2024/07/22 カー用品 PR

【ELFORD×埼玉大学】アクセルブレーカー開発の裏側|ペダル踏み間違いによる暴走抑制装置を産学連携で生み出す|

アクセルとブレーキのペダル踏み間違いによる痛ましい事故が後を絶たない。この状況を何とかしたいと1人のオヤジが立ち上がった。埼玉・越谷でカスタムパーツブランド「エルフォード」を展開する明和の社長だ。埼玉大学の研究室も関わり、産学共同研究によって生み出される製品は特許も取得する意欲作。“踏み間違わない仕組み”の構想に端を発した発明・開発は“暴走を抑制する装置”に発展。その開発の裏側に迫る。

ELFORD


踏み間違いをなくしたい

「踏み間違えた際に加速・暴走を抑制する装置を製品化しました」とエルフォードブランドを展開する明和の藤森正信社長が切り出した。

目の前には現行型プリウスが採用するオルガン式アクセルペダルがある。ブレーキと間違えてアクセルを思い切り踏み込むとスロットル開度をオフにする仕組みを開発し、このアクセルペダルに組み込んでいる。通常の走行速度でペダルを踏み間違えた際の加速を電子的な制御に頼らずに抑制することで、急加速=暴走を防ぐのが目的だという。

「これを開発する前段階でフットレストカバーの『ペダル奉行』というのを作りまして、こちらはそもそもペダルの踏み間違いを起こさないよう正しい運転姿勢を取ってもらうことを目的に開発しました。ペダル奉行を売り出すために、効果を裏付けるデータがあるといいと思い、埼玉大学さんでデータを収集・解析し実証してもらったんです」

協力したのは同大学のヒューマンインターフェイス研究室の楓 和憲准教授と有志の学生(以下、研究室)だった。

【画像】ペダル踏み間違いや、万が一の際の暴走事故を防ぐアイテム

電動車いすのジョイスティックの使い心地やシニアカートの速度コントロールなどのユーザビリティについて、より安全で、安心して使ってもらい、操作感に満足してもらう、といった研究をしているという楓准教授。現在はシミュレーターなどバーチャル技術も活用した研究を行っている。

「直接操作をしない左足に注目し、アクセルやブレーキの操作をより正確にしようというアプローチに非常に興味を持ちました。何か影響はあるはずで、詳しく調べればその効果もわかるかもしれないと」

こうして産学共同研究が始まった。
実証実験のため、エルフォードがプリウスのシートとハンドルを使用し、実車同様のディメンションでモックアップを製作。VRゴーグルでプリウスの車内や道路状況をバーチャルで再現したり、体の動きなどをデータ化・解析するソフトウェア開発、実証実験を研究室が担当した。

データ収集の場は、地元で毎年行われる「こしがや産業フェスタ」。2022年と2023年にブースを出展し、来場者に体験してもらうことでペダル奉行の有用性についてのデータを収集・解析した。実験は左足を床に置いた状態とペダル奉行を使用した2パターンで、指示に従い右足を動かすというもの。これで頭の向いている方向や姿勢によって“右足の位置がどれだけブレるか”を測定する。

「ふだんから左足をフットレストに置いている人はどちらのパターンでも比較的右足のブレ幅は少なく、ルーズな運転姿勢の人はブレ幅が広い。ペダル奉行を使用することでブレが抑えられる傾向が確認できました」と2022年の実験に参加した馬場さん。

暴走を防ぐアクセルブレーカー

2023年には、アクセルブレーカーを用いたペダル踏み間違いのバーチャル体験を実施。ブレーキを踏んでも加速するよう設定していて、ペダルの踏み間違いによる暴走を体験してもらい、続いてアクセルブレーカーによる加速の抑制を体験してもらう。

「映像で抑制しているのがわかるだけでなく、バチン!と音がするので作動の様子がわかりやすい、といった感想もありました。作動音で踏み間違いを判断できるのが機能として評価されている」と、実証のデータ取りをした永吉さんが説明してくれた。

「操作にまったく違和感を感じないし、安心して使えると感じました」と同じく内藤さん。

バーチャル技術での研究に強い研究室だが、電子制御の抑制装置は作動時のアラートで何が起こっているかがわかりにくいと不安を漏らす。一方、アクセルブレーカーのバチン!という作動音を含め、機械的な動きは理解しやすいと評価する。

アクセルブレーカーの開発において、研究室ではマグネットがセンサーに影響を与えないかといったことや、スプリングの張力や信頼性の検証など担当しているという。

産学共同研究の意義

実際の製品の開発と試作はエルフォード、シミュレーションによるデータ検証は研究室と、それぞれの強みを生かした開発・研究が成果を生んでいる。

特に大学では共同研究したものが製品に実装される機会はそれほどなく、製品化に加え特許の取得にも関われることは成果として大きなメリットになっていると楓准教授はいう。

学生たちは、学内の枠を飛び越え、企業とのコミュニケーションやデータのやり取りを通じた実務経験ができることが非常に勉強になったと、参加する意義を語った。

「こうした経験が後につながり、産学の共同研究の成功事例になることで、いろいろな業種で産学連携が広まっていき、日本のモノづくりがもっとよくなっていくことを期待しています」と藤森社長は締めくくった。

踏み間違いによる事故を防ぐための製品づくりを始めたのが7年前。藤森社長は10年というスパンで開発を進めると決めていたそうで、まだ3年残っている。今後、産学連携でどんな成果を生むのか非常に楽しみだが、まずはアクセルブレーカーが多くのクルマに装着されることで、プラスαの安心感を生み、万が一の際に役立つことを願うばかり。

ちなみにアクセルブレーカーは、埼玉大学と共同で特許申請済みだ。


ELFORD
明和(エルフォード)社長
藤森正信さん

ELFORD
埼玉大学大学院理工学研究科 准教授
楓 和憲さん

ELFORD
大学院理工学研究科 博士後期課程1年生
馬場居仲さん

ELFORD
大学院理工学研究科 博士前期課程2年生
永吉成光さん

ELFORD
大学院理工学研究科 博士前期課程2年生
内藤権弥さん


ELFORD
アクセルとブレーキの踏み間違い暴走抑制装置
アクセルブレーカー(特許申請済み)

通常走行時のペダル踏み間違いによる暴走を抑制する目的で開発。アクセルペダルをグッと奥に踏み込むとアクセルがオフになる仕組み。トヨタの現行型プリウスやクラウンに採用するオルガン式アクセルペダルに対応し、価格は5万5000円。取り付けは2〜3分と短時間で済む。

ELFORD
ELFORD
●強力なネオジム磁石(赤の矢印)を組み込み、踏み込みが一定量を超えるとカムにより磁石が離れ(青の矢印)アクセル開度をオフ(青の丸囲み)にする。バチン!と音がするので作動もわかりやすい。ペダルを戻せば通常の状態に復帰する



ELFORD
正しいペダル操作に導く
セーフティーフットレストカバー
ペダル奉行
価格:1万1000円

特許取得製品。足置き面積を広く取り、左足を安定して固定できる。体がズレた際に右側に設けた壁に触れることで左足の位置を知らせ、体のズレを認識させる。これにより右足とペダルの位置関係の適正化を図り踏み間違い防止につながる。


ELFORD
研究室が効果の裏付けとなるデータを収集・解析

ペダル踏み間違い抑制効果について、データによる裏付けを取るために埼玉大学の研究室が使用したシミュレーター。VRゴーグルに映し出される車内映像に表示される数字に対応する位置に足を移動させ、その位置を記録。体に取り付けたモーショントラッカーのデータとともに体の動きを解析して有効性を検証した。

ELFORD
●左足を床に置いた状態と、ペダル奉行を用いた状態で、右足を指定の位置に運ぶ動作でのズレを検証しデータを解析

ELFORD
●実験では通常の運転姿勢のほか、後退時に後方確認のために体を大きくひねる状態でのペダル操作を検証。ペダル奉行使用時はズレのばらつきが少なかったという


〈文=ドライバーWeb編集部・兒嶋 写真=佐藤正巳〉

■問い合わせ先
エルフォード
TEL:048-966-3551
https://www.elford.co.jp

ドライバーWeb編集部

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