2020/11/27 旧車

1969年デビューの三菱コルトギャランは起死回生を狙った1台だった

●全長×全幅×全高:4060×1560×1385mm エンジン:1.3L直列4気筒OHC(87ps/11.0kgm) 価格:63万6000円(AIスポーツ・4速MT)

若者に魅力を感じてもらうために


コルト1000シリーズの後継車は、1966年に検討が始まり、プロジェクト名「AY」として開発がスタートした。後のコルトギャランだ。

1000ccクラスの乗用車は次第に1.2L・1.3Lクラスが中心に上級移行し、コルト1000系のモデルはスタリングも古く、若者層にアピールしづらい状況だった。そこで、特に若者に魅力を感じてもらえるような特徴を持った新型車として、市場で5年間優位性を保てるクルマを狙いとして開発した。


●1969年10月にセダン発表後、70年5月にはハードトップを追加。前後ウインドーの傾斜を緩やかにして車高を30mm下げてスタイリッシュな装いになった

ボディやシャシー、エンジンを一新した1クラス上の乗用車は、資本自由化を迎えて国内だけではなく北米への輸出も視野に入れた戦略モデルである。それだけにまずデザインに関する期待値は大きかった。イタリアのカーデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロ氏と社内デザイン案でそれぞれエクステリアの意匠を開発し、ダイナミックな社内案をベースにジウジアーロの要素を取り入れて完成させた。空力を意識した若さあふれるくさび型のスタイルは、躍動感のあるベルトライン、ダイナウェッジラインがアクセントになっている。同時に新開発した高出力OHCエンジンは1.3L/1.5Lともに宇宙時代の高性能、信頼性を象徴する「サターン(土星)」と命名された。


●コルトギャランのオリジナルモデル。社内デザイナーの作が採用案となり、これにジウジアーロの要素を取り入れていった。欧州的な個性のあるスタイルに引かれてシンプルな姿を目指した

車名は「英語+フランス語」



気合いを入れて開発したニューモデルだけにクルマの名前にもこだわった。従来のコルト1200/1500(コルト1000の改良版)のユーザー層を引き継ぐねらいもあり、コルトの冠を残すことにしたが、上級の車格となり、異なる設計思想を持つことから新しい名前がふさわしいということになった。数百の候補のなかからイメージテストや記憶テストなどを実施し、最終的には当時の三菱重工業・牧田與一郎社長が決定した。


●1.3L車を「AI」、1.5L車を「AⅡ」と命名。それぞれの排気量では表現できない高性能を発揮する乗用車であることをアピールするため、排気量を避けたシンプルなグレード呼称を採用した

当時は英語で「勇敢な」、「勇気のある」、「洗練された」、「華麗な」、「男性が女性に対して親切な」などを意味する「ギャラント(GALLANT)」を考えたという。だが、「コルト ギャラント」では最後の音が重なって音感にスムーズさが欠けるため、同じ意味で終わりの「ト」を発音しないフランス語「GALANT」を採用し、「コルト ギャラン」とした。英語(コルト)+フランス語の組み合わせになったのは、このような経緯があったのだ。

ちなみに、命名に際しては英語の「ギャラント\gallant」という商標を他社から入手している。

車名が持つ「勇ましく・華麗な」という意味合いは、堂々たる性能と華麗なスタイルを兼ね備えたニューモデルの特徴を表現。コルト自体にはもともと「若駒」という意味がある(これも牧田與一郎氏が決定したといわれている)ことから、ターゲットとした若者層を意識しつつ、華麗な若さをそなえた「現代的センスにあふれた活動派」のイメージにふさわしいということで命名したという。起死回生を狙う意欲作は名前にもこだわったのだ。


●後端に装着されるエンブレムはCOLTの文字が大きい

〈吉川雅幸著『車名博物館PART1』(八重洲出版)より〉

ドライバーWeb編集部