2021/10/18 コラム

酒を飲んだ婚約者を迎えに行って「無免許&違反、他人になりすまし」…その裏にあった苛烈なDV

●写真は東京地裁


■「被告人が可哀想過ぎる」の空気に検察官は


その後、結婚したが離婚。現在は子どもと暮らし、生活保護を受けているという。「被告人が可哀想すぎる」みたいな雰囲気になってきた。検察官としてはマズイ。起訴されて法廷へ出てきた被告人は悪質でなければならないのだ。いかにも育ちの良さそうな、お勉強エリート風な若い検察官は、こう突っ込んだ。

検察官「なぜ運転できたんですか! 一度も免許を取得したことないんでしょ?」

なるほど。クルマの操作方法すらわからない者は危険極まりない。被告人は答えた。

被告人「自動車学校へ通っていたことはあります」

数年空けて2回通い、2回とも妊娠のため中断したそうだ。

検察官「運転、怖いと思わなかったんですか!」
被告人「人を轢いてしまったりとか、無免許バレてしまう…恐怖、感じて、でも運転してしまいました」
検察官「そうであるならば、電車、タクシーを使おうとは思わなかったんですか!」

婚約者は翌朝クルマで出勤することになっている、という話がすでに出ている。それでも、電車で都心まで出てきた被告人は、都心の駐車場にクルマを置いたまま、強烈DV男といっしょに当然に電車またはタクシーで帰るべきだったと、お勉強エリート風の検察官は言うのである。

被告人「(そんな提案をすれば)元夫である■■■■が…結果、殴る蹴るの暴力につながる…言われたことはしなければならない状況でした…」

検察官、ピンチだ。ピンチをひっくり返す突っ込みを検察官は力強く発した。

検察官「それは、無免許運転していい理由にならないと、分かってますか!」
被告人「はい…」

おお、何があろうとひたすら無免許運転のみ避けるべし! 世間の方はどう思うか知らないが、裁判傍聴マニアな私としては「じつに検察官らしい突っ込みだ。お見事」と言いたい。べつに皮肉じゃない。被告人をひたすら責めたて悪く言う、それは公判立会(りっかい)検察官の職務なのだ。検察官はさらに、本当にDV被害があったならなぜ取り締まりのとき警察官に言わなかったのかと責めた。
※東京地検の場合、起訴検察官と法廷に立つ公判立会検察官は別だそうだ。

ドライバーWeb編集部

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