2023/09/20 新車

一等軽くて快足、過激でRな、アルピーヌ A110 R

過激を意味するRを関したアルピーヌ A110 R

アルピーヌF1チームが参画し、軽量化や空力性能、ハンドリングを煮詰めたA110 R。さらなるパフォーマンスを追求したラディカル(Radical=過激)な走りは、クローズドコースでなくても十分刺激的!
 
A110R

軽さを極め、さらなる高みに
 
A110は個人的に大好きなスポーツカーで、見るたび触れるたびに口元が緩む。が、カーボン製フルエアロで武装し、専用のブルーレーシングマットに身を包んだ「R」だと、そうもいかない。サベルトのフルバケットに身を沈め、6点式ハーネスを締め上げれば覚悟は決まる。
 
開発チームが目指したのは2点。ひとつは、エンジン出力をそのままにパフォーマンスを最大限高めること。もうひとつは、サーキット走行に向けたハンドリングの正確性と高速スタビリティの実現だ。
 
シート背後の1.8L直噴ターボはGTやSと同じ300馬力/34.6㎏m。ゲトラグ製7速DCTや最終減速比に変更はない。だが、0→100km/h加速はSの4秒2から3秒9に短縮。スープラRZ(387馬力)の4秒1を凌ぎ、911カレラSカブリオレ(450馬力)に肩を並べる。最高速度もSエアロキット付きの275km/hから285km/hにアップ。軽量化と空力向上の効果だ。
 
抜群の過給レスポンスで2000回転台から3.5L NA並みのトルクを炸裂させるエンジンは、動力の特性・フィーリングとも確かにSと変わらない。だが、違う点が2つある。
 
まず音。Sは吸気音が主体だが、Rはエンジン本体のメカ音がいい具合に入り、野太い排気音とともにレーシーな雰囲気を醸し出す。
 
そして、加速。アクセルを踏み込んだ直後からSより加速のツキが早く、車速の伸びもさらにいい。ワインディングで同じ場所を同じように走ったつもりでも、スピードメーターの数字はSより明らかに上なのだ。とにかくクルマが軽くて速い。
 
A110R

オン・ザ・レールの旋回性
 
R専用の「ラディカルシャシー」は、限界が格段に高められている。ミシュラン「カップ2」の超ハイグリップとそれに合わせて強化されたサスは、剛性感たっぷり。クイックなステアリングは適度に手応えを増し、リニアリティを高めている。
 
コーナリングはSが路面に“吸いつく”なら、Rは“貼りつく”ように安定。Sでハンドリングに曖昧さが出始める領域でも、舵角はピタッとキマッたまま一糸乱れず狙いどおりに旋回し続ける。Rから乗り換えた瞬間はSのステアリングがフニャフニャで、サスのロールやダイブが過大に感じられるほどなのだ。
 
が、車名どおりにラディカルでも乗りづらさはない。箱根ターンパイクを走るかぎり、ZF製のレーシングダンパーは路面追従性も高く、乗り心地のよさは望外だ。超軽量なフルカーボンホイールも効いている。
 
とはいえ広報氏いわく、一般道の乗り心地はやはりそれなりとか。体はフルバケットに固定され、後方視界もきかないから、公道で乗るにはある程度の覚悟が必要だろう。
 
それでも、第1~2ロットの限定受注はアッという間に売り切れ。生産台数が少ないのはカーボンパーツの供給が理由だが、今後も同様のかたちで継続的に販売されるから、Rが本気で欲しい人はご安心を。
 
税込み価格はSの575万円高。それに対応する財力とRの価値をわかる人だけが手にできる、まさに究極のA110なのだ。
 

 
A110R
F1レースカー開発のノウハウを投入
 
ボンネットフードやリヤウインドーをカーボンパーツに置換。サイドのアンダースポイラーも専用形状のカーボンパーツを採用し、その他軽量化も含め車重はSエアロキット付きに対して34kg減。スワンネックのリヤスポイラーステーの採用などにより空力性能を高める。
 
A110R
A110R
A110R


A110R 
ZF製レーシングダンパーは車高調整式で、Sに比べ標準(一般道)で-10mm、サーキットでは-20mmの設定。20段階の減衰力調整(手動)も可能

A110R
A110R
フルカーボン製ホイールはA110 S比で12.5kg(4本)の軽量化を実現。本体は8スポークだが、別体のフェイスは空力に優れる形状で、フロントがブレーキの冷却性を重視する前後異デザインを採用
 
A110R
3Dプリンターを活用して造形された二重構造デュアルエキゾーストでパイプ周辺の熱対策を施すと同時に迫力のあるサウンドを奏でる
 
A110R
●パワーユニットに変更はない。カーボン製リヤフードの装着によりエンジンカバーなども省かれ、キャビンとの境は隔壁ボードに。背中からのエンジンサウンドも豪快
 

A110R
レースカーさながらのインテリア
 
インテリアは随所にマイクロファイバー生地が貼られ、ドアハンドルはレースカーをオマージュした赤いストラップ仕様。ルームミラーはなく、後方確認はリヤカメラで捉えた映像をセンターディスプレイに表示。
 
A110R
カーボン製フルバケットシートと軽量シートレールにより2座で5kgの軽量化。レーシーな6点式シートベルトも1.5kgの軽量化に貢献する。


A110S
気がねなくスポーティを味わうなら「S」
 
フニャフニャに感じられたのは、Rから乗り換えた一瞬だけ。A110独特の繊細かつ一体感に満ちあふれた走りなら、「シャシースポール」のSだ。軽量ミッドシップスポーツの真髄を楽しめる。
 
A110S

 


■A110 R(MR・7速DCT)主要諸元
【寸法・重量】
全長:4255mm
全幅:1800mm
全高:1240mm
ホイールベース:2420mm
トレッド:前1555mm/後1550mm
最低地上高:―
車両重量:1090kg
 
【エンジン・性能】
型式:M5P
種類:直4DOHCターボ
ボア×ストローク:79.7mm×90.1mm
総排気量:1798cc
圧縮比:8.9
最高出力:221kW(300ps)/6300rpm
最大トルク:340Nm(34.6kgm)/2400rpm
使用燃料・タンク容量:プレミアム・45L
WLTCモード燃費:―km/L
最小回転半径:5.8m
乗車定員:2人
 
【諸装置】
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後Vディスク
タイヤ:前215/40R18/後245/40R18
 
【メーカー希望小売価格】
1550万円(*2023年モデルは受注終了)
 
 
〈文=戸田治宏 写真=岡 拓〉

ドライバーWeb編集部

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