせている

鞄などの革製品で有名なハイブランド「COACH(コーチ)」。そういえばコーチのマークには、馬車が添えられている。なぜなのだろうか? その理由を調べてみると、クルマとの密接な関係がわかってきた。

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コーチは1941年、夫のマイルズ、妻リリアンのカーン夫妻によりニューヨーク・マンハッタン、ソーホー地区のロフトで産声を上げた。カーン夫妻の小さな工房は、財布、キーケース、ベルトなどの革小物の生産が出発点。6人いた皮革加工職人はいずれも卓越した技術を持ち、すべて1点ずつ手作りで行われていたという。高品質な革へのこだわり、縫い目の細部にまで気を配る丁寧な仕事ぶりは評判となる。

コーチにはもともと馬車という意味があり、妻のリリアン・カーンが付けた名前だと言われている。当時アメリカで作られていた馬具類を縫い合わせるステッチ技術と、職人たちにより丈夫な作りを生み出すステッチ技術から連想させるもので、そこにブランド名が由来しているのだ。コーチのマークに馬車のモチーフを組み合わせているのはそのためである。

そもそも、なぜ馬車はコーチと呼ばれているのか? コーチは中世のヨーロッパに広まった大型4輪馬車で、その語源は当時ハンガリーの「コッチ(Kocs)」という町で誕生した新型馬車=コッチ(Kocsi)にちなむ。中世末期になると、コーチは豪華に飾り立てられてパレードや冠婚葬祭で使われ、ヨーロッパの王族や貴族用の乗り物としてステイタスシンボルとしての役割を果たす。

2023年5月6日に行われた英国王室の戴冠式では、パレードに1762年製の黄金の馬車「ゴールド・ステート・コーチ」が使われ、格式高い典雅な馬車はイベントに華を添えた。

コーチは風雨から乗員を守る箱型のボディが特徴で、鉄道では「客車」の意味で使われるようになる。その後、自動車の発達によって、馬車時代のボディタイプは自動車のボディタイプに発展していった。

初期の自動車では、コーチは箱形ボディのセダンタイプを指す名称として用いられた。日本では、おもに1960年代に「1ボックスカーの乗用向けモデル」や「バス」を指す名称として使用。トヨタ ミニエースや初代マツダ ボンゴ、日産キャラバン/ホーミーなどに使われた。キャラバンでは2012年6月に現行モデルに切り替わるまで、乗用モデルにコーチの名称を最後まで使い続けた。その後ワゴンに改称したが、その理由はワゴンと呼んだほうがわかりやすかったからである。


●日産 ダットサン キャブライト コーチ(1966年)


●トヨタ ミニエース コーチ(1968年)


●日産 キャラバン コーチ(1973年)

ちなみに、「指導者」のことをコーチと呼ぶが、これは(乗合)馬車が「ある方向へ連れて行く、ある方向へ導く」ということから発展して、コーチと呼ばれるようになったという。

【参考文献】
『シップリー英語語源辞典』ジョーゼフT.シップリー著 梅田 修・眞方忠道・穴吹章子訳(2009年)大修館書店発行/『馬車の歴史』ラスロー・タール著 野中邦子訳(1991年)平凡社発行

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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