2021/06/26 コラム

警官「携帯で通話、見たぞ違反だ!」運転者「耳かいてました」で処分取り消し。レアな”逆転裁判”はなぜ起きた

●さいたま地裁でおきた逆転裁判!?


「警察無謬の原則」はまたもやまかり通るのか…注目の判決は!?



尋問の期日から4カ月後、判決の言渡しがあった。私は傍聴した。原告席も被告席も無人だった。民事の判決期日は当事者の出頭を要しないのだ。裁判長が主文を言い渡した。

「主文。1、本件訴えのうち、以下の部分を…」

主文は長くて私はぜんぶをメモできなかった。原告は傍聴席にいて、言渡しが終わるとすぐ書記官室へ行った。刑事と違って民事は、判決期日には判決書きができあがっているのだ。書記官室で原告は判決書きを受け取った。私は見せてもらった。現場見取り図1枚を含めて25ページの長い判決だった。

違反自体について、警察官らの証言も捜査報告書等も「信用性に乏しく、採用することができない」とし、明確にこう言い切っていた。

「原告が、本件道路において携帯電話を通話のために使用したと認めるに足りる的確な証拠はない」

したがって、3年免許の交付処分は取り消す。そして「優良運転者である旨を記載した運転免許証を交付せよ」という判決だった。なんと原告は、1人対15人の闘いに勝ってしまったのである! 私は激しく驚き、大いに感動した。

被告側は東京高裁へ控訴した。「警察無謬の原則」を守らねばと、たくさんの証拠調べ請求をした。一方、原告(今度は被控訴人)はA4サイズの紙1枚に、要旨「私は違反していません。もういい加減にしてください」と短く書いて出したのみだった。そうして、さくっと勝ってしまった! 世の中、こんなこともあるんだねえ。

埼玉県警は結局、「警察官が見たと言いさえすれば違反は成立する」という思い込みが強すぎたように思えた。それはどこの警察も同様だろう。違反の有無にかかわらず「見た!」だけで違反切符を切ることが、全国でしょっちゅうおこなわれているのではないか。車内も録画できるドライブレコーダーの装備が必須と私は思う。

〈文=今井亮一〉                            
交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を発行。

ドライバーWeb編集部