2023/05/02 旧車

【80年代の限定車・特別仕様車研究】トヨタの定番だった「エクストラ」って何だ?【旧車雑誌オールドタイマーより】

ビスタ店5周年記念」と銘打っているので、販売チャンネルの認知度を上げ、囲い込みを進める狙いもあった?

業界唯一の?サビ取り旧車雑誌「オールドタイマー」の過去記事からおもしろネタを厳選して再掲載!

◇◇◇下記、当時原文ママ(2018年4月号)◇◇◇

クレスタ・スーパーデラックス・エクストラ&スーパーカスタム・エクストラとは?

文/環田昌大

1980年代の限定車・特別仕様車を研究するこのコーナー。至らないところも多々あると思うが生温い目で見守っていただければ幸いである。

記念すべき第1回目の研究対象はトヨタ・クレスタの2代目、70系(1984〜88年)。クレスタは1980年から2001年まで生産されたトヨタの中型高級車。マークⅡ、チェイサーの兄弟車であり、2代目70系は今もシャコタン好きの支持を得ている(そうではない個体ももちろんある)。

その2代目クレスタ前期型に「ビスタ店5周年記念特別仕様」として、「スーパーデラックス・エクストラ」と「スーパーカスタム・エクストラ」の2台が用意された。

といってカタログを見てもほとんど同じ。そもそもベースグレードである“スーパーデラックス”と“スーパーカスタム”の違いはどこにあるのか。「そんなのわかって当たり前」の人もいるだろうが、一応ざっくり言えばエンジンと足まわりの違いだ。

スーパーデラックスは2000㏄直列6気筒エンジンの1G-EU型搭載で足まわりはフロントがストラット式コイルスプリング、リヤがセミトレーリングアーム式コイルスプリング。2000㏄は4輪独立懸架なのである。

対してスーパーカスタムのエンジンは直列4気筒1800㏄の1S-U型、直列4気筒ディーゼル2400㏄の2L型とそれにターボが付いた2L-T型の3タイプ。足まわりはフロントがストラット式コイルスプリングは変わりないが、リヤはトレーリングリンク車軸式コイルスプリングである。

ミッションのギヤ比などの違いはあれど、2グレードの標準車で装備の比較をしてもスーパーカスタム2400㏄ディーゼルターボだけはパワーウインドー標準装備であったり、スーパーデラックスとスーパーカスタムの2400㏄ディーゼルターボにはリヤスタビライザーが付くなど、ちょっとした違いを除けばほぼ同じなのである。

これらを念頭に特別仕様車のカタログを見てみると、スーパーデラックス・エクストラは特別装備である運転席シートの仕様変更、トリムやシートの表皮変更、パワーウインドー、コンライトなどの上級グレードに付く装備を押しつつ、やはり足まわりやエンジンの違いもしっかり謳っている。

一方、スーパーカスタム・エクストラはエンジンや足まわりのことはほとんど触れずに「豪華なインテリア、数々の特別装備グレードアップした」という表現で押すカタログになっている。

「エクストラ」と付く特別仕様はこの頃のトヨタの定番のようで、他にもクラウン、コロナ、ビスタ、カムリ、カローラなどにも設定があった。それらのモデルに付けられた“エクストラエンブレム”が使いまわしのように見えたのは私だけだろうか? 

なぜスーパーデラックスとスーパーカスタムをさらにグレード分けする必要があったのか? この手法はもともと米国のGMが採用していたもので、生産コストのスケールメリットを損なわない程度に細分化(セグメンテーション)することで、顧客の関心を惹き、他社モデルが参入することを防いだ。意味ある作戦だったのだ。今回の特別仕様車は「ビスタ店5周年記念」と銘打っているので、販売チャンネルの認知度を上げ、囲い込みを進める狙いもあっただろう。

ちなみにそのビスタ店は2004年5月頃から旧トヨタオート店系のネッツトヨタに統合され、現在のネッツ店がある。

(編集部注:2020年5月より、トヨタは全国販売チャンネル統合を開始している)


●ビスタ5周年記念特別仕様車「クレスタ・スーパーデラックス・エクストラ」。2L6気筒EFIエンジンとペガサス4輪独立懸架サスペンションをアピール、「トヨタの最高級パーソナルセダンの気品をさらに高めた」と謳う。写真のハッキリしたコントラスト、暖色系の多用など押し出しの効いたカタログだ。クルマの背景も明るい


●同じくビスタ5周年特別仕様車ながら、やや廉価の「クレスタ・スーパーカスタム・エクストラ」。カタログ表紙、内面のキャッチコピーなどもこちらは文字が細く控えめなのが面白い。車両背景も寒色基調で印象に残りにくいカタログデザインは「本当に売りたいの?」と思ってしまう。顧客にスーパーデラックス・エクストラを選んでもらうための、噛ませ犬的な設定だったのか

【雑誌オールドタイマーとは】
旧車に特化した隔月発行の自動車雑誌です。レストアする人たちの立場からクルマをとらえ、旧車を長く乗り続けるための方法などを紹介します。現在、定期購読者様専用の会員サイト「OT-club」で、自動車本体や部品など、早い者勝ちの売買情報配信中!

ドライバーWeb編集部

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