2023/03/02 旧車

【日産ローレル vs トヨタ マークⅡ】高級パーソナルカー対決[driver 1989年2-20号より]

●ローレル ツインカム24Vターボメダリスト クラブL(手前)とマークⅡ HTグランデG

自動車雑誌ドライバーが過去に取り上げた記事が今に蘇る「DRアーカイブズ」。今回は1989年2-20号の「NEW 日産ローレル 試乗速報」を振り返る。

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「ローレル vs マークⅡ」

NEWローレルをホテルの発表会場で初めて見たとき、“早く走らせてみたい!”と痛切に感じたものだったが、そのローレルは期待どおり、高級パーソナルカーとして、一級のハンドリングを備えていた。“キング”のマークⅡにとって、真の強敵の出現である。1989年1月9日、試乗会場にマークⅡを持ち込み、レポーターによる比較対決を試みた。これは“平成元年”最初の試乗速報である。


●左がマークⅡ、右がローレル

■信頼感の高いハンドリング

とにかく足がいい。限界が高いとか、鋭い応答性が味わえるとかというわけではないが、とても落ち着いた気持ちで走れる。

ローレルのシャシーレイアウトは、基本的にはセフィーロと同じだ。だが、そっくりそのままというわけではない。

じつをいうと、セフィーロは小舵角時のステアリングフィールにあいまいさがあり、ローレルも同様かと心配していた。ところが、そのあたりが見事に改善されていたのだ。技術者も気がついていたらしく、試乗後に聞いてみたところ「ステアリングギヤまわりの工作精度をより引き上げています」とのこと。


●ローレル ツインカム24Vターボメダリスト クラブLのコックピットはホワイトベージュ色。ステアリングとシートは本革だ

結果的に、小舵角時のステアリングの正確感が向上。そのため、たとえば高速走行時のコーナーで大型トラックの脇をすり抜ける場面で、思わずステアリングを握りしめるような状況がなくなった。

ステアリングに与える舵角や切り込む速さに対して、常に自然な反応を示す。ゆったりとした気分を味わいたければ、コーナーに合わせてごくあたりまえのステアリング操作をすればいい。

ライバルのマークⅡも、ハンドリングは素直なほうだ。ただし、ステアリングから伝わる反力がやや人工的に思える。ローレルは、操舵の様子やコーナリング中の接地感がステアリングの手応えからも感じとれる。こうした要素が、プラスアルファの信頼感になっているのだろう。


●マークⅡ HTグランデGのコックピット。メーターはローレルのアナログに対してデジタルメーターを採用

エンジンについても、ローレルは申し分ない余裕が確かめられる。RB20DET型ツインカムセラミックターボを、高級パーソナルカー用のエンジンとして使いこなしている。

マークⅡには1G-GTE型ツインカムターボがあるが、これは低回転域のレスポンスがイマイチ。また1G-GZE型ツインカムスーパーチャージャーは、レスポンスこそ鋭く低回転域で力強いが、中回転域以上のパワーは、とくに際立ってはいない。


●マークⅡの1G-GZE型エンジン。実用域での力強さは、ローレルRB20DET型といい勝負

ローレルは、RB20DET型と電子制御式のATとの相性が最高だ。2000回転台以上に乗せておけば、ターボは常に過給態勢にあり、アクセル操作に即応して効果を発揮する。

スタートの瞬間から、モタつきのない滑らかな出足を示す。他車の流れに合わせるだけなら、スロットル開度は、アクセルペダルに足を載せる程度で十分だ。

高速走行中の追い越しは、感心させられるほど力強い。ATも、エンジンの特性をうまく引き出している。OD4速でロックアップしたまま、加速態勢にはいる領域が広いのだ。軽くアクセルを踏むだけでキックダウンする、だらしのないエンジンではなく、100㎞/hで2500回転からでも速やかに速度を稼ぐ。

一気に追い越しをかけようとしてハーフスロットルを与えても、まだキックダウンはしない。ロックアップが解除され、エンジン回転数が約1000回転上昇するため、それで事足りてしまうほどの余裕を見せる。


●ローレルのRB20DET型エンジンは全域でレスポンスがよく、吹き上がりはスムーズそのもの。高回転域の伸びも申し分ないだけに、ノイズは残念だ

逆に、80㎞/hあたりでアクセルを踏み込み、2速までキックダウンさせると、気になる点も表われる。パワーは7000回転プラスまで頭打ちを感じないのに、高回転域でバルブサージングを起こしているような金属音がし始める。その点について「遮音性を高めた結果、逆に高周波域が突出してしまった」という説明を受けた。だが、絶対的な騒音レベルを低減させるよりも、耳障りな音を消すことのほうが重要だと思った。

〈文=萩原秀輝〉

ドライバーWeb編集部

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