自動車雑誌ドライバーが過去に取り上げた記事が今に蘇る「DRアーカイブズ」。今回は1989年3-5号の「三菱ミニカ」を振り返る。
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新型ミニカは、ギャランやミラージュと同様の“ランディ・シェル”と呼ばれるデザインが施され、機能・性能を一段と向上。64馬力の5バルブDOHCターボもラインアップされた。
■トールデザインで居住性をアップ5年ぶりのフルモデルチェンジを受けて登場した新型ミニカは、「安心」「快適」「選べる」の3つをテーマとし、「狭い」「うるさい」「走らない」「こわい」といった、従来の軽自動車に対する不満を解消することを目標に開発された。
スタイリングは、シンプルでボクシーだった旧型から、最近の三菱車のトレンドに沿った複合曲面フォルムへと大変身。乗員をやさしく包み込むような丸みのあるボディで、デザイン的に安心感を与えている。
●ハイマウントストップランプ付きの大型ルーフスポイラー、迫力ある低音を聞かせるトリプルテールパイプは、DANGAN ZZの高性能の証だホイールベースは旧型と変わらず2260㎜。アルト/フロンテやトゥデイに比べると短めだが、ミニカはクラス最大の1465㎜(4WDは+50㎜)の全高を採用することにより、室内長1765㎜×室内幅1225㎜×室内高1230㎜(5ドア)のクラス最大の居住スペースを稼ぎだしている。さらに、高めのヒップポイント、オフセット感のない運転席とステアリング&ペダル配置により、軽自動車らしからぬ、のびのびとしたドライビングポジションを実現した。
●“まる”にこだわったメータークラスターや空調吹き出し口が印象的な、DANGAN ZZのインパネ。レッドゾーンは9000回転から●DANGAN ZZは、ニット張りのスポーツシート、ウレタン4本スポークステアリングなどのスポーツアイテムを標準装備バリエーションは、3ドア8グレード、5ドア6グレードの多彩な構成。旧型はボンバンタイプに“エコノ”のサブネームが付いていたが、新型はすべてミニカに統一され、3ドアがバンタイプ、5ドアが乗用タイプとなっている。
メカニズムは基本的に旧型のものをベースに熟成させたもの。3G81型3気筒は、標準のOHCキャブ仕様で、5ドア用が32馬力/4.3kgm、3ドア用が30馬力/4.2kgmを発生。このほかに、DANGAN ZZ用のDOHC仕様が用意されている。
足まわりは、フロントは全車ストラット、リヤはFFが3リンク、4WDが5リンク。ラジアルタイヤと6インチマスターバック付きブレーキの全車標準装備、前輪ディスクブレーキの拡大採用などにより、基本性能のグレードアップが図られた。
また、電動パワステやパワーシート、エアコン、チルトステアリングなどの充実した装備や、ルーフモールやインテリアなどのカラーをコーディネートできるシステムも、新型ミニカの大きなセールスポイントだ。
■ついに登場! 5バルブDOHCシリーズのイメージリーダーといえるDANGAN ZZ(ダンガン・ダブルジィー)は、そのネーミングにふさわしい強力な心臓を搭載している。
話題の中心は、ヤマハのF1、F3000用エンジンや2輪用エンジンで注目を集めている5バルブDOHCヘッドの採用。市販4輪車にも5バルブDOHCが採用されるであろうことは、だれもが予想できたが、まさか548㏄(ボア62.3㎜×ストローク60.0㎜)の軽自動車用エンジンがその第1号になるとは……。過激さを増す軽のパワーウォーズを象徴するような、鮮烈なデビューと言えるだろう。
●DANGAN ZZの3G81型5バルブDOHCインタークーラーターボ・ユニットベースとなったのは、クラス唯一のバランサーシャフト付き3気筒エンジンの3G81型。標準のOHCキャブ仕様は32馬力/4.3kgm(バン用は30馬力/4.2kgm)を発生する実用性能重視型だが、DOHC5バルブをはじめとするハイテクを惜しみなく投入することにより、64㎰/7500rpm、7.6kgm/4500rpmを発揮するスポーツユニットに仕立て上げられている。
吸気3、排気2の5バルブDOHCが生み出す最大のメリットは、このクラスのボアサイズでは5バルブにしたときがもっとも吸気バルブの開口面積が大きくとれ、吸気充填効率の向上によるパワーアップが図れること。
そして、傘径の小さな吸気バルブは、高回転域でのバルブの追従性を高めるだけではなく、狭角バルブレイアウトの超コンパクトな燃焼室を実現。3本の吸気ポートの生む効果的な縦方向の攪拌(かくはん)流、バルブオーバーラップの少ないカムプロフィール、バルブ系のフリクションロスを低減するローラーロッカーアームなどの採用と相まって、低中速域でのトルクアップや燃費の向上も可能とし、高回転・高出力と全域ハイレスポンス、低燃費をハイレベルでバランスさせている。
また、各バルブごとに燃料を均等に噴射する世界初の3スプレーインジェクター採用のECIマルチ、電子進角システム、改良型水冷式ターボ&空冷式インタークーラーなども採用され、3G81型5バルブDOHCターボは、ハイテクのかたまりといった内容を誇っている。
■充実装備がうれしいバン3ドアPg●エアコン標準装備の“Pシリーズ”の最上級モデル、3ドアPg。運転席パワーシートや電動パワステ、ブロンズガラスなどの至れり尽くせりの装備が魅力だ●ステアリングホイールやセレクターなどの触感も重視してデザインされた、3ドアPgのインパネ。ダッシュボードの上には、乗降時だけでなく、ハンドバッグなどの落下を防ぐのにも有効なユーティリティグリップを装備●2つのインテリアカラーが選べる3ドアPgのインテリア。スイッチ1つでシートが最後端までスライドし、乗降性を大幅にアップさせる運転席パワーシートを標準装備。もちろん、元の位置にもワンタッチで戻る■ママも安心のワンツードア従来までの常識を打ち破ったモデルとして注目したいのは、1:2(ワンツー)ドアを採用したバンタイプのLettuce(レタス)。そのボディは、右1ドア+左2ドアという変則的な構成となっている。これは、後席に乗せた子供が車道側(つまり右)から飛び出すことがなく安心。しかも左側からの乗り降りや荷物の出し入れは2ドアなので便利という、優しい心遣いから生まれたモデルだ。
●西友とのタイアップ企画車として設定されるレタスは、ユニークなワンツードアを採用
〈まとめ=ドライバーWeb編集部〉