2021/01/19 コラム

なぜ危険な場所にバス停が数千カ所もある?…しかし法律上は「安全」とされる理由



ここで引っかかるのは「横断しようとする人がいないことが明らかな場合」とはどんな場合か、である。交通警察官諸氏の虎の巻でもある『執務資料道路交通法解説18訂版』(東京法令出版)が詳細に解説している。要するに、歩行者信号が赤の場合や、信号はないが見通しがよく、横断しようとする人がいないことが一見して明らかな場合をいうのだそうだ。

立て看板や塀などのせいで見通しが悪いとか、付近が暗いとかいう状況だと、もしかしたら歩行者が出てくるかもしれない。横断しようとする歩行者がないことが一見して明らか、とはいえない。よって、十分に徐行しなければならないのである。この違反の反則金は普通車で9千円。違反点数は2点だ。

次に、同じ第38項の第2項。これも、私なりに重要と思う部分を赤い文字にしよう。



車両等は、横断歩道等(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道等による歩行者等の横断が禁止されているものを除く。次項において同じ。)又はその手前の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、その前方に出る前に一時停止しなければならない



要するに、横断歩道の手前に停車車両があってその横を通過するときは、必ず一時停止しなさいってこと。これも普通車の反則金は9千円、違反点数は2点だ。

以上とおり、バス停のそばに横断歩道があり、停車したバスの大きな車体のせいで横断歩道が見渡せないときは、徐行または一時停止をしなければならない。よって、横断歩道のそばにバス停があっても事故は起こりえないのである。

だが、道交法第38条なんて知らない人もいるだろう。知っていても、人間は不注意な生き物だ。目の前に具体的な危険がなければ徐行も一時停止もせず、バスの陰から出てきた歩行者に衝突! そんな事故は起こるだろう。どうするのか。

どうするも何も、歩行者に法律上の落ち度はない。クルマの側には第38条の違反がある。クルマの運転者を処罰すればいい。同種の事故が多発したなら、一般予防(=見せしめ)の観点から重く処罰しよう。日本は基本的にそういうやり方なのだ。お役人的、官僚的と私は思う。

なので私としては、自分が運転者のときは必ず最徐行または一時停止をし、自分が歩行者のときは、徐行も一時停止もしない運転者がいるかもと考えて注意深く横断する、ということでやっている。加害者にも被害者にもならいよう、頑張っていきましょう。

〈文=今井亮一〉
交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を発行。

ドライバーWeb編集部

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