2023/08/08 コラム

日本の交通事故死亡者の少なさは世界トップレベル! そのひとつの要因は女性免許保有者の増加にあり?

女性の免許保有者数は増えている

人の死亡を数字で語ることをお許しいただきたい。日本の交通事故死者(24時間以内死者)のピークは1970年、1万6765人だった。「交通戦争」と呼ばれた。1979年には8466人へ、ほぼ半減した。その原因として、反則金制度による交通安全施設の整備が見逃せないだろう。

参考記事: 反則金を払わないと逮捕される? そもそも反則金って何?【交通違反の基礎知識・その1】

しかし再び増加し始め、1992年には1万1452人に。「第2次交通戦争」と呼ばれた。さあ、それからはもう減少の一途。2022年は2610人に! たいへんな激減ぶりといえる。

警察庁のwebサイトに「国別人口10万人当たり30日以内死者数比較(2021年)」というデータがある。アメリカは12.9人、韓国は5.6人、日本は2.6人。近ごろ日本は落ち目だなんて言われるが、交通事故死者の少なさは世界に誇っていいだろう。 ※日本の2021年の24時間以内死者は2636人、30日以内死者は3205人。2022年は24時間以内が2610人、30日以内が3216人だ。



さて、交通事故死者はなぜこうも激減したのか。シートベルト、エアバッグ、救急医療の発達、いろんな要因があると思う。私は最近、「もしやこれが原因の大きな1つか?」というものを見つけた。

警察庁のwebサイトに「運転免許統計」というのがある。男女別の免許保有者数とその構成比の一覧表がある。現時点で最も古いのは1969年分だ。以下、人数は四捨五入する。

男 約2057万人 83.0%
女 約  421万人 17.0%
計 約2478万人

1969年は男性が圧倒的に多い。トヨタ・カローラ、日産・サニーの発売は1966年。高度経済成長期で大衆車が爆発的に売れ始めた。けれどまだまだ「運転はパパ」の時代だったのだ。ところが、半世紀を経て2022年、こうなった。

男 約4443万人 54.2%
女 約3751万人 45.8%
計 約8184万人

免許保有者の合計は3倍以上に増えた。特に女性が増えた。なんと約9倍だ! じつは、戦後どんどん増え続けた免許保有者だが、2018年の約8231万人をピークに減少に転じた。興味深いのは男女比である。以下、2018年からの男女別と合計と見てみよう。

      男      女     計
2018年 約4499万人 約3732万人 約8231万人
2019年 約4478万人 約3738万人 約8216万人
2020年 約4460万人 約3739万人 約8199万人
2021年 約4446万人 約3744万人 約8190万人
2022年 約4433万人 約3751万人 約8184万人

ご覧のとおり、男性は少しずつ減り続け、女性は少しずつ増え続けている。男性の減り幅のほうが大きいので、合計が減少し続けているのだ。

一般的に、女性はあんまりムチャな運転をしないようだ。「高性能車でかっ飛ばすのが格好いい」という“文化”は女性にはないようだ。速度が高ければ、事故ったときの被害が甚大になる。死亡事故になりやすい。

女性の免許保有者が増えたことが、交通事故死者が劇的に減少した原因の、大きな1つかも!と私は思うのである。女性の国会議員が増えたら、どんなに住みよい国になるか、とまで言っちゃ妄想が過ぎますかね(笑)。

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から交通違反以外の裁判傍聴にも熱中。交通違反マニア、開示請求マニア、裁判傍聴マニアを自称。

ドライバーWeb編集部

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