2023/09/21 旧車

究極のガソリン倹約機!? 約60年前の省燃費グッズが衝撃的だった【旧車雑誌オールドタイマーより】

その名も「スピードマスター」。使ったことある人、いますか?

業界唯一の?サビ取り旧車雑誌「オールドタイマー」の過去記事からおもしろネタを厳選して再掲載!



◇◇◇下記、当時原文ママ(2005年6月号)◇◇◇

究極の(?)ガソリン倹約機 1965年編

昭和も40年になるとマイカー族も大量増殖。自動車用品も百花繚乱だが、どうしても気になる、ガソリンの値段。そこで出ましたこんなモノが。

文/錆田正一(解体部品幻想家)

…屋根付きガレージ不要の「永久ワックス」、タイヤ寿命を伸ばす「タイヤクリーム」、グサッと飛び出る「ロケットアンテナ」、時間と安全を同時確認「時計付きルームミラー」、安くて丈夫な「手動式3連エアホーン」、モギトリ防止警報付き「ブザーフェンダーミラー」、かぶせるだけでGTミラーになる「ミラーキャップ」、その他マフラーブースター、各種メーター、レーサーハンドル、ヒョウ柄ハンドルカバー、自動切替式ハイビーム、井戸水濾過器、パイプ立て、ハイヒール立て、さくら紙ディスペンサー、地図距離計、高度計、オートコンパス、マスコットチェンジポール(水中花シフトノブの原型)、ルーム掃除機、ルームほうき、ルーム芳香器…。

これが1965年の売れ筋オートアクセサリーですわ。カー用品といえばホイール、エアロ、カーナビしか選択肢のない我々から見れば、なんとも充実したモーターライフじゃないですか。ことにエキゾーストマフラー、点火系キットなど「GT系パーツ」の充実ぶりには驚きます。ただGT派は一部のマニアであって、大多数のマイカー族は維持費削減に苦慮していたはず。何せガソリン代は1L 40〜50円。50円あれば食堂でソバが食えたんだから(ちなみにカレーライス150円、トンカツ300円)。

そこで自動車雑誌は競ってガソリン節約術を紹介。「加速はゆっくり、ブレーキはなるべく踏まない」「家族で乗れば運転が慎重になり燃費も良好」「向かい風のときは急がず、追い風になったら挽回する」といった初歩テクニック(?)から、ブレーキの引きずり・クラッチのすべり調整法、果ては「シリンダー上面をわずかに削って圧縮比を上げ、混合気通路を細く絞り点火進角をやや遅らせる」といった本格的な(?)ノウハウがエコノミー派の琴線をカキ鳴らしていた。

当然、“省燃費グッズ”もいろいろ。燃料添加剤、オイル減摩剤、点火系強化装置、はてはマフラーブースターまでも省エネを売り物にしたわけです。ただ、それら商品の売り口上は決まって「パワーアップと燃費節約を両立」と八方美人で、どうも説得力に欠ける。そんななか、マジメにひたすらガソリン節約を追求したのが、今回紹介する「スピードマスター」(横浜電機)。当時の資料が見つかり驚異のメカニズムが判明しました。

コレすなわち、設定速度に達するとそれ以上はクルマが加速しない「リミッター」です。この時代、わが臣民はまだ“スピード”に畏怖の念があったらしく、後付けリミッターが各種商品化されていた。それらの原理はアクセルペダルもしくはスロットルリンケージを電磁石で固定し、速度制御するという物。一方、この「スピードマスター」はキャブ本体にソレノイドバルブを取り付け、一定速度に達したらメインジェットを塞いじまうというかなり強引なシステムだった。

同社の説明によれば、ガソリン浪費の元凶は惰性運転・エンジンブレーキにある。エンブレ時のシリンダー負圧でキャブから吸い上げられるガソリン量はバカにならない。これでメインジェットを完全に塞ぐ「画期的メカニズム」(特許出願済み)で見事にクリアしたという。

効用はこれだけではない。惰性運転時の不完全燃焼がなくなれば…①順法速度での運転が容易でエンブレがよく利く(交通安全への貢献)。②プラグがかぶらず黒煙も減少(公害抑制。健康増進)。③エンジン寿命も延長(家計安泰で平和な社会)と豪語する。

でも全然売れなかった。メカニズムに問題があった? それもあるだろうが、何ともマジメすぎましたな。マイカー族というのは元来、適度に交通法規を破り、適度に公害をまき散らし、適度に浪費することが大好きな種族ですから。


●スピードマスター構成部品。①ダッシュボードに取り付ける本体(セレクター)。②③メーターケーブルから回転を取り出すギヤボックスとケーブル。④キャブに埋め込むソレノイドバルブ(写真はツインキャブ用)。価格は1万800円(※当時)。


●図A

●図B

〈作動原理〉
●クルマのスピードメーターケーブルから取り出した回転力は本体セレクター(図A)のシャフト①に伝わり、フライホイール②を回す。②には③④⑤のウエイトガバナー装置があり、一定速度になると遠心力でウエイト⑤がピストン⑥を押し上げ、セレクタースイッチ⑧を作動する。それによりキャブレターメインジェットに埋め込んだソレノイドバルブ(図B)のコイル❶に電流が流れ、鉄心❷とともにニードル❸を押し出してメインジェットを塞ぐ。本体のツマミ⑨を回すことで設定速度が変わり、ボタン⑩を押せば自動制御が解除される。

■オールドタイマーは、旧車に特化した隔月発行の自動車雑誌です。レストアする人たちの立場からクルマをとらえ、旧車を長く乗り続けるための方法などを紹介します。現在、定期購読者様専用の会員サイト「OT-club」で、自動車本体や部品など、早い者勝ちの売買情報配信中!

ドライバーWeb編集部

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