2023/03/27 コラム

「みのりwithホンダ」の最新作は除雪機! 暮らしに溶け込むHondaをプラモデルで再現

MINORI with Honda Small Snow Plow HSS1170n(JX)

「人とメカの関わり合い」がコンセプトの「みのりwithホンダ耕耘機F90」は、2018年5月の発売以来ヒットを続けるロングセラー。そして、2023年2月に新たなプラモデルが登場。今回みのりちゃんが操作するのは、「除雪機」だ。

文=湯目由明 写真=長谷川拓司



■「モノづくりの思想」が凝縮されたプラモデル

大地を耕す、船を動かす、機械の動力になる、電気を作る。ヒトと自然を調和させながら、日々のさまざまな営みをアシストする動力源として躍動するのが、ホンダのパワープロダクツ(以下PPと略す)製品だ。

昼夜問わず降り続く一面銀世界のなかで、力強さと頼もしさを感じさせる“紅一点”。冬限定で活躍するPP製品の小型除雪機は、第1号機「HS35」の発売から40年以上の歴史を持ち、ガソリンエンジンを搭載する歩行型ロータリー除雪機のジャンルで2005年からトップシェアを獲得し続けるなど、重労働の除雪作業を「機械のチカラ」で軽減してきた。

ホンダの除雪機は国内シェアがナンバー1※
Honda  HSS1170n(
JX)

●雪かきで難しいのが、降り積もった雪や、屋根から落ちた雪などの硬い雪。除雪機のオーガ(刃)は一定方向に回転するので機械の能力を超えると抵抗が増え、除雪機を浮き上がらせる。それを抑えるのが雪を取り込む正転と、浮き上がりを抑える逆転を同軸上で行う正逆転オーガ機構のクロスオーガ。硬雪にしっかり食い込み、除雪効率を高める。メーカー希望小売価格●57万2000円 ※Honda調べ(2019年度 ガソリンエンジン搭載の歩行型ロータリー除雪機)

機械というとメカメカしくて無機質、ともすれば冷徹なイメージを抱きがちだが、降りしきる雪のなかで懸命に集雪し、投雪するコンパクトなホンダの赤い除雪機には、どこか血の通った「積雪に負けない」というエネルギーに満ちあふれている。

新技術を積極投入して使い勝手を高め、より使う人に優しく安全で、デザインにも親しみやすさを込めたモノづくりの思想は、除雪機に限らずすべてのPP製品に共通するもの。

愛らしさとメカニカルな機能美を兼ね備えたPP製品に魅力を感じ、それを操作する女のコのフィギュアと組み合わせて20分の1スケールの組み立て式プラスチックモデルにしたのが、マックスファクトリーの「ミニマムファクトリー」シリーズ。



●パーツ自体に彩色を施して、パーツを見分けやすく、未塗装でも見栄えのする設定にした。「こだわったのがクローラーのローラーの色。純白でなく黄色味のある色にしました」

農ガールの「みのりちゃん」と、農機具の概念を覆す丸目2灯の愛らしいデザイン、空冷ディーゼルエンジンなど、ホンダらしい独創性豊かな耕うん機「F90」を組み合わせた、第1弾の「みのりちゃんwithホンダ耕耘機F90」は18年5月に発売され、ロングセラー商品になった。

耕うん機と女のコのフィギュアという、異色のコラボを仕掛けたのがマックスファクトリーの高久裕輝氏。

株式会社マックスファクトリー
社長室/企画部 PLAMAXチーム
高久裕輝 Yuki Takaku

●模型専門誌編集者を経て2014年にマックスファクトリー入社。フィギュア以外の新ジャンルの企画を担当し、2018年に「みのりwithホンダ耕耘機F90」を発売。中学生のころから専門誌を愛読する模型好きで、プラモデルの開発で心がけているのは「不安にならず、考えすぎずに誰が組み立てても“キマる”」ように設計すること。組み立てが簡単で見栄えもするという相反するテーマに挑み続けている

フィギュアのキャラクターデザインを数多く手がける、山下しゅんや氏が描く主人公の「みのりちゃん」は、豊かな自然と田園風景が残る鳥取県倉吉市で農業に従事しながら暮らしているという設定。日本海側に面し、30㎝程度の雪が年に数回積もるので雪対策は必須。大通りには融雪装置が埋設されているものの、自宅周辺は雪かきしなければならない。

「春から夏にかけての情景をF90で表現できたので、山下先生と『みのりちゃんは冬になったらどういう暮らしをしているんでしょうね』と会話をするなかで描いてもらったのがコレです」と、プラモデルのパッケージを示す高久さん。ハッと目を引く鮮やかな蛍光色のダウンジャケットを着込み、下半身はスリムなタイツと防寒ブーツのコーディネートだ。

■人々の生活に役立つ1シーンを再現する楽しさ

ヒロインを引き立てる名脇役…ならぬ準主役が、クロスオーガを搭載した小型除雪機「HSS1170n(JX)」。




電動式のブレード除雪機から大型除雪機まで、数あるラインアップのなかから本機を選んだ理由について高久氏は、「F90と同じ丸目だったこと。現行機種の丸目作業灯は大型除雪機にもあるのですが、みのりちゃんの設定上、大型除雪機だと釣り合いが取れません。HSS1170nは小型除雪機のなかでは大排気量(389㏄)のハイパワーが自慢で、冬季でもアクティブに暮らすみのりちゃんの世界観を表現するのに最適だと考えました」と語る。

高久氏が丸目にこだわるのは、プラモデルとして可能性を秘めているから。「F90はボクらが想像していたとおり、素直に耕うん機として組み立てる人もいれば、SFチックな姿に改造したり、未来的なライダーをまたがせた“謎のメカ”に作り変えたりする人もいて、F90自体を新たなキャラクターとして捉え直す人が結構いたのです。やはり楽しく模型遊びするうえでキャラクター性はとても大事だと感じました」

F90は半世紀以上前の機種で、設計図も整備マニュアルも残っておらず、資料になるのはホンダコレクションホールに収蔵されている実機のみ。試行錯誤しながら特徴的なプロポーションを捉えた。対してHSS1170nは現行機種だから、図面もサービスマニュアルもすべてそろい、開発者にも直接取材ができた。

フォルムを捉えるのは比較的容易だったが、模型として成立させるための構造や強度の部分が難しかった。「除雪機の構造を説明すると、2本のメインフレームにハシゴ状の横桁が通っていて、そこにエンジンとマフラー、燃料タンクが付いているという、メカむき出しの構造なのです。実機と同じように構成するとパーツの向きが定まらず組み立てが大変なので、ある部分は一体化したり分割したりして、パーツの別体感を出しながらも誰が組んでも確実に決まる設計をしました」と高久氏。



●特徴的なクロスオーガやクローラーなどのメカが露出し完成時の印象を大きく左右するため、ディテールの再現には気を使った。金属シャフトを通して刃が回転する仕組みだ

もちろん機能に関わる部分の再現も妥協できない。HSS1170nの場合は同軸・同時正逆転除雪機構のクロスオーガ(除雪機の刃)で、雪を取り込む正転と除雪機の浮き上がりを抑える逆転を同時に行う機構のこと。

「“なんとなく刃のようなものが付いている”ではなく、シャフトに銀と黒の刃をそれぞれセットして回転する構造にしました。オーガで砕いて集めた雪を飛ばすシューターに通じる穴もちゃんと開けています」と高久氏は自信をのぞかせる。



●オーガでかき集めた雪を飛ばすシューターも除雪機ならではの装備。オーガハウジングの奧からシューターに向かう雪の通り道もしっかり抜けていて、実機のリアル感を忠実に表現している

非降雪地域に住んでいるとあまり目にする機会のないホンダの除雪機だが、プラモデルの組み立てを通して仕組みを理解できて、興味を抱かせるのが「メカ×女子」にこだわる高久さんの狙い。「みのりちゃんがPP製品を操る情景…F90なら水田、HSS1170nなら雪の景色を思わず作りたくなるでしょ」と締めくくった。



■「モビリティリゾートもてぎ」ホンダコレクションホール

人とモビリティと自然が共生するテーマパークが「モビリティリゾートもてぎ」。場内のホンダコレクションホールでは、クルマやモーターサイクル、パワープロダクツなどの市販製品からレーシングマシンまで約300点を見学できる。耕うん機のF150や4ストローク船外機のGB30といった「ホンダ初」のエポックメイキングなPP製品も数多く展示されているので、ディテールや機構をつぶさに観察し、模型製作の参考にしたい。






www.mr-motegi.jp



ドライバーWeb編集部

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