2022/05/17 コラム

立候補するにもお金と忍耐が必要!? 参院選挙の事前説明会に迷い込んだ交通ジャーナリストの昔話

ちょうど30年前の潜入ルポ



階段をのぼって会場前のフロアに着いた途端、びっくりたまげた。受付はスーツにネクタイの紳士たちで大混雑。そこにまぶしくライトが当たり、NHKと民放各局のテレビカメラが何台も並んで撮影していたのだ。

どっひゃーん! 今回の参院選に出馬する本物の政治家たちが来てるんだ! うわ、オフロードブーツの奴なんか1人もいねえぞ! 場違いもいいとこ、ヤバイっつーの! けれどすぐこう思い直した。待て待て、ボクだっていちおう日本の国民だ。被選挙権もある。説明会に参加する権利があるんだ。

スーツの紳士たちに交じり、受付の用紙に氏名等を書くことにした。説明会に来た人はみんな書くらしかったので。だがその用紙を見てまたびっくり。氏名の前に「政党名」を書く欄があるではないか。しかもっ、机のわきには報道記者が鈴なりで、ペンとメモを構えてボクの手元に注目している。どんな奴が立候補するのかぜんぶ書きとめようというのだ。

げっ、政党名なんて、んなもんねえよ! あそうだ、昔、冗談で「世紀末ハルマゲ党」ってのを思いついたっけ。ハルマゲはハルマゲドンの略である。丸禿げと混同する者は党の名誉にかけて断固粉砕する、とか言って。この際、それでも書いとこうか。

ボールペンを用紙に近づけると、記者たちが一斉に身を乗り出した。や、やっぱそんなふざけたの書けないよう。結局、政党名は「未定」とし、氏名、住所、電話番号だけ書いた。

受付をとおって会場に入り、またまた驚いた。3人掛けの机が横に3列、縦に11列、優に100人を超える人たちでごった返していた。あちこちでフラッシュがピカピカ。テレビで見たような人もいる。そうとう著名な政治家も来てるらしい。メモを手にした記者とカメラマンたちが走り回っている。

1人だけ和服のおっさんがいた。テカテカしてやたら声がでかく、ほとんど躁状態だ。ははあ、とボクは思った。選挙って、UFOと協力して世界平和とか、だいぶ変わった人も出るんだよね。してみるとボクなんか、現代社会の縮図たる交通違反・取り締まりを通じて社会をよくしようと考えてたりなんかするわけで、けっこうまともな部類じゃん?

異様な熱気の中でボクは、自分がただの野次馬であることを忘れ始めていた。ちょっと政界に打ち出でてみっかな、政見放送で好きなこと言ってみるのもいいかもしんない、そんな気分になりかけていた。

ドライバーWeb編集部

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