2020/06/08 コラム

大型トラックが「一般道の中央車線寄りを走れ」と指定されるのはなぜ?

●道路上のペイントで走行車線が指定されている

前回、大型トラックが高速道路の追い越し車線を延々と走るわけについて書いたが、決していい行為ではないしそもそも違反である。その辺一般ドライバーには不快に感じた向きもおられたようで、なかなかの反響だった。でも筆者はそうした行為を擁護するつもりはない。追い越し車線を延々と走る輩なぞ、やはり根性がよくないし、さもなくば相当にストレスをためて運転し続けているゆえの愚行でもあるから。

周辺住民への配慮ため



今回は話題を変えて、一般道路の話をしよう。片側二車線の幹線道路などで、大型トラックが内側(中央寄り)車線の走行を指定される区間があるのをご存知だろうか。「ノロいトラックが内側を走るとは、迷惑な話」と憤慨されるかもしれないが、東京の都心をよく走る方なら、環七、環八などでそんな表示があるのを見た記憶があるかもしれない(無論ほかの幹線道路でも存在する)。もう少しちゃんと説明すると、これら道路の内側車線の路面には「大貨 特定中貨」とペイントされ、頭上の標識でも走行車線が指定されている。大貨=大型貨物自動車(大型特殊自動車も含む)、特定中貨=車両総重量8〜11トン未満の中型貨物自動車のことで、これら車両はなるべく内側車線を走れとの意味がある。



「なんで、そんな指定をするのか?」だが、その理由は前述の環七や環八など、道路のすぐ脇が居住区域の場合が多いためだ。要は、周辺住民の騒音や排出ガスへの配慮の意味があるのだという。「外側と内側の車線の違いって、大したことないでしょ」というツッコミもあるだろうが、じつは内側と外側をトラックが走行した場合、周囲の騒音レベルで数dB(一説には7dBほど)の差が出るんだそう。というのはネットで調べた情報だが、周辺で暮らす人が快適になれば、そのほうがいいでしょう。

トラックドライバーも外側を走りたくない



じつはトラックドライバーにとっても、幹線道路では内側のほうが圧倒的に走りやすい。大半のトラックドライバーも実感していると思うが、環七や環八は片側2車線の道と言ってもかなり狭い。区間にもよるが、1車線がギチギチの車線幅の部分もあったりして、何か障害物に引っ掛けないかと気を遣う道なのだ。特に外側車線は街路樹の張り出し、標識の角、バス停の出っ張りなどに、トラックの箱(荷室部分)が擦りやしないかとヒヤヒヤしながら走っている。もちろん、間もなく左折する場合は嫌でも移らなければいけないが、なるべく外側車線を走り続けたくないのだ。

ほかにも、外側車線は気を遣う場面は多い。道に不慣れなクルマの急な停止、周辺施設への左折入場など、大型トラックがやりたくない急減速や発進が多くなるのだ。そう言えばコロナ自粛の最盛時、急に車線が詰まっていると思ったら、マクドナルドのドライブスルー渋滞だったというのが、非常に多かったのを思い出す。

ちなみに、こうした一般道でのトラックの通行帯指定。違反するとどうなるか? 筆者は取り締まられたことがないし、周囲にもそういう経験者がいない。何せ左折する場合は、それに備えて外側車線に移るものだし、外側車線を走り続けて違反キップを切られたトラックドライバーも知らない。大型トラックが、左折時のどれくらい手前から外側車線に入っていいのかの規定を見たこともないし、取り締まりの警察官も違反を適用しにくいのではないだろうか。この点、高速道路の追い越し車線を走り続ける違反とは、随分異なるだろう。

というわけで、調べても詳しい反則規定がわからなかったが、この中央車線寄りの通行指定、努力義務的なものではないかと勝手に解釈している。もし、この点について詳しい方がいたらご教示いただきたい。

トラックの“箱”を傷付けると減給!?

 
最後に余談。道路脇の障害物について先に書いたが、大型トラックの箱(荷室部分)、高さも幅も大変気を遣うし、横側のウイング部分などは波板状のアルミで出来ており、案外簡単に凹む。街なかを走るトラックでも、箱が傷ついているのを見かけるだろう。まあ、傷つきなど自慢にもならないが、初めて走る狭い道など、思わぬところに木枝の突起が隠れていたりして、どうしようもなく損傷する場合もある。そういうわけで、トラックドライバーは慣れるほどに道脇障害物に神経質になる人種でもある。ちなみに、こうしたトラックの損傷、所属会社にもよって違うだろうが、修理を要する場合、数カ月にわたって月給の1割ほどを差し引かれたりもするから、過敏になるのも当然である。
 
〈文=坂 和浩〉

ドライバーWeb編集部

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