もしBRZの開発ドライバーが、市販車では妥協せざるを得なかった箇所を満足のいくものに仕上げたら、いったいどんなクルマになるのか。その答えが、スバルチューニングのプロとタッグを組んで作り上げたこのBRZだ。
文=深田昌之 写真=岡 拓
■意のままに操れて軽快に動く外観は高品質な1枚張りカーボンで仕上げられたフロント、サイド、リヤアンダー、そしてダックテールタイプのトランクスポイラーが付く。そしてフェンダーアーチに沿うよう、ボディ同色のオーバーフェンダーも追加。さらにルーフからリヤウインドーにかけてはマットブラックのシートが貼られている。
そんなビジュアル面だけでも「いいな!」と思うクルマだが、手がけているのがスーパーGT GT300クラスの61号車(スバルBRZ)ドライバーの井口卓人選手なので、走りの「お楽しみ」もちゃんと盛り込んであるのだった。
BRZ好きには知られた話だが、井口選手は新型BRZの開発に深く携わっている。それだけにBRZを知り尽くしているし、同時に「よりいいクルマ」にするためのノウハウも持っている。
●GT300クラスの61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)をドライブする井口卓人選手。現行BRZの開発ドライバーでもあったさて新型BRZだが、このクルマは「大人の乗り味」や「しなやかさ」を持つ完成度の高いスポーツカーとなっている。しかしその反面、兄弟車のトヨタGR86と比べると挙動がおとなしいというか上品すぎる印象があったりする。
ただ、これは悪いことでもなく間違ってもいない。だけど井口選手が個人的な趣味でイメージするスポーツカーは「意のままに操れて軽快に動くクルマ」なので、そうした要素を足したい気持ちがあったという。
そこで、スバル車オーナーにはおなじみの「プローバ」の協力を得つつ、自身の理想をBRZに吹き込むため、独自の開発を進めた。その一環が前記したエアロである。
さらに進めたのが走りの改良。井口選手は車両開発に携わっているので足まわりへの理解も深く、変更すべきツボは承知している。
そのツボとなったのが、ダウンサスへの変更。ここに手を入れることで、BRZが持つ「しなやかな動き」を残しつつ、ステアリングから「ちょうどいい鋭さ」が感じられるような味つけにしている。なお、この動きは純正のタイヤ、ホイールでも体感できるということだ。
●プローバでは新型BRZ(GR86)用のサスキットも開発中。前作同様オーリンズのDFVがベースだ。発売時期未定、画像は暫定仕様こうした特性は多くのBRZ乗りにとって魅力的な変化であるだろう。だけど「スプリング交換だけでそんなに変わる?」という疑問を持つ人がいるのも想像できる。
それに対して井口選手は「今のクルマはボディ剛性も高く、スプリングも品質や精度が高いものが作れます。なので、ダウンサスでも十分いけると考えました。乗ればきっと“これか!”とわかっていただけると思います」と語った。
今回紹介した井口選手プロデュースのBRZ用パーツはプローバから近日発売予定。BRZらしさを残しつつ、スポーツカーらしい乗り味も望む人は、これらパーツの発売を楽しみにしていてほしい。
●カーボンフロントディフューザーはフロントタイヤの「押しつけ」を向上させ、BRZ特有のアンダーステアを解消する狙いもある●サイドディフューザーもBRZの空力とスタイルのよさを伸ばす作り。これはGR86開発ドライバーの佐々木雅弘選手と一緒に考えたデザイン●BRZはアンダー傾向なのでGTウイングではなくスポイラーを採用。これはリヤで空力を効かせすぎないためのチョイスとのことだ●前後のフェンダーアーチに貼り付けるオーバーフェンダー。約8mmワイドになる。もちろん車検対応なので安心して装着できる●ルーフとリヤウインドーまわりにはマットブラックのシートが貼られていた。BRZは全高が低いクルマだが、よりシャープに見える●ホイールはBBSのRI-A(18×8J)を履く。BBSホイールは軽いだけでなく乗り味もよくなるので、この仕様との相性はかなりいい●エンジンレスポンスもGR86に比べるとマイルドなので、プローバの「アイス メインフューズ」でフィーリングをスポーティに振るスバルに特化したプロチューナー●スバル車を熟知しているチューニングのプロ集団、プローバ。今回紹介したBRZの製作のほか、メンテナンスもプローバが担当している。パーツの販売窓口は未定だ。詳細は井口選手の公式HPをチェックしてほしい〈問い合わせ先〉
プローバ
045-591-5501
www.prova.co.jp/