三菱自動車が2023年5月に発売する新型の軽スーパーハイトワゴン、デリカミニ。外観は既存のeKクロス スペースをベースに、ヘッドライト、フロントグリル、フロントバンパー、リヤガーニッシュ、リヤバンパーを変更して独自性を持たせている。変更範囲が少ない割には、かなり変わった印象を受ける。東京オートサロン2023の会場で三菱 デザイン本部 プログラムデザインダイレクターの松岡亮介氏にデザインの狙いについてお話を伺った。
■ヘッドライトはどのような意図でデザインされたのですか？
「デリカミニのフロントフェイスで大きなところは、ダイナミックシールドの処理の仕方とヘッドライトの丸目のところだと思うんです。もともと“デリカらしさって何？”という話もあって、まずこのクルマが軽自動車であるということと、あと “デリカネス”というところもデザインのなかで考えていました。
まず軽自動車らしさというところでいうと、やはり女性のお客様が多いということと、攻撃的でオラオラ系のデザインにもっていくのではなくて、やはりちょっと親近感のあるお顔、目付きとか。特に私たちデザイン本部内では、デザインパーソナリティと呼んでいるんですけれども、このクルマを擬人化したときにどういう性格の、どういうキャラクターの人なのかみたいな、人にすり替えて検討するんですね。そのときにこのクルマって、小学生ぐらいのやんちゃ坊主というんですかね、すごく覇気があって元気な、例えばサッカーとか野球とかけっこうスポーツをやっている男の子なんだけど、何か放っておけない、頑張って一生懸命でお母さんから見ると放っておけない、何かかわいいというような。男の子らしくて元気なんだけど、何かかわいらしいみたいな。
そういうパーソナリティを持たせたいよねというのがまず大きくありました。それでヘッドライトも中にあるLEDポジションランプをただ丸にしてしまうとちょっとかわいすぎるので、そこまではないよねと。もうちょっとキリッとさせたいよねというので、上をカットしたデザインを取り入れて、バランスもかなり見直しました。丸がどこまで見えると、かわいいとカッコいいのベストバランスなのかというのを、いろいろなバリエーションを考えながら、これぐらいがベストだねというのに最終的に落とし込みました。そういった形で検討したんです。ヘッドライトにカットされた丸が入っているというデザインは、かなり早い段階から決めていましたし、バランス調整に時間をかけた感じですね」
■確かに“小学生のやんちゃ坊主”のような感じですね
「軽自動車って、特に女性が顔の表情とかにすごく敏感なんですよね。かわいいとか、カッコいいとか、何か生理的に嫌いとか、好きとかって。すごく微妙なところで判断していて、私たちも今まではグローバルな車種をデザインしてきて、アウトランダーも私が担当したんですけれども、ああいう車種と軽自動車はまったく違って、軽自動車は本当にフロントを“顔”として見るんですよ。顔がかわいいとか、目がどうかって、完全に擬人化した表現でみなさん話をされるんです。特に軽自動車はそれが顕著ですね。ということは、この人は誰？というのをきちんと伝えられないと、おそらくお客様は困惑されるのではないかと。そこで、かなり初期段階からデザインパーソナリティとして、小学生の男の子みたいなというのをしっかり作って、そこからブレないようにしました」
■デザインパーソナリティは他車でもあるのですか？「アウトランダーでもキャラクターを付けるというのはやっていました。ほかの車種でもやっています。当然、やんちゃ坊主だけではなくていろいろあります。そういうのをきちんと決めないと、設計要件とかいろいろな開発の都合でバランスを変えられてしまう可能性があります。デザイナーの主張は、感覚的なものを含めてなので、なかなか伝えにくい。何でそのデザインを採用するのかとか、何でヘッドライトがこの大きさなのかとか、この位置が大事なんだというのを対外的に話すためにも、キャラクターをきちんと決めてやりましょうという方針になっています。
今回のデリカミニも設計要件を入れると、もっとヘッドライトを薄くしてほしいとか、ライト自体が大きすぎて重くなってしまうから、もう少し小さくしてほしいというのを設計側から言ってきました。そこで、“それはね、こういう男の子のね…そこまで丸を大きくしないとかわいくないんですよ”そういう話にもデザインパーソナリティを使っていました」
今回のデリカミニでは、擬人化された顔まわりのデザインが大きな特徴になっているのである。
〈文＝ドライバーWeb編集部〉
