TOYOTA Gazoo Racing全日本ラリーチーム(TGR-WRJ)のコ・ドライバー(コドラ)、安藤裕一です。
●今回の眞貝/安藤 組はJN-2クラスで参戦。奴田原/東 組がクラス1位を獲り、コドラの東 駿吾選手が年間チャンピオンを決めたラリーでもありました前回の
松本選手の京丹後日記は読みましたか? ラリー観戦を自宅でも楽しめる豆知識が満載ですので、まだの方はぜひ読んでくださいね。
今回の私の日記は、先日北海道で開催されたJRC(全日本ラリー選手権)第6戦ラリー・カムイについて。リザルトだけ見ると2位表彰台とうまくいったラリーに見えますが、じつはいろいろとあったんです。そんなお話も書いていますので、最後までお付き合いください。
■思い出深い車両で再び!●グラベル仕様のレッキカー。奥に見えるのがラリー本番車今回のレッキに使用した車両はWRCラリー・ジャパンの0カーで使用した車両でした。
0カー用のリバリー(カラーリング)で、企業ロゴが一切ない代わりに「GR-FOUR」とだけ書かれた特別仕様です。ラリー・ジャパンはターマック(舗装路)でしたので、グラベル(未舗装路)用にタイヤホイール、ブレーキ、サスペンションを変えてあります。
私にとってこの車両は国内最高峰クラスにステップアップし2年間苦労を共にしたり、ラリー北海道で(今のところ)ラリー人生最大のクラッシュを経験したり、WRCのコースカーという大役を務めたりと、非常に思い出深い記念すべき車両。ウチに飾りたいなぁ、と思えるほど愛着があります。
※レッキ:本番前日などに用意されたコース下見
■レッキ後に洗車!? グラベルならではのルーティン●ほかのチームクルーも、洗車場に寄ってからサービスに戻ることが多く見られます今回に限らずグラベルラリーではレッキが終わってサービスパークに戻るまでの間に、コイン洗車場に行ってレッキ車両を洗車するのがお決まり。
グラベルラリーはレッキでもボディの汚れはもちろんのこと、下回りも泥だらけ。私たちがしなくてもメカニックがしてくれますが、離れた水道から汲んでこないといけないのでサービスパークでの水は貴重なのです! サービスパークでは洗車も骨が折れる作業なんですよね。
リエゾンやサービスパークにできるだけ泥を落とさないよう、またメカニックの負担を減らせるように、多くのクルーは帰る前に毎回洗車するようにしています。
●グラベルではボディも塗装も満身創痍なのですグラベルラリーを走ると泥だけでなく砂利も結構跳ね上げます。
写真のように、ボディサイドは前輪の掻き上げた砂利で塗装がボロボロ。サンドブラストをかけたようなものですからね。
ちなみに前輪が搔き上げた砂利で傷がつく4WDやFFに比べると、後輪駆動のFRはボディに当たる跳ね上げが少ないので、意外とボディがきれいなんですよね。次戦ラリー北海道で観戦される方は、ぜひトヨタ 86などのFR車をチェックしてみてください!
■リタイアの危機を救った意外なアイテム日曜の最初のステージ、SS7のスタートから数キロの地点で「あ、なんかクルマが蛇行してるな」と思った次の瞬間、山側の土手に乗り上げる形でコースオフ。しかし運よくスタックもしていなかったのでコースに復帰できました。
しかしフィニッシュ後に車両のダメージチェックをしてみると、冷却系にダメージがありました。
なんとか車内にある水を補充しながら走れそうだったので、安全とエンジンの保護を考えてドライバーと「水温が○○度を超えたらリタイアしよう」と決めて競技を続行。幸い一度も設定リミットを超えることなくサービスに戻すことができました。
●積んでてよかった、水!サービスパークが近づいてきて、メカニックの顔を見た時は「これで午後も競技が継続できる」と本当にホッとしました。
今回走り切れたのは、インタークーラー冷却用スプレー補充用の水が車載してあったのに加え、暑い日だったので私の飲用の水が2リットルあったからでした。私は普段から何かの補充用に使ったり、怪我をしたときに傷を洗うのにも使えるということで水を持ち込んでいますが、それが今回結果的に役立ちました。
●制限時間内に修理を終えようと必死のメカニックさんたち。クルーは祈るばかりなんとか車両をサービスに戻したら、ここから先はメカニックにお任せ。でも規定時間内に直るか心配で、ずっと車両の周りをウロウロウロウロ。きっとメカニックは「邪魔だなー」と思っているだろうな。
今回のサービス時間は45分間。サービスパークに入場してからの移動と出るときの移動時間を考えると、実際の作業時間は40分程度でしたが、原因の究明、修理作業、あとは外装の修理をすべて時間内に終えることができました。
傷のついたパートナーのロゴステッカーもバッチリ新しいものに張り替え!
もちろん修復もバッチリ!
午後のステージも思いっきり攻めることができました。
■飛行機移動の北海道だからこそ!●コドラは荷物が多くなりがちなのです…今回のラリーは飛行機での移動でした。
コ・ドライバーはペースノートや主催者発行の書類など紙をたくさん持ち込みますし、インカー確認用ラップトップなど荷物が多め。なるべく減らそうと努力してますが、ヘルメットを安全に運ぶために選んだスーツケースがそもそも重いこともあっていつも重量超過。
ほかのコ・ドライバーもみんな重量超過だとは思いますが、どれくらいの重さなのか聞いてみたいですね。それでも私は重いんだろうな……。
●たまには観光気分も味わわせてください(笑)新千歳空港を利用するラリーのときは、空港内のラーメン道場に行くのがお決まり。ほかの選手やメカニックも同じようで、店内はラリー関係者であふれかえってます(笑)。
ほかのラリーではほとんど観光的なことをしないのですが、毎回この新千歳空港での時間がとても楽しみ。ラーメンを食べて、お土産も大量に買って大満足でした。
●大好きなチョコかけポテチ。もちろん今回も自分用に買いました(笑)
■おまけ
今回も最後にちょっと親バカコーナーです。
ラリー・カムイの前の週に中部近畿選手権が三重県で開催され、私はサービスメカニックとして息子を連れて参加しました。最近では地方選手権でもイベント会場があることが多く、今回もGRガレージが出展。子供用のコーナーもあって大満足でした。
これまでの地方戦は山のなかの何もない広場がサービス会場だったりしたので、家族を連れていくなんて考えられませんでしたが、最近は都心部に近づいています。少しづつ家族を連れて行きやすくなってきていますね。
うちの息子は違うチームのサービス飯にもお邪魔してお腹いっぱい。お友達もたくさんできて大満足でした。
<文と写真=安藤裕一>