2023/01/31 コラム

じつはプリウス、ハリアーと同い年。今も残るクルマ、続かなかったクルマ…。花の1997年組(1)

●当時はステーションワゴン全盛期(手前:セフィーロワゴン、奥:マークII クオリス)


「プリウス」、「ハリアー」と同じく1997(平成9)年に誕生したクルマたち。前半は、今も当時の名前のまま代を重ね、継続販売されているモデルを紹介してきた。ここからは、すでに絶版となった同級生たちの記憶をたどる。

まずはトヨタ。“花の97年組” にはプリウスやハリアーにも負けない、新たなジャンルを開拓すべく送り込まれた意欲作があった。例えばこんな…。

■トヨタ カローラ スパシオ(1997年1月〜2007年)

●「スパシオ」はイタリア語の “空間” を意味する “Spazio”(スパッツィオ)に由来。全長4135㎜×全幅1690㎜×全高1620㎜

8代目カローラ(AE110系)のプラットフォームに背の高いワゴンボディを載せたコンパクトミニバン。開発テーマは、多機能で楽しさあふれる “私の部屋”。発売当初は2列シート4人乗り(2-0-2)と3列シート6人乗り(2-2-2)の2タイプを用意。前者は広い室内空間、後者は2列目をジュニアシートに切り替えられるなど、多彩なシートアレンジを売りとした。ただし見てのとおり6人乗りの2列目はかなり狭く、大人の常用には向かなかった。のちに一般的な2列5人乗り(2-3-0)が追加された。


●3列目席ではなく2列目席の有無による斬新なシートアレンジ(上:2列、下:3列)。3列シート車の2列目は脱着可能で、別売りのシートアタッチメントを使えば屋外でもベンチシートとしても使えた

■トヨタ ラウム(1997年5月〜2011年)

●全長4025㎜×全幅1685㎜×全高1535㎜。前出のカローラ スパシオ(2465㎜)より55㎜長いロングホイールベースが特徴

カローラより小柄のターセル/コルサをベースとしたコンパクトハイトワゴン。背高のパッケージと2列シートに割り切ったことで広い室内空間を確保。狭い場所での乗降や駐車を助ける左右リヤスライドドアや、フラットフロア、コラムシフト、足踏みパーキングブレーキなどを採用。前席左右と前後席間のウォークスルーが可能だった。99年には前席ベンチシートの「ペアベンチ仕様」を追加。


●テールゲートは一般的な上ヒンジではなく横開き式を採用。後席スライドドアの窓ガラスも昇降可能だった。「ユニバーサルデザイン」を量産車に導入したハシリ的存在と言える(写真はウェルキャブ)

カローラ スパシオとラウム。ともに2代でその名は途絶えたものの、両車の長所を採り入れ、統合するかたちでその系譜を今に受け継ぐのが「シエンタ」。初代は2003年に登場。10年にいったん生産中止となるも、後継車と目されたパッソ セッテの不振などによりまさかのカムバック。2代目で大きなヒットを飛ばし、今やプリウスとハリアーにも負けないトヨタの稼ぎ頭へと成長した。


●写真は2022年8月発売の現行型シエンタ Z(ハイブリッド)


●写真は現行型。3列7人乗り、2列5人乗りとも基本のシートアレンジは先代を踏襲。使い勝手を大幅に進化させた。ウェルキャブも同様(写真は車いす仕様タイプIII)

シエンタと同様に、車名は違えど起源が1997年に誕生したモデルであるのがスズキの「ソリオ」だ。その礎は「ワゴンRワイド」。ワゴンR(軽自動車)のボディを180㎜拡幅し、全長も前後バンパーを大型化して105㎜延長。軽規格よりひとまわり大きなボディに新設計の1Lエンジンを搭載した。以後改良やモデルチェンジごとに「ワゴンRプラス」→「ワゴンRソリオ」と改名を重ね、現在のソリオに至る。


●(左:ワゴンRワイド)ドアパネルやフェンダー、ライト類を共用するため見た目はほぼ初代ワゴンR。(右:ソリオ)現行型はワゴンRからの完全独立以後3代目にあたる

先に「すでに絶版となった」と書いたものの、前述のクルマたちは、名前は変われど完全に消滅したわけでなく、時代進化を重ねた現行ラインアップの起源だ。進化の過程としては当然だが、その基となる確かなコンセプトや優れたパッケージを備えたモデルが多く見られるのが “花の97年組” の特徴とも言える。92年のバブル景気崩壊以降に始めた、言わば “地に足を着けた開発” が、ちょうどこのころカタチになり始めたのだろう。

一方で、一代限りで姿を消しながらも鮮烈な記憶を残すモデル、すでに記憶の片隅からも消えかけているモデルもあった…。その2 につづく。

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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