2020/08/27 コラム

ヤリスのターンチルトシートは結婚式で大活躍する!?|木下隆之の初耳・地獄耳|

「新型ヤリスで選択できる「ターンチルトシート」に乗ってみたいな〜」

いつもの担当Kにそう進言すると、彼はがすっとんきょんな声をあげた。

「きゃっ、キノシタさんが…」
「そうだ、僕がドライブしたい」
「ついに、必要になったんですか?」

担当Kは、どうやら勘違いしているようである。

新型ヤリスに装備可能な「ターンチルトシート」とは、乗員が乗り込む際にシートに迫り出してくれるものである。ドアから張り出したのち、座面前端が下がる。座って腰掛けレバーを操作すれば、正しい位置に舞い戻る。いわば、福祉車両の「回転シート」に見える。


●助手席に装備されたターンチルトシート(9万200円高)


●助手席のみならず、運転席にもターンチルトシートを設定可能(8万8000円高)

実際に開発したのは、「ウエルキャブ」の開発15年に及ぶ、トヨタの中川 茂さん。そう、担当Kが間抜けな声を発したのは、いよいよ僕が福祉車両が必要になったのかと気を揉んだのである。

まあ、そろそろウエルキャブモデルが必要になるお年頃ではある。だがまだ現役でレースなどしているわけで、回転シートの世話になるのは早い。だがなぜターンチルトシートの試乗をする気になったかと言えば、健常者でも有効なのではないかと想像したからなのだ。実際にターンチルトは、障害者用に開発されたわけではない。

開発担当者の中川さんの言葉を借りればこうだ。

「足腰に不安を抱える高齢者の1%しかウエルキャブ車を利用していない。もっと利用して欲しい」

実際にターンチルトシートは、福祉用途とはアナウンスしていない。腰を痛めている人や、スカートを着用した女性にも都合がいいと思う。僕もレース後に腰を痛めることがある。そんなときにも便利なのだろうと思い立ち、体験しておこうと思ったわけだ。

「てっきり、足腰が…と思ったので」

担当Kにはいつもイライラさせられる。

「じつはな、来月、結婚式に呼ばれ、着物の女性を乗せることになっている。そのときにターンチルトシートは都合がいいと思ってだな」

「そりゃ、めでたい」
「そこにヤリスでエスコートしようかと思ってだな」
「ターンチルトならばスマートですよね」
「そうなのだ。日本は後ろ向きに靴を脱ぐ習慣がある。日本との相性がいい」
「なるほど…」
「日本は着物の国である」
「納得です」
「日本男児だからな。ターンチルトシートが福祉車両として見られずに、もっと一般に普及してもいいと思っておるのだ」
「だったら素敵な話ですね。僕はてっきり…」

相変わらずムカつく野郎である。

〈文=木下隆之〉

ドライバーWeb編集部

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