2020/05/05 コラム

違反切符を破いて捨てたら、反則金や罰金で済まされず、まさかの逮捕!?

1枚目は破いて捨てても燃やしても問題ないのだが

交通取り締まりを受けて渡される違反切符。みなさん、あれをどうしてます? 私は交通違反マニアだからすべて大事に保存…いや、若いころはムカついて腹が立って、破いて燃やしたかもしれない。


●私が最後に切られた違反切符。違反事項がゴム印になっている。こういうものを用意して警察官は、“漁場”で待ち伏せるのだ。私は反則金を払わず、検察官により不起訴とされた

違反切符は、破いて燃やしてもぜんぜんオッケーな場合と、びりっと破けば逮捕されてしまう場合がある。以下は4月22日付けの石川テレビ、逮捕報道だ。

取り締まられて立腹…警察官から違反切符奪い取って破る 51歳男を公用文書毀棄容疑で現行犯逮捕(https://www.ishikawa-tv.com/news/itc/00229310)
進入禁止の交通違反で取り締まられたことに腹を立て、違反切符を破った石川県野々市市の男が、21日現行犯逮捕されました。 公用文書毀棄で現行犯逮捕されたのは石川県野々市本町の清掃業の51歳の男です。 富山県警によりますと、男は21日午後5時過ぎ、乗用車を運転中に進入禁止の交通違反で取り締まりを受けました。 その際、男は違反切符を奪い取って引き裂いたということです。 男は「破ったことは間違いない」と供述しているということです。

石川県の野々市市(ののいちし)から富山県内へ仕事に行き、帰ろうとしたとき取り締まりを受けたのかな。きっぱり違反を認めるドライバーが、なぜ「違反切符を奪い取って引き裂」くなんてことをしたのか。

「進入禁止の交通違反」とある。たとえば前方が渋滞しており、このまま進めば横断歩道上や踏切内に停車することになりそう、というときは交差点に進入してはならない(道路交通法第50条)。行けると思ったのに、おかしな運転をするクルマのせいで行けず、横断歩道上に停車することになってしまったとか、どうにも納得できない事情があったのだろうか。

警察官の手元にあるのは「公用文書」

違反切符は6枚で1綴り。上辺が糊付けされている。違反現場では警察官が1枚目に必要事項をボールペンで記入する。2枚目以降にノンカーボンで複写される。作成が終わったら警察官は1枚目をピッと切り取って違反者に交付する。それが「違反切符を切る」と呼ばれる。

破いてもオッケーなのは、ピッと切り取って交付された1枚目、青切符とか赤切符とか呼ばれるやつだ。交付されたあとは違反者のものであり、破ろうが燃やそうが違反者の勝手だ。ただ、警察官の所属や氏名が記載されているし、ときどき誤記もあったりするので、捨てるのは惜しいと思う。捨てるなら私にください、めちゃめちゃ大事にしますので(笑)。

一方、警察官の手元に残った5枚の切符、または書きかけの切符、つまりまだ警察官の手元にある切符は公用文書に当たる。破けば「公用文書毀棄」という犯罪になる。以下は刑法だ。

(公用文書等毀棄)第二百五十八条 公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

進入禁止違反の罰則は「5万円以下の罰金」だ。普通車の場合だと6000円の反則金を払えばすむ。たかが反則金6000円の違反でも、交付された1枚目以外の切符を破けば、あらびっくり、反則金はもちろん罰金でもすまず「3月以上7年以下の懲役」になってしまうのである!


●こちらは納付書

交付された青切符、赤切符を破くのはオッケー。燃やすのもオッケー(火災には気をつけてね)。だけども、警察官の手元にある切符を破くとたいへんなことになる。このこと、免許取得時のテキストには載ってない。しっかり頭に入れておこう。

ちなみに私は裁判傍聴マニアでもある。交通取り締まりがらみの「公用文書毀棄」の裁判もけっこう傍聴してきた。「うっわ、こりゃ違反者(女性)が可哀想すぎるんじゃね?」というケースをあとでご報告しよう。

〈文=今井亮一〉

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