2020/09/01 新車

マイナーチェンジという先入観をひっくり返す!レクサスISプロトタイプ試乗

先を見据えて今やるべきこと


デビューから7年目にして、あえてマイナーチェンジという道を選んだ新しいレクサスISの試乗が実現した。
発売は年末ということで、舞台はクローズドコースである。



今回、なぜフルモデルチェンジとしなかったのかということについては公式なコメントはない。考えられるのは、2030年あたり、つまり将来のパワートレーンのあり方などを見据えたクルマの投入には、もう数年の猶予が欲しいということだ。EVの時代になるのか、内燃エンジンが頑張るのか、それとも…というのがもう少し見通せた時点で次の世代に移行したいとレクサスは考えているに違いない。

もちろん、だからと言って小手先の化粧直しでは戦えない。新型ISは車体の基本プラットフォーム、パワートレーンを継続使用する一方で、デザイン、走り、ADASに関しては全面的に刷新して登場した。



実際、外装はルーフパネルの前端以外、すべてが新しくなっている。全長は30mm増の4710mmに。全幅も30mm増の1840mmで拡幅分は左右フェンダーの拡大に使われている。全高は5mm増の1435mmである。

その姿は、ロー&ワイド感がグッと強調された躍動感あるものに仕上げられている。過剰だったディテールが整理され、フォルムで魅せるという感じ。マイナーチェンジ云々という先入観をひっくり返す説得力は、十分あると思う。



この外観を語るうえで欠かせないのが、ワイドになったそのフェンダー内側に収められた最大19インチのタイヤ&ホイールである。これがトレッドの拡大も相まって、じつに力強い印象を醸し出すようになった。

19インチタイヤの採用に伴い、ボディは剛性が大幅に高められ、シャシーにも大きな変更が加えられている。サスペンションはアルミ製アッパーアーム、新素材のスプリングやスタビライザーなどの採用で軽量化され、タイヤサイズ拡大分の重量を相殺している。

タイヤ&ホイールのハブ締結を、従来のスタッドボルトとハブナットに代えてハブボルトで行う構造としたのもトピックだ。バネ下軽量化、そして高剛性化により乗り心地、操舵フィールを改善できるという。じつはこれ、技術陣にとっては15年越しの悲願で、生産ラインなどなどすべてを刷新しての採用になる。


●ホイールの締結には、欧州車でよく見られるハブボルト式を採用。締結力の強化と質量低減を図っている。タイヤ&ホイールは新たに19インチも設定


●サスペンションはアルミ製アッパーアームに加えて、スウィングバルブショックアブソーバーを採用。ショックアブソーバーのオイル流路に非着座式のバルブを設け、微細な動きに対しても流路抵抗による減衰力を発揮、ストローク速度が極めて低い場合も応答性がよく上質な乗り心地を実現する


●Cピラーからルーフサイドにかけて構造を最適化し、ボディ剛性を高めている

これぞ走りのセダン!


●2LターボのIS300、2.5LハイブリッドのIS300h、3.5L・V6のIS350とラインアップは現行型と同じ。新型のシャシーは格段に性能向上したため、さらなるパワーも受け止めてくれそう(「F」の設定もありか?)写真はIS350のエンジンルーム

試乗したのはIS300/IS300h/IS350の、いずれもF SPORT。全車に共通して鮮烈だったのは、やはりそのフットワークだ。サスペンションはしなやかなセッティングで、剛性感たっぷりのボディを土台にとてもよく動く。それでいて、姿勢変化の速さはしっかりコントロールされているから、不安感は皆無。むしろ速度域を問わずクルマの挙動がありありと伝わってきて、非常に操縦しやすいのだ。



リヤを軽く滑らせるのもたやすく、その先の挙動の収まりも穏やか。まさに「意のまま」という言葉を実感できる仕上がりである。

特にIS300hは鼻先の軽さを生かした軽快な走りを楽しめる。8速ATにはアダプティブ制御が取り入れられ、Dレンジでもビジーな変速を抑えた的確なギヤ選択をしてくれる。IS300hはアクセル操作に対して速やかに加速が立ち上がるよう駆動力制御が改められ、THSⅡ特有のレスポンスの鈍さを解消している。ふだんの街乗りなどでは効果を如実に実感できるに違いない。


●ラゲッジ部のキャラクターラインが特徴的。ボディパネル製造工程において、上下方向のプレスの動きに合わせて金型が横方向からスライドする機構を追加した最新のプレス技術「寄絞り(よせしぼり)型構造」を採用した結果得られた、緻密で立体的な造形だ

正直、姿を消すかと思っていたIS350の継続は朗報だ。名機と呼んでいいだろう2GR-FKSユニットの最高出力は318馬力。吹け上がりも爽快で、大幅に向上したスポーツセダンとしての資質を、余さず引き出すことができる。



●10.3インチのワイドディスプレイを新たに採用。従来のリモートタッチによる操作に加え、ディスプレイを乗員に近づけて直接触れて操作できるようになった。スマートフォンとの連携も強化され、先進安全運転支援システム「Lexus Safety System+」を装備するなど、安全機能のアップデートも抜かりがない

駆け足での紹介となったが、少なくとも今回触れたデザイン、そして走りっぷりだけを見ても、新型ISが格段の進化を遂げているということは断言できる。しかも、それらは一過性の刺激ではなく、じわじわと染み入るような深みを感じさせるものだからうれしい。つき合うほどに新しい発見があり、クルマとの対話がより濃密なものになっていくような…。

あえてマイナーチェンジとすることで進化、いや深化、熟成が進んだ新しいレクサスIS。この戦略は間違いじゃなかったと、ひとたびステアリングを握れば誰もがすぐに理解できるはずだ。

〈文=島下泰久〉

ドライバーWeb編集部

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