2023/01/23 コラム

本当に「無料」がいいのか日本の高速道路! 理想に思えた償還主義が引き起こした「詐欺」

●財源はどうする? 

■2115年に高速道路無料化…ホントにできる?

日ごろ一般庶民の多くがこの国の中枢の失政や悪手に対して覚える失望や怒り。1月14日に報じられたニュースには、ある意味そうした感情さえ無力化し、完全な思考停止に陥らせることが狙いなのではないかと思った。

「国土交通省が高速道路の料金徴収期限を2065年から、さらに50年延長する方針を固めた」という一報だ。23日開会予定の通常国会に関連法の改正案が提出されるという。

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国は小泉政権下の2005年、道路関係4公団(日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団)を民営化。約40兆円もの債務は料金収入で2050年までに返済し、その後は全国の高速道路を無料開放することに決まった。しかし、これには将来的な改修や更新の費用が見込まれていなかった。

2009年には高速道路無料化をマニフェストの一つに掲げた民主党が衆議院選挙に圧勝し、鳩山政権が誕生。無料化に向けた社会実験をスタートさせたものの、財源不足と東日本大震災の発生によって中止に追い込まれた。

自民党が復権し第2次安倍内閣が発足する直前の2012年、中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故が発生。全国高速道路の老朽化対策費を賄うべく、2014年には料金徴収期限が2065年まで15年延長されたのだ。

2065年でも今から40年以上先で、けっこうな“未来”である。日本自動車工業会が国の方針を受けてカーボンニュートラル達成の目標にしているのは2050年。その15年後だから、自動車は再生可能エネルギーで走るZEVがごく当たり前になり、自動運転車も普及が進んでいるかもしれない。今アラカンの筆者はおそらくあの世に行っている。

その2065年から、さらに50年延長である。2115年。90年以上も先となると世の中がどうなっているのか想像もつかず、高速道路無料化は荒唐無稽なハナシになってしまった。新聞各紙は事実上の棚上げや撤回などと報じているが、SNSで「国家レベルの詐欺」と非難の声があがるのも無理はない。国交大臣は担当の最高責任者として恥を知るべきである。

ドライバーWeb編集部

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