2020/12/25 コラム

森の百面相名人を追え!「三好秀昌のニッポン探訪・取材ウラ話 第12回〜トラフズク」

ドライバー2020年3月号(2020年1月20日発売号)からスタートした新連載「(じつは)動物カメラマン 三好秀昌の『ニッポン探訪』」。日本全国を最新SUVで駆けまわり、かわいい動物や最高の絶景を撮影してしまおう!という企画です。第12回は、表情が変わるとまるっきり違う顔に変身する百面相名人の『トラフズク』。撮影テクニックやクルマのインプレッション、その地域のグルメやお土産情報など、取材ウラ話をいろいろと紹介します。

 
ニッポン探訪
 

生まれたてのひななのにすでにオヤジ顔!?

 
渡り鳥は不思議だ。何千kmも過酷な旅をするだけでも驚異的なのに、同じ時期に、同じ場所、同じ木の同じ枝に、同じ顔をして(笑)帰ってくる。
 
クルマに渡り鳥を一羽乗せておけば、カーナビもGPSもいらない!
 
なんてくだらないことを、トラフズクを見ながらツラツラと考えるのである。人間にはけっして備わっていない野生の神秘を考えると、目の前で百面相を披露してくれる彼らに尊敬の念が湧いてくる。
 
 
ニッポン探訪

だいたいいつもこんな感じで居眠りしています。

 
ニッポン探訪

そして時々、歌舞伎風の変顔を披露します。体をかきむしってるときにこんな顔になります。


ニッポン探訪

カラスなどがちょっかいを出しにくると目覚め、猫耳(正確には羽角)を立ててくれます。
 
おもしろいもので、こっちが気を抜いた瞬間などに野生動物は気を感じるのか、動きが変わるので、一瞬の表情を切り取るには、なかなか気が抜けません。
 
渡り鳥なので3月末にはいなくなるのですが、なぜかそのころにひなが生まれる家族もいます。そのまま日本に残るのか、遅れて旅立つのかよくわかりませんが、このひなの顔がこれまた特徴的なのです。
 
生まれついてのオヤジ顔なのです。
 

ニッポン探訪

そしてこれが数週間たつと、ダルマのようなもっとオヤジ顔に変化していくのです。
 
ニッポン探訪

どーです! 強烈な存在感でしょう!
 
これで生後4~5週間ですからね。
体は白くて顔は黒い。これも保護色なのでしょうか?
 
そして、成長とともにだんだん顔がかわいらしく変化し、体は茶褐色のグラデーションになっていくのです。


ニッポン探訪

夜行性の鳥ですから昼間は寝ていて、夜になると動き出します。
 
日没ぐらいから体をストレッチし始めて、暗くなると飛び出します。でも、だいたいすぐ近くの木や電線に止まって、しばらくまわりを見まわすのです。

ニッポン探訪

危険がないか確認しているのでしょうか?
 
そして、ひと息ついたあとに、ゴハンを探しに本格的に飛んで夜の闇に消えていきます。
 


 

「撮影裏話&テクニック」

 
ニッポン探訪
 

特徴的な動きの“首グルグル”を狙う

 
フクロウ類の眼球は固定されているために、首は約270°回ると言われている。その大切な首のストレッチなのかどうかわからないが、よく首をグルグル回す。
 
ニッポン探訪
 
まだ暗いなか、三脚を立てたうえで、レリーズでカメラのブレを抑えながらシャッターを切っても、相手が動いていてはどうしようもない。レンズの絞りは開放。ISOも画面のザラつきを考えるとギリギリ。
 
動きを止めたタイミングを待ちつつ、開き直って特徴的な“首グルグル”を狙ってみた。連写したなかにわずかに顔のディテールが残りながらも、スピード感ある動きが見えるカットがあった。
 
このような厳しい条件では、開放の絞り数値がひとつ違うだけでシャッタースピードが稼げる。背景のグラデーション、光と草のボケ方の美しさなど、ソニーレンズの最高峰のFE600mm F4 GM OSSの性能を堪能した。
 
現在、ソニーからお借りして使っているが、手に入れられるものならオイラも自分のものとして使いたい(笑)。
 

[撮影データ]

機材:SONY α9Ⅱ
レンズ:FE600mm F4 GM OSS
撮影モード:マニュアル
シャッタースピード:1/8秒
絞り:F4.0
ISO:3200
 


 

「今回のSUV……ホンダ CR-V」

アイデア豊富な作り込みと走りを楽しめるとても乗りやすいクルマ

 
ニッポン探訪
 
ワインディングロードを気持ちよくクルーズしていると、このクルマがモーター駆動を多用するハイブリッドカーだとは思えない。
 
ハンドリングはそこそこシャープで、パドルでシフトダウン(してるつもりだけなのだが)、そしてアクセルオンでエンジン音が高まっていく。
 
だが、実際にはエンジンで発電した電気でモーターを回して走っている。パドルシフトもシフトチェンジではなく、エンブレ風の減速が発生する回生ブレーキを強めているだけなのだが、今まで慣れ親しんできたスポーティカーの感覚で走れ、EVだとかハイブリッドカーだとかというくくりではなく純粋に走りを楽しめる。
 
シートポジションも座面の高さを変えるときに、変に角度だけが変わることなく下がってくれるので、いい感じのドライビングポジションが得られた。個人的にはこのあたりの調整がおざなりなクルマが多いので、すごく好感が持てた。
 
エレクトリックギヤセレクターを採用し、シフトチェンジはレバーではなくボタン。これはハイブリッドカーということで斬新さを打ち出しているのかもしれないが、ちょっと慣れが必要だった。D(ドライブ)ボタンはすぐ慣れる。しかし、R(リバース)ボタンは押し間違い防止もあってか、あえて押しづらくボタンを凹ませたデザインで、最後まで慣れなかった。
 
ホンダ車はアイデア豊富の作り込みで楽しませてくれる半面、乗り手との相性のよし悪しが出てくるのも特徴なんだと思う。シフトボタンはやや消化不良。その一方で、リヤシートを倒したとき、荷室とシートバックの継ぎ目にカバーがかぶさり本当の意味でのフルフラットになるところなんてすごくいい感じなのだ。
 
山道をシュルシュルとご機嫌に走り、燃費計を見ると高速道路で18km/Lだったのが16 km/Lあたりでずーっと維持してる。山道での実用燃費は思いのほか高そうだ。
 
前述したようにオッサンにはシフトまわりのインターフェイスの慣れに戸惑ったが、前方の見切りや取りまわしのよさはファミリアで、とても乗りやすい“いわゆるクルマ”だった。

ニッポン探訪

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■主要諸元

ホンダ CR-V e:HEV EX ブラックエディション
(─/4WD)
全長×全幅×全高:4605mm × 1855mm × 1690mm
ホイールベース:2660mm
最低地上高:200mm
車両重量:1700kg
エンジン:直4DOHC
総排気量:1993cc
エンジン最高出力:107kW(145ps)/6200rpm
エンジン最大トルク:175Nm(17.8kgm)/4000rpm
モーター最高出力:135kW(184ps)/5000〜6000rpm
モーター最大トルク:315Nm(32.1kgm)/0〜2000rpm
燃料/タンク容量:レギュラー/57L
WLTCモード燃費:20.2km/L
タイヤサイズ:235/60R18
価格:455万8400円
 
 

〈文と写真〉
三好秀昌 Hideaki Miyoshi
●東京都生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。八重洲出版のカメラマンだったが、ラリーで頭角を現し、そのうち試乗記なども執筆することに。1995年、96年にはサファリラリー グループNで2年連続優勝。そのほか、国内外で数多くのラリーに参戦。写真家としては、ケニアでの豹の撮影など、動物をおもな題材としている

ドライバーWeb編集部

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