2021/10/18 コラム

酒を飲んだ婚約者を迎えに行って「無免許&違反、他人になりすまし」…その裏にあった苛烈なDV

●写真は東京地裁


■裁判官の情け…? 即日判決


弁護人(中堅男性)は、ごく普通に最終弁論を行い、即日判決を求めた。被告人は何かの病気で「手術待ち」だという。子どもの世話もあり、後日また裁判所へ出てくるのは負担が大きいらしい。

ちなみに、婚約者が無免許運転の教唆で処罰されたという話は一切出なかった。「あいつが無免許とは知らなかった」で通したのかもしれない。わからない。

約1時間後、昼休みに入る直前に判決が言い渡された。主文は「懲役1年6月、執行猶予3年」。加えて、違反切符の偽造部分を没収。裁判官は、被告人に不利な要素、有利な要素をそれぞれ複数挙げ、こうまとめた。

裁判官「それやこれやの事情を総合的に考慮すると、主文のとおりの刑に処するのが相当と判断しました」

これ、裁判儀式に独特のレトリック、修辞にすぎない。判決の主刑(懲役1年6月の部分)は求刑と同じ、でもってこの程度の事件なら執行猶予3年、それが決まりなのだ。

とはいえしかし、この裁判官は大したもんだと私は思った。検察官ピンチな展開だったのだから「よく検討しました」という形をつくるためにも1週間か2週間かあとに判決とするのが普通だ。ところが即日判決、偉かったねえ、大したもんだ、と私は素直に思う。

刑事裁判に何か特殊な幻想をお持ちの方は「今井はひねくれた変人だ」と笑うかもしれない。でもね、長年にわたり何千件も傍聴していると、ね…。

〈文=今井亮一〉
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。

ドライバーWeb編集部

RELATED

RANKING