2021/10/18 コラム

酒を飲んだ婚約者を迎えに行って「無免許&違反、他人になりすまし」…その裏にあった苛烈なDV

●写真は東京地裁


■DVは警察に相談していた



被告人「最寄りの警察には、110番通報の履歴もずっとあります…接見禁止の命令、出してほしかったんですが…」
検察官「警察に相談するようになったのは、いつですか!」

じつは犯行のあとでした、となれば検察官に有利だが…。

被告人「前の年の11月ぐらいから…」
検察官「母親や姉の家へ避難するとか、しなかったんですか!」
被告人「当時の友人であり同僚のところへ避難したことはあります…母と姉には、DV自体、言えませんでした…」

裁判官はこう尋ねた。

裁判官「その話は、捜査段階では…?」
被告人「話してあります」
裁判官「(手元の書証をめくり)裁判所に提出された証拠からすると、婚約者…何をしでかすか分からないとはありますが、それはあなたへの暴力ではなく(婚約者自身の)自殺のおそれとか…」
被告人「はい、サバイバルナイフで自分のお腹を刺す場面もあったので」

書証は、検察官が被告人を有罪とするために出すのだ。真実を明らかにするためではない。有罪に都合の悪い書証を出すわけがない。そもそも取り調べの警察官、検察官は、都合の悪い話は調書に録取しないのが普通でしょ、とは裁判官は考えない。いやべつに皮肉じゃない。そういうものなのだ。

裁判官「電車とかで帰ろうとは…」
被告人「臨月でお腹の張りが苦しくて(迎えに行くのは)ムリだとは何回か言いましたが、■■■■の口調とか、怒ってる状態が…それをしなければ■■■■が運転して人を轢いたり、自殺未遂…何をしでかすか分からない…」

婚約者は境界性人格障害を患っており、過去に障害事件を起こしているという話も出てきた。

裁判官「じゃあ、(違反切符の署名欄に)なんでお姉さんの名前を…それも婚約者が?」

被告人「■■■■を迎えに行く時間が刻々と…1分1秒遅れただけでも、ものすごく暴力ふるわれるので、焦って…頭のなかが混乱して、咄嗟に…」

もちろん、被告人の供述がすべて真実かどうかわからない。うそだと決めつける証拠もない。「検察官も裁判官もなんとか被告人を悪質に仕立てようとし、ことごとく失敗。あらら~」というものが傍聴席からは感じられた。

けれど検察官は、「犯行は大胆で悪質」「規範意識を欠いている」「再犯の可能性が高い」などと、いつもの決まり文句を並べ、懲役1年6月を求刑した。 ※「6月」は「ろくげつ」と読む。

ドライバーWeb編集部

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