2018/10/29 ニュース

スポット参戦の元王者ローブが5年ぶりに勝利! WRC2018 第12戦ラリー・デ・エスパーニャ

 WRC2018 Rd.12 54th Rally RACC Catalunya-Costa Daurada 2018Day1,2

初日グラベル、あとはターマックのミックス路面

かつてはオールターマックで開催されていた、ラリー・カタルニア。最近では、シーズン唯一のミックスサーフェイス(グラベルとターマックの混在)ラリーとして知られるようになっている。今年も例年同様、初日のデイ2のみグラベルを走り、デイ3と4は伝統の高速ターマックで争われる。今年もサービスパークは地中海に面した観光地サロウのテーマパーク、ポートアベンチュラに置かれた。デイ2の終わりには、たったの75分でマシンをグラベル仕様からターマック仕様へ変更する、神業のようなサービス光景が見られる。このラリーの見どころはなんといっても、チャンピオンシップの争いだ。ドライバーズタイトルはヌービル(ヒュンダイ)を筆頭に、オジェ(フォード)、タナック(トヨタ)の3人全員にチャンピオンの可能性が残されている。1位ヌービルと3位タナックのポイント差は21ポイントだ。
©️Redbull ●チャンピオン争いは三つ巴。左からタナック(トヨタ)、オジェ(フォード)、ヌービル(ヒュンダイ)
そしてマニュファクチャラーズ争いは、トヨタが後半戦の好調さをキープしトップを独走中。ヒュンダイとの争いに決着をつけられるか。両者のポイント差は20ポイントついている。参戦クルーにも注目の名前が並んでいる。WRカークラスには、シトロエンの3台に9度のチャンピオン、セバスチャン・ローブが参加。プライベーターでは、ジムカーナやラリークロスで有名なケン・ブロックもフォード フィエスタWRCで参戦する。そしてWRC2クラスには、VWの新車「ポロ GTI R5」がデビュー。これを2003年のチャンピオン、ペター・ソルベルグが走らせる。WRC2クラスには期待の若武者、勝田貴元もエントリーしている。
©️VW ●ポロGTI R5。R5のニューカマーで、VWモータースポーツがWRカーで培った技術を投入したカスタマーマシン。もうすでに十数台、注文が入っているという。近い将来、世界中のラリーイベントで見ることになるかもしれない

©️VW ●スバルファンには懐かしい、スバル最後のチャンピオンでもあるペター・ソルベルグ。いまはWRX(世界ラリークロス選手権)でVWポロを操り大活躍している
 

タナックが好調ぶりを発揮

スタート前に行われたシェイクダウンで、選手権リーダーのヌービルが横転するというアクシデントもあったが、スタート前には修復。ラリーは無事に全クルーがスタートを切る。初日デイ1は、サロウから北東へ100kmあまり走ったカタルニア地方の中心地バルセロナの市街地で行われるスーパーSSのみ。3.2kmのショートステージを走行した翌日から、ラリーは本格的なスタートを迎える。デイ2は午前に3本、午後に午前の3ステージをリピートするグラベルの6ステージ。SS4と7にはラリー最長38.85kmのステージも待ち受ける。ほかのグラベルラリー同様、出走順が早いほど路面の掃除役となり不利になる。この日は選手権の順位どおりのスタート順となり、リーダーのヌービルと2位のオジェはなかなかタイムが上がらない。
©️Redbull ●3番手と決していい出走順ではなかったが、タナックの絶好調はまだ続いているようだ。あっという間に後続へ20秒以上の差をつけてしまった
そんななか、3番手スタートのタナックが速さを見せる。SS3で首位に立つと、後続との差をぐんぐん広げ始めた。デイ2最終のSS7が終わった時点で26.8秒もの差を築く。2位にはラトバラ(トヨタ)がつけていたが、続くSS4でパンクに見舞われ後退。代わりに初の母国優勝を狙うソルド(ヒュンダイ)が2位に入っている。
©️Redbull ●経験豊富なソルドだが、地元スペインの勝利はまだない。夢をかなえるため、いい位置で走っていたのだが……

©️Redbull ●オジェはヌービルとともに路面の掃除役になってしまい、タイムが伸びない
ジムカーナのオリジナルビデオで有名な、ケン・ブロックは派手な走りで観客を沸かせていたが、SS7でコースオフ。リタイアとなってしまった。
©️Redbull ●SS1、バルセロナ市街地でのケン・ブロック。1回転ターンで観客を沸かせていた
 WRC2クラスの勝田貴元はSS6でコースオフ。翌日からラリー2規定による再出走へまわることとなった。
©️TGR ●勝田貴元は、今季の最終戦へ。カタルニアは2回目の挑戦だったが、SS6でコースオフしてしまう

デイ2終了時 総合順位1. O・タナック(トヨタ)     1h34m27.4s2. D・ソルド(ヒュンダイ)    +26.8s3. E・エヴァンス(フォード)   +29.7s4. S・ローブ(シトロエン)    +30.2s5. J・ラトバラ(トヨタ)     +37.6s6. A・ミケルセン(ヒュンダイ)  +39.1s↓ラトバラの痛々しいパンク。




©️TGR ●ラトバラはデイ2のパンクで遅れた分を取り戻すため猛プッシュ。タイヤ選択もあたり、首位へ
WRC2018 Rd.12 54th Rally RACC Catalunya-Costa Daurada 2018Day3

雨と路面、タイヤに翻弄される

カタルニアならではの高速ターマックステージが始まる、デイ3。道幅が広く走りやすい道が続くのだが、昨夜から降り続く雨によって路面は生憎のウエットだ。スタート直前にステージのコンディションを下見しているグラベルクルーからの情報を頼りに、各クルーはタイヤを選択していく。フルウエットのタイヤと、路面が乾いていると見越しての通常のソフトコンパウンド、どちらを選ぶかによって明暗が分かれた。オープニングのSS8は安全上の理由からキャンセル。SS9からこの日がスタートした。タイヤ選択を的中させたのは、4本フルウエットを選んだトヨタ勢だった。完全に路面が濡れていたステージで、タナックがSS9でベストタイム。ラトバラはセカンドベストで総合順位を4番手にアップ。逆にソフトを選んだオジェやヌービルは、なかなかタイムがあげられない。しかし首位のタナックに不運が起きる。SS10で突然フロントタイヤがパンク。タイヤ交換作業のため1分以上をロスし、総合9位にまで後退してしまう。ここでのステージベストはラトバラだった。
©️Redbull ●ローブは徐々にマシンの感覚をつかみ、総合3位まで順位をあげてきた
午後のSS11でソルドから首位を奪ったラトバラは、そのままこの日のステージを終える。総合2位にはオジェが上がってきた。そして3位にはなんとスポット参戦の元チャンピオン、ローブが追い上げている。各クルー間のタイム差は少なく、ひとつのミスで簡単に順位が入れ替わる接戦。誰が勝つかまったく読めない状況だ。
©️Redbull ●ヌービルもグラベルの遅れを取り戻すべくハードに攻める。総合5位まで追い上げてきた
デイ3終了時 総合順位1. J・ラトバラ(トヨタ)     2h35m01.8s2. S・オジェ(フォード)     +4.7s3. S・ローブ(シトロエン)    +8.0s4. E・エヴァンス(フォード)   +9.8s5. T・ヌービル(ヒュンダイ)   +12.7s6. D・ソルド(ヒュンダイ)    +16.5s↓タナックもパンクで戦線離脱。

↓今年最後のターマックロケットの競演です。


©️Redbull ●ローブ(右)は通算79勝目。5年のブランクを感じさせない、圧巻の速さをみせてくれた
WRC2018 Rd.12 54th Rally RACC Catalunya-Costa Daurada 2018Day4

朝のタイヤチョイスが命取りに

雨は止み路面はドライ、と一変した最終日デイ4。SS数は残り4本。各クルーは、路面に残った水たまり等を配慮しソフトタイヤをチョイスするが、ただ一人4本ハードタイヤを選んだドライバーがいた。ローブだ。クルーの直前を走るゼロカーによる情報では、路面は完全なドライ。ローブの賭けは的中した。最終日のオープニングSS16でステージベストをマークし、なんとこのステージだけで6.1秒のアドバンテージを築く。「ハードタイヤを選んだのは正解だったようだね。ハードに攻められたし、速く走れたよ」ステージ後にコメントしたローブは、一気にオジェとラトバラをパス。総合首位へ躍り出た。ローブは続くSS17もベストタイム。逆転勝利を目指し激しくプッシュしたラトバラは、痛恨のパンクに見舞われ戦線を離脱してしまう。オジェとの一騎打ちとなった残り2ステージもローブは逃げ切り、5年ぶりの勝利。自身の持っているWRC最多勝利数を79に更新した。WRC2クラスにデビューした、ポロGTI R5はペター・ソルベルグのドライブによってクラス3位を獲得。幸先のいいスタートを切った。勝田貴元はクラス12位で完走している。
©️Redbull ●このラリーでも圧倒的な速さを見せた、ラトバラ&ヤリスWRC。度重なるパンクに翻弄されてしまった
↓ラトバラのガックシ具合は、なんだか可哀想。

↓こちらはWRC2のハイライト。ポロGTI R5、カッコいいです!

タイヤチョイスやパンクに翻弄された難しいラリーだった、今回のカタルニア。最終リザルトは以下のとおりだ。
WRC2018 第12戦 ラリー・デ・エスパーニャ 総合順位1. S・ローブ(シトロエン)    3h12m08.0s2. S・オジェ(フォード)     +2.9s3. E・エヴァンス(フォード)   +16.5s4. T・ヌービル(ヒュンダイ)   +17.0s5. D・ソルド(ヒュンダイ)    +18.6s6. O・タナック(トヨタ)     +1m03.9s7. E・ラッピ(トヨタ)      +1m16.6s8. J・ラトバラ(トヨタ)     +1m26.4s9. C・ブリーン(シトロエン)   +2m07.0s10. A・ミケルセン(ヒュンダイ) +2m48.2s
選手権タイトルの決定は、両方とも最終戦のオーストラリアへ持ち越しとなった。ドライバーズタイトルは、オジェがヌービルを再び逆転。その差はわずか3ポイントだ。タナックはオジェと23ポイントも離れてしまった。まだ望みは残されてはいるが、可能性は低くなってしまっている。マニュファクチャラーズタイトルは、ヒュンダイがトヨタに迫ってきている。差は12ポイント。ヒュンダイは初、トヨタは19年ぶりの王座を狙って、オーストラリアで一騎打ちとなる。次戦ラリー・オーストラリアは、11月15~18日の開催だ。
WRC2018 マニュファクチャラーズ選手権 ポイントスタンディング1. トヨタGAZOOレーシングWRT     331p2. ヒュンダイシェルモービスWRT     319p3. MスポーツフォードWRT     306p4. シトロエントタルアブダビWRT     216p
WRC2018 ドライバーズ選手権 ポイントスタンディング1. S・オジェ(フォード)     204p2. T・ヌービル(ヒュンダイ)     201p3. O・タナック(トヨタ)     181p4. E・ラッピ(トヨタ)     110p5. J・ラトバラ(トヨタ)     102p6. A・ミケルセン(ヒュンダイ)     84p
 

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