2024/03/26 新車 PR

極寒の地で進化を試す、ソルテラ氷点下ドライブ|スバル ソルテラ試乗インプレッション|

ソルテラ ET-SS

2023年の10月に改良されたスバルのBEV「ソルテラ」。おもな改良点はADAS機能の拡充と低温環境下における急速充電性能の向上だ。BEVが苦手とする低温下での充電性能を高め、実用性が増した改良版は本当に極寒の地で使えるのか? 氷点下の軽井沢で検証した。

初出/driver 2024年4月号(2024年2月20日発売)


ちなみにに前回は……

2023年3月号(2023年1月20日発売)で掲載した「“電CAR”限界突破たび」では改良前のソルテラに乗り2日間で867kmを走行した。バッテリーに厳しい低温下での総充電回数は12回に及び、電欠すれすれの肝が冷える思いも経験。改良版のソルテラは寒さに打ち勝てるのか。



●上の写真は前回(2023年3月号)取材のもの


弱点を克服したソルテラ

年次改良で性能と機能をブラッシュアップしていくのがスバル車の常だが、BEV(バッテリー電気自動車)のソルテラはそのペースが早い。

2023年5月に実施したソフトウェアのアップデートでは、急速充電性能の向上と実航続距離表示の改善、充電残量表示の改善がなされ、直近の一部改良(2023年10月)ではLCA(レーンチェンジアシスト)や渋滞時のハンズオフ走行をアシストするアドバンストドライブ、見通しの悪い交差点での衝突回避をサポートするFCTA(フロントクロストラフィックアラート)などADAS機能を拡充させた。

さらに、冷間時のバッテリー暖機性能の向上などにより、低温環境下における充電時間を短縮。メーカー発表によると、外気温がマイナス10℃で90kW急速充電器を使って充電した場合、駆動用電池の充電警告灯点灯から、充電量約80%までの充電時間が最大30%削減されるという。

筆者がソルテラを試乗したのは2022年の年末。前述のソフトウェアのアップデートも一部改良も施されていない、いわば「バージョン1.0」のモデル。今回の一部改良のポイントである、シビアコンディションにおけるBEVの実用性向上を確かめるために、1年でもっとも寒さが厳しい二十四節気の大寒(だいかん)ドライブと相成った。試乗車はスタンダードグレード、ET-SSのAWD(4WD)。神奈川県横浜市北部の自宅から都内を経由して、関越道、上信越道を使って極寒の軽井沢を目指した。



ヒヤヒヤからわくわくへ

前回の試乗(23年3月号に掲載)では横浜をスタート地点に中央道まわりで岐阜県の中津川IC→国道19号で塩尻まで北上し、長野道で長野市内まで行き、復路は上信越道→関越道で戻ってくる、総走行距離867kmのロングドライブだった。充電回数は12回で通算平均電費は4.4km/kWh。寒波の直後だったので外気温はずっとマイナス、大半が上り坂というBEVには厳しい条件。

事前に高出力の充電器が備わるポイントを調べておき、そこで充電したにもかかわらず思ったほどバッテリー残量が回復しないなぁ……と感じていたが、じつは1日当たりの急速充電によるフル充電の回数に制限を設けていたのだ。「駆動用バッテリーの劣化を抑えるため」とはいえ足を延ばすドライブには厳しい設定。

低温下における急速充電性能に課題を残したソルテラ。今回のルートでもっとも電気を消費する難所は、アップダウンが多く横川SAから勾配が一段ときつくなる、上信越道の藤岡ICから碓氷軽井沢ICまでの約50km。関越道の高坂SAで充電したときの充電残量は76%。余談だが、アップデート前は充電残量がグラフ表示のみだったが、新たに%表示が追加されてわかりやすくなった。ここから約110km先の軽井沢プリンスショッピングプラザの50kW急速充電器で充電する予定。

到着時のバッテリー残量は30%で航続可能距離は110km。外気温マイナス2℃で30分充電した後の残量は63%、航続可能距離は221kmまで回復。前回とは充電回数や環境が異なるために単純比較はできないものの、バッテリーに厳しい氷点下での充電効率はかなり改善している印象。そして、BEVドライブでもっとも肝心な航続可能距離表示がより実態に即したものに。従来モデルは電欠で走行不能に陥らないようあえてマージンを大きく取ることで、実際よりもバッテリー残量を少なく表示していたが、改良モデルは明らかに航続可能距離の減りが少ない。メーターに表示された航続可能距離を信じて走ると、想像以上に減りのペースが早くてイレギュラーな充電を強いられた前回に比べて心理的なプレッシャーは小さく、安心してドライブを楽しめた。

一部改良のトピックがステアリング形状の変更。従来は兄弟車のトヨタbZ4Xと同じ真円タイプの丸形ステアリングだったが、ソルテラはだ円形のオーバルステアリングホイールを採用。メーターの視認性向上が目的で、上下がフラットで着座位置にかかわらずステアリングがメーターに被らないので視認性が損なわれず、前方を見ながら少ない視線移動で瞬時に情報を確認できるトップマウントメーターとの相性がいい。加えて、厚手のダウンジャケットを着込んだ着膨れ状態でも乗降性に優れ、小径なので舵を切り込む際にクイックなレスポンスが得られる。

積雪、部分凍結、ドライが入り交じったワインディングでは、駆動用バッテリーを床下に敷き詰めた低重心ボディと、前後モーターの駆動力とブレーキを巧みにコントロールするAWDシステムがもたらす安定の走りを堪能。たゆまぬ進化でスバル渾身のBEVの魅力は増すばかりだ。



充電時間を上手に利用して観光を楽しもう

充電ポイント1  高坂SA
・時刻:7:52
・外気温:1℃
・充電時間:30分
・充電器出力:高速40kW
・充電後航続可能距離:283km


高坂SAの充電器は高速40kWが1台。24時間使用可能だ。時刻はまもなく午前8時。充電中にフードコートで朝食を済ませる。食べ終えて戻ってくるころにはちょうど充電も終わるころだ。


●ソルテラは助手席側に急速充電、運転席側に普通充電のポートを装備する。充電スタンドによってはコードが短く届かない場合もあるので、クルマを駐車する際に注意しよう。今回のドライブでは行きは472km走り充電回数は2回、帰りも2回の充電で帰ってくることができた


充電ポイント2 軽井沢プリンスショッピングプラザ
・時刻:10:00
・外気温:−2℃
・充電時間:30分
・充電器出力:高速50kW
・充電後航続可能距離:221km



軽井沢プリンスショッピングプラザはP3駐車場内に高速50kW充電器を2台設置。6kW普通充電器も5台あるほか、テスラスーパーチャージャーも複数台設置。充電中にショッピングやグルメも楽しめる。駐車場は2時間まで無料、充電器は24時間使用可能だ。


●軽井沢の気温は−2℃。取材日は風が強く表示よりはるかに寒く感じる


●凍えるような寒さのなか、バッテリーは30分の充電で33%回復した


バッテリー残量は十分! もう少し足を延ばす

白糸の滝
長野県北佐久郡軽井沢町永倉小瀬(白糸ハイランドウエイの途中)


高さ3m、幅70mにわたり地下水が湾曲した岩肌から湧き出る。滝にほど近い駐車場で外気温は−5℃まで下がっていた。アクセスは有料道路白糸ハイランドウエイを利用する。

川上庵
長野県北佐久郡軽井沢町長倉字横吹 2145-5(ハルニレテラス内)

一品料理と地酒を楽しみそばで締める。そんな「粋」を楽しめるのがハルニレテラス内に店を構える「川上庵」。厳選したそば粉を自家製粉した粗挽きの二八そばが名物。敷地内に充電スポットはないが、ほど近い「星のや軽井沢」内に6kW普通充電器がある。


●試乗車は前後独立モーター駆動式のAWD 。滑りやすい雪道でも4輪が地面を確実にとらえ、安定した走りが印象的。EV専用のAWDシステムが各タイヤへの力の配分を緻密に制御することで、さまざまな道で安定した走行が可能


●今回の改良のもう1つのトピックがオーバルステアリングの採用だ。先進感、スポーティ感を演出するとともに、メーターの視認性を改善した


●AWD車ではパドルスイッチでのS-PEDALモード選択機能が追加された


●フロントパワーシートは調整範囲を拡大し、自分好みのポジションをより一層細かく調整できるようになった


●運転席は腰まわりを支えるランバーサポートも調整可能だ


【ソルテラ ET-SS(4WD)主要諸元】 
■寸法・重量
全長:4690mm
全幅:1860mm
全高:1650mm
ホイールベース:2850mm
トレッド:前1600mm/後1610mm 
最低地上高:210mm
車両重量:2000kg
■モーター・性能
型式:1YM 〈前後〉 
種類:交流同期電動機〈前後〉
最高出力:80kW(109ps)4535~12500rpm〈前後〉 
最大トルク:169Nm(17.2kgm)0~4535rpm 〈前後〉
■駆動用バッテリー・性能
種類:リチウムイオン電池 
総電力量:71.4kWh 
総電圧:355.2V 
WLTCモード 一充電走行距離:542km 
最小回転半径:5.6m 
乗車定員:5人 
■諸装置
サスペンション:前ストラット/後ダブルウイッシュボーン 
ブレーキ:前後Vディスク 
タイヤ:235/60R18 
価格:671万円

〈文=湯目由明 写真=佐藤正巳〉

ドライバーWeb編集部

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