1月13日より幕張メッセで開催された東京オートサロン2023。自動車メーカーが本気でカスタムカーを製作して出展する点もTASの魅力だが、そのなかでも毎年驚くような仕掛けを持ったカスタムカーを精力的にリリースしているダイハツにスポットを当ててみた。
【画像】開発陣みずから「やりすぎました」なタント■タントがカラビナに!?タントのマイナーチェンジと同時に新たに加わったデザインラインのファンクロス。ノーマル、カスタムに続く第3のタントとして市場でも人気のクロスオーバー風タントだ。そんな発売直後のファンクロスを、ダイハツがさらに遊び心満載でカスタマイズ。もはやコンセプトカーレベルなのではと思うくらい気合いの入ったカスタム参考車を、ダイハツ くるま開発本部 デザイン部 第2デザインクリエイト室 主査の松井潤二氏がさらに深掘りして語ってくれた。
「このクルマ“タント ファンクロス”は、コンセプトカーではないのです。あくまでも純正パーツを使ったカスタマイズの参考車だったのですが…。でも、やりすぎちゃいましたね（笑）」。松井氏が話す内容によると、ワンオフで製作した部分がかなりあるようだ。「まずボディカラーのイエローですが、これはファンクロスのアクティブなイメージに合わせた今回のオリジナルです。市販ラインアップでは用意していません。そして、フロントバンパー下のアンダーガードもワンオフですね。牽引フックも完全にイメージアイテムです」。
松井氏はこの後、驚きのコメントも残してくれた。「カラビナをイメージした前後バンパー四隅のゴールドのアクセント。これ、じつは塗装ではなくて蒸着させています。その上からさらにクリア塗装もしています」。こんなアクセントだけのために、そこまで手間をかけているとは…。「メッキ塗装だとどうしてもカラビナのアルマイトっぽい色が出せなくてですね。蒸着のほうがアルミっぽい雰囲気が出るのです」。なかなかクルマ業界では聞きなれない単語に、驚いてしまった。
「カラビナといえば、サイドビューのイメージにも使っています。黒のデカールをグルッと。そう聞くと、カラビナに見えてきますでしょう？ これもルーフレールをワンオフで延長しているからきれいに仕上がっているのです」。確かにルーフレールが、リヤゲートのギリギリまで伸びている。まさかイメージを壊させないために、レールもワンオフ製作するとは。「デザイナーがスケッチを見せてくれたとき、何も違和感はなかったのですがルーフレールだけは気になりまして。後端のDピラーに入れてある模様ですから、ルーフレールを伸ばそうという結論になったのです」。
■ただのボディ同色ではあらず！インテリアへの力の入れ方もスゴイ。ボディと同じイエローのアクセントをうまく使い、ポップな雰囲気へと見事に進化している。特筆すべきは、シートだ。イエローの差し色がシートサイド、ヘッドレストへと効果的に配されている。色の入れ方がいいシートカバーですねと松井氏に質問すると、「カバーではないですよ」。と意外な返答が。「表皮の段階からやり直しています。ファンクロス特有の迷彩模様は残しつつ、シートサイドの素材を変えています。縫製の段階から、純正とは別の布で製作しています。カバーですと、シートにぴたりと合わないじゃないですか。それが嫌で（笑）」。
こだわりはシートだけではない。通常はオレンジに塗り分けられているダッシュボードのアクセントも、「すべてボディと同じ塗料で塗り直しています。だから艶消しではなく、しっかり光沢があるのです」。よく見ればドアスピーカーも同じイエローで縁取りされている。ダイハツデザイナー陣のこだわりっぷりに、すっかり感動してしまった。
最後に裏話をひとつ。「サイドデカールの人と自転車の後ろにイヌがいるじゃないですか。あれ、最初はネコだったんのですよ」。どうしてイヌに変わったのだろう？ 「開発責任者が、柴犬を飼っているからです。どうせならシバにしたいと（笑）。ちゃんとシッポが丸まってるでしょう？ 柴犬ってひと目でわかるようにしたかったのです」。かわいいイヌのステッカーだが、そんな思いが詰まっているとは。「かくいう私も柴犬を飼っていますので、一緒にそうしようそうしようって盛り上がっていましたけどね！」
＜文と写真＝青山朋弘＞
カスタムカー詳細 “タント ファンクロス”
ベース車：タント ファンクロスターボ
エンジン：660ccターボ
駆動方式：FF
ボディカラー：オリジナル塗装色（スポルトイエロー）
カスタムポイント
＜エクステリア＞
・オリジナルフロントアンダーガード
・オリジナルルーフレール
・オリジナルストライプ
＜インテリア＞
・オリジナルアクセント加飾
・オリジナル芝生フロアマット
・オリジナルカラーアクセントシート
＜足回り＞
リフトアップ
アルミホイールアクセント塗装
R/Tタイヤ（ホワイトレター入り）
