2020/12/28 コラム

ブリヂストンのロゴマーク、じつはこんなに変わっていた…その変遷を振り返る

新型コロナウィルス感染症に翻弄された2020年もあとわずか。今年はテレワークの増加などで、ITが今まで以上に身近になった1年でもありました。春には、まるでそれに呼応するようにデジタル時代のデバイスでの表示を考慮に入れたシンボルマークの変更が国内外複数の自動車メーカーから発表されたのも自動車ファンには印象的なニュースの1つ。

もちろん変更を行った日産やフォルクスワーゲンも今回のような大規模な変更は1年以上前から計画されていたはずですから、発表のタイミングと感染症との関連性はありませんが、いづれにしても雑誌などの紙に変わりPCやスマホのディスプレイから情報を発信する時代への移行が一層加速したのを象徴するような出来事でもありました。

前置きが長くなりましたが、今回はこうしたデジタル時代を見据えたロゴマークの変更をなんと10年近く前に済ませていたという「ブリヂストン」のお話です。まずは創業時のロゴマークから振り返ってみましょう。

1931年、創業時の社名は「ブリッヂストンタイヤ株式会社」


●左が創業当時のブリッヂストンのシンボル

ブリヂストンの語源が創業者 石橋正二郎氏の姓「石橋」を英語風にもじった「ストーン(石)ブリッヂ(橋)」を並べ替えたものであることはよく知られた話です。創業時の正式社名は「ブリッヂストンタイヤ株式会社」です。その後、戦時中に「日本タイヤ」と変更され1951年には小さな「ッ」のない「ブリヂストンタイヤ」と改められます。石で橋を築く際に使用される要石(=キーストーン)の形の外枠に「BS(Bridge Stoneの頭文字)」を配したマークは1984年まで使われていたので、まだまだ覚えている人も少なくないかもしれません。

1984年、世界に羽ばたくためにシンボルマークを刷新



●1984年に刷新されたブリヂストンシンボル

ブリヂストンタイヤ株式会社は1984年に新しい時代を切り開くためにCIの導入、そして社名の変更とシンボルマークの刷新をします。新しい社名は「株式会社ブリヂストン」。タイヤの3文字を外しました。コーポレートカラーを赤(ブリヂストンレッド)と定義し「燃える情熱」を意味する赤い三角形を配した「Bマーク」が登場します。赤い三角形と右側のBを形作る黒い部分の間の上を向いた矢印(ライジングアロー)は「限りなき挑戦」を表しています。この時期から90年代の好景気の波に乗りブリヂストンと同じようにCIを導入した企業は少なくありませんが、中には説明を聞かなければ何を表しているのかわからないようなマークも散見された中、赤で情熱を、上を向いた矢印で上昇の意思と感覚的に理解しやすいシンプルなマークは視覚表現としてとても優れていると筆者は今でも感じます。



●Bマークの解説

一方「BRIDGESTONE」のロゴは太い斜体で力強さとスピード感を表しています。頭のBの文字はBマークそのもの。他の文字は力強い大文字で構成されていますがNだけが小文字となっています。これはスピード感を表現した傾斜に逆らうような逆向きの斜線を持つ大文字のNがその勢いを視覚的に止めてしまうのを避けるためと言われています。

ちなみにセブンイレブンのマークも、電気シェーバーでお馴染みのブラウンも、シンガポール航空のロゴもなぜかNだけ小文字です。大文字のNってデザイナー的には何かと使いにくい文字なのですかね。


●1984年のポスター

1984年といえば、初代マッキントッシュがアップルから登場し、ウインドウズがまだなかったころですので、TVコマーシャルなどで使われることも多いとはいえ、この新しいシンボルマークをモニター画面を通じて見ることは想定していませんでした。

2011年、ブリヂストンシンボルをリファイン


●2011年にリファインされたブリヂストンシンボル

1984年にグローバルな展開を見据え制定されたブリヂストンシンボルを2011年にはリファインします。あくまで時代に合わせたマイナーチェンジに近い位置付けです。じつは冒頭で触れたデジタル時代に合わせたロゴの変更をブリヂストンはここで行っています。同社のWEBサイトによると”グローバルでの認知度をさらに向上させるため、ブリヂストンシンボルを少し読みやすくしました”とじつに控えめな表現で説明しています。しかしながらよく見るとBマークの矢印はしなやかな弧を描き、各部の角もちょっと丸みを帯びて、その変更は多岐にわたり全然控えめではありません。TV-CMで「24時間戦えますか?」とビジネスマンに問う熱き時代から、多様な価値観が尊重される時代の空気にフィットしつつ、一目でブリヂストンとわかる継続性も併せ持ったデザインに仕上げるまでには1年もの間検討を重ねてきたそうです。

斜体の16度という角度はそのまま、かなりオーソドックスな書体になったようにも感じます。今まで猛ダッシュしてきたブリヂストンが前年のF1撤退とともに新たな一歩を踏み出そうとしている感じでしょうか。

リファインでは全体的に太かった文字を細めにし、かつ直線的な装飾を廃し素直な文字となっています。変更時にはちょっぴりパンチが減り穏やかになったシンボルに物足りなさを感じていた筆者ですが、実はこの変更、デジタルデバイスでの視認性も考慮されたものでした。ブリヂストンのロゴには最小使用サイズの規定があり1984年当時にはミリ表示しかなかった単位にピクセル表示が加えられています。ちなみにロゴの最小幅100ピクセルと規定されています。


●リファイン前(上)とリファイン後(下)

いかがでしょうか? 小さな表示でも読みやすくなっていますよね。

時代の環境に合わせたフォルムの変更に加え、モニターに映し出された小さな文字でもきちんと見えるよう9年前に改善済みだったのです。

また、タイヤショップなどで見かけるブリヂストンのロゴを掲げた看板の耐用年数が7~8年と想定していることもあり、その間は新旧ロゴが混在する事を考慮に入れ、フォルムは変わってもイメージは変えないという方向性でのリファインだったそうです。2011年から順次交換されてきた街で見る看板がちょうど今ごろ架け替えられたころでしょうか。これまでリファイン前後の看板が混在状況だったにもかかわらず確かに筆者はあまり違和感を感じていませんでした。

奇をてらったような変更は、一時の達成感もあるし大きな方向転換を表現するには有効かとも思いますが、こういった地味ながら細部にわたって丁寧な仕事ぶりが感じられる変更に職人魂すら感じてしまいます。考えて見れば主力商品のタイヤも、どんなに進化しても外観はあまり変わらない商品ですね。見た目こそ大きく変わらないけど中身は大きく進化させるという作業はブリヂストンの得意技なのかもしれません。

ブリヂストンからのメッセージを伝える「タグライン」


●タグラインの変遷(上から 1984年、2011年、2011年日本語版、2020年)

ブリヂストンではロゴの下に企業メッセージを表す「タグライン」を加えて使用されることもあります。実際TVや雑誌で見るブリヂストンシンボルはほとんどがこのパターンでした。1984年からのロゴに途中から加えられた「A GRIP ON THE FUTURE」で登場したタグラインが、2000年代半ばで「PASSION for EXCELLENCE」に変更されています。どちらも勢いのある80~90年代の空気を感じます。ちなみに「A GRIP ON THE FUTURE」というタグラインは会社の変遷などが豊富に記載されているブリヂストンの現在のWEBサイトにはなぜか一切記載がありません。「A GRIP ON THE FUTURE」はどこへ行ってしまったのでしょう。ちょっと謎めいていますね。

リファイン後のタグラインは「Your Journey,Our Passion」、日本語版は「あなたと、つぎの景色へ」。そして2020年から「Solution for your journey」へと変更されました。今回は日本語版はありませんが、要はタイヤのみならず我々の豊かな生活を陰になり日向になり支えてくれるソリューションカンパニーとしての立ち位置を我々にあらためて宣言してくれた、という感じがします。


●ブリヂストンの企業ミュージアム「Bridgestone Innovation Gallery」

カタカナ言葉に抵抗感を持つ人にとって、最新のタグラインは少々漠然としたメッセージだと感じるかもしれませんが、創業時から最新のブリヂストンの活動までを楽しみながら感じられる企業ミュージアム、Bridgestone Innovation Galleryが11月に東京都小平市にオープンしました。入場無料で親子でも楽しめ、社会科見学的要素もたっぷりの施設です。事前に予約すればガイドツアーも無料で楽しめ、お得感も抜群。我々自動車ユーザーの足元を支えるタイヤメーカーの違った顔ものぞけるミュージアムは、なかなかのおすすめスポットです。


●ガイドツアー(予約制)も無料で楽しめます

〈文と写真=高橋 学〉

ドライバーWeb編集部

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