2023/03/22 新車

いすゞ、小型トラックの新型エルフを発表。澪という日本語の意味を持つ「エルフmio」とはどんなクルマ?

エルフディーゼル標準キャブ

いすゞは2023年3月7日、小型トラック「エルフ」を17年ぶりにフルモデルチェンジした。中型トラック「フォワード」についても外観を披露。快適装備や安全支援機能の大幅拡充を実施し、2023年夏頃からの発売開始を予定している。1959年に発売され、小型トラックの代名詞となっているエルフが7代目となり、フォワードは16年ぶりのフルモデルチェンジで6代目になった。

【画像】新型7代目エルフのバリエーション


●外観のみを公開した新型フォワード

新型車は新プラットフォーム「I-MACS(Isuzu Modular Architecture and Component Standard)を採用したのがニュース。多品種開発・生産に対応するため、モジュール開発をさらに進化。ディーゼルハイブリッド車、FCV(燃料電池車)、EV(電気自動車)など、さまざまな動力源にフレキシブルに対応する。新プラットフォームによってエルフは約2500車型、フォワードは約1500車型のワイドバリエーションを実現。この“選べる”という点は新型エルフ/フォワードの最大の特徴になっている。

内外装は「PLEASURE to CARRY」をコンセプトに一新。先進性とタフさ、機能性と華やかさを高い次元で両立。外観は商用車らしい堅牢さをアピールしながら、フロントフェイスで躍動感や先進性を表現。グリル上部にはいすゞの新たなブランドアイデンティティである「ワールドクロスフロー」デザインを採用。インテリアは親しみやすさと軽快感を表現し、長く使う道具としてのタフさやロングライフで色褪せないデザインを訴求した。キャビンは車両総重量3.5トン超の積載2トン積みクラス キャブオーバートラックでは最大のスペースを実現し、シートはアームレストやシートヒーターを採用してドライバーの運転環境の改善に貢献している。




パワートレーンでは、9速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)のISIM(アイシム=Isuzu Smooth Intelligent TransMission)を新開発。改良した4JZ1エンジン(3L直4DOHCディーゼル)と組み合わせることで、燃費性能を追求した。ISIMは多段化したことで燃費の向上やエンジン回転数の上昇を抑え、低騒音化による運転の疲労軽減を実現。デュアルクラッチ構造による素早いシフトチェンジで変速時のトルク抜けやシフトショックを低減し、トラックに新感覚のドライブフィールをもたらすという。




運転支援機能の充実もニュースである。今回の改良では、ステレオカメラの性能向上に加え、近距離ミリ波レーダー、ドライバーステータスモニターを追加。ドライバーステータスモニターは、運転者の脇見、開眼、運転姿勢の状態をインパネ中央部に搭載されたカメラでモニターする。過度な眠気を検知した場合にはエアコンを制御し、冷風を作動させて居眠り運転などの事故抑制に寄与する。ちなみに、国内小型トラック(車両総重量3.5トン超 積載2トン積みクラスのキャブオーバートラック)初搭載の先進安全装備は、右左折時のプリクラッシュブレーキ、全車速車間クルーズ、レーンキープアシスト、ドライバー異常時対応システム、可変配光型LEDヘッドランプ、標識連動型スピードリミッター、フロントブラインドスポットモニターである。

■EVの設定など豊富なラインアップ




特筆すべきは、新型エルフに新たに設定された電気自動車「エルフEV」である。約3年前に基本は出来上がっていたが、モニター試験を実施して課題の洗い出しを行っていたという。EV向けにコンパクトなリチウムイオンバッテリーパック(1パック20kWh)を開発し、車型に応じて2パック/40 kWh、3パック/60 kWh、5パック/100 kWhを選択できるようにした。ちなみに、EVはディーゼル車と共通のプラットフォームを採用することで、ディーゼル車と同様にさまざまな架装や使われ方に対応できる点が特徴である。



そのほか、バリエーションにおけるトピックは、2017年から始まった新普通免許に対応したモデル「エルフmio(ミオ)」の設定である(1.9L直4ディーゼルRZ4Eエンジン搭載)。2017年3月の法改正によって、普通免許で運転できるトラックの条件が「車両総重量3.5トン未満、最大積載量2トン未満、乗車定員数10人以下」となったが、それに対応するモデルをエルフとして初めて設定(2021年まで日産アトラスF24のOEM供給を受けていたエルフ100では新普通運転免許に対応するモデルも存在)した。

ミオは中型バスのエルガミオ(路線系)/ガーラミオ(観光系)のサブネームである「ミオ」と同じ意味で、やや小さいといったニュアンスを表現。バスのネーミングでは英語のミニ=小さいという言葉をフランス語で表すとmioche=子供となり、また、英語のmiocene=中新世などを合わせた造語で、(大型バスのエルガ/ガーラに対して小さい)中型というサイズをイメージしていた。今回は、エルフのなかで一番小さなエントリーモデルを表現しつつ、「澪=ミオ」という意味合いも込めた。澪は「船が通った跡、航跡」や「神様の願いが通じて降り始めた雨が流れる様子」といった意味がある。配送などで多くの道を走る様子や清涼で爽やかなイメージを表現。今回はミオカラーという爽やかなブルーのボディカラーを用意しているとのことで、そういったことも含めて、親しみやすさ、乗りやすさ、軽快さといった点をアピールするネーミングとして採用した。

そのほか、キャビンの後部空間が広がったスペースキャブの新設に加えて、2024年度中に特装架装向けシャシー(塵芥車、高所作業車)とキャビンから荷室への移動ができるEVウォークスルーバン「エルフEVアーバントランスポーター」をラインアップに追加する。

エルフ・標準キャブ・2WD・2トン積・標準ホイールベース・木製平ボディ・SGグレード ADASパック PREMIUMの価格は648万1200円。

〈文=ドライバーWeb編集部 写真=長谷川拓司〉

ドライバーWeb編集部

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